6 エンドオブダークネスクルセイダース

主人公視点

「✕✕✕✕✕✕」【したがって、たまには、あるいは、必ず、どうするとしても、軽井沢】


 相変わらず彼女の言うことは、よくわからない。

 とはいえ、この翻訳ソフト以外に彼女とコミュニケーションをとる手段を知らないので、信じるしかない。


「熱くなってきたからね……避暑地として軽井沢って有名だよね」

「✕✕✕✕✕✕」【私の修行は、そこで行われました】

「修行してたの?」


 ……なんの修行……って、りんさんは日本に来たことがあったのか? だから留学してきたのか?


「✕✕✕✕✕✕」【私の修行は修行の修行です】


 修行の修行……? 修行するために修行するの? なんのために、修行のために?


「……それは……苦しかったね」


 目標のない無限の努力は苦しいと思う。


「✕✕✕✕✕✕」【したがって、あなたはエターナルエンドを身につけました】

「僕が……?」


 なんで? なんで僕がエターナルエンドを習得したんだ? 


「エターナルエンドって何?」

「✕✕✕✕✕✕」【あなたの奥義であり】


 奥義であり……なんだ。続きが気になる。


 そもそも、僕は奥義なんて習得していない。修行なんてしたこともない。エターナルエンドも知らない。


「……ちょっと、エターナルエンドは身につけてないかな……」

「✕✕✕✕✕✕」【私も同じくです】


 今までの会話はなんだったんだろう……結局、僕も彼女もエターナルエンドを使えないじゃないか。

 僕が使えないのは当然だが……りんさんは修行までしたのにエターナルエンドを使えなかったらしい。なんとも苦しい修行だったのだろう。


「✕✕✕✕✕✕」【私はエンドオブダークネスクルセイダースを身につけるため、軽井沢へ】

「そんな昔ばなしみたいに言われても……」


 おじいさんが山へ芝刈りに行く要領で軽井沢に行かれても困る。

 いや……別に行ってもいいけど……というか、エンドオブダークネスクルセイダースってなに? エンドオブダークネスクルセイダースって軽井沢で身につけられるの?


「✕✕✕✕✕✕」【多くの温泉により、山登り。穏やかな風景と温かい交流を楽しみました】

「楽しめたなら良かった」


 エターナルエンドもエンドオブダークネスクルセイダースも習得できなかったようだが、楽しめたなら良かった。

 ただの旅行では、というツッコミは野暮なのだろう。


「その……エターナルエンドってどんな技なの?」

「✕✕✕✕✕✕」【世界中の木々から致死量のマグロが生成されます】

「シュールだなぁ……」


 いきなり木からマグロが生えてくるのか……それも、致死量のマグロ。


 ……致死量のマグロってなに? 食べ過ぎ? 地球を覆い尽くすのか?


「じゃあ、エンドオブダークネスクルセイダースは?」

「✕✕✕✕✕✕」【それによって、温泉の効能がアップします】

「平和だなぁ……」


 僕も使ってみたいエンドオブダークネスクルセイダース、名前が長いことと習得難易度が高いこと以外は平和で良い技だ。


 ……りんさん、温泉が好きなのかな……

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