5 私は新聞紙のように舞います。さらにマスクによって光線を放ちます?

主人公視点

 中国人留学生であるりんさん……彼女は学校で孤立している。


 しかし、そんな彼女にも日本人の知り合いがいるらしい。


「✕✕✕✕✕✕」【私は高山たかやまの左手を取ろうと思いました】

 

 高山たかやま……たまに会話に登場する高山たかやまという人物。


 りんさんと会話すると、よくこの人物が出てくる。


 ……高山たかやまさんとはどんな人物なのだろう。知り合いだろうか。友達だろうか。


 ……恋人、なのだろうか。りんさんはこんなにもキレイで優しいのだから、恋人くらいいても良い気がする。


 ……明らかに、僕は高山たかやまという人物に嫉妬している。


 あまりにも気になったので、質問してみる。


高山たかやまくんって……友達なの?」

「✕✕✕✕✕✕」【友達以上友達未満です】


 狭い範囲に収まっているらしい。友達以上なのに友達未満……収まる隙間があるのか? そんなに特別な存在なのか?


りんさんは……その、えーっと……」恋人がいるのか聞こうとして、やめた。「学校には……慣れた……?」


 不器用な父親みたいになってしまった。恋人がいるのか遠回しに聞こうとした結果、わけがわからなくなってしまった。


「✕✕✕✕✕✕」【あの人はいつも私にやすらぎをくれます】


 あの人だと……? あの人……高山たかやまさんか。高山たかやまさんめ……ずいぶんとりんさんと仲良くなってるようじゃないか。

 

 とはいえ、りんさんが日本で友達を作っていることは嬉しい。

 もちろん僕を好きになってくれたら最高だけれど……まぁしょうがない。彼女が高山たかやまを好きなら、応援する。


「✕✕✕✕✕✕」【私はいつも高い山を登ります。それは最高です】


 なんか危険な会話に聞こえてきた。僕の心は汚れている。


 ……高い山を登る……高山たかやま……いや、関係ないはず……


「と、登山が趣味なの?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは最高です】

「それは良かったけど……えーっと……」

「✕✕✕✕✕✕」【非常に良い結果が得られました】


 全然答えてくれない。いや……今までも会話は成立してなかった気もする。


 とにかく……りんさんの趣味は登山なんだ。きっとそうなんだ。高山たかやまさんなんて関係ないんだ。


 ……りんさんがちょっと頬を赤らめているのは気のせいだ。少しばかり気恥ずかしそうにしているのは気のせいだ。

 高山たかやまさんの事を考えて、顔が赤くなっているわけじゃない……そうであってほしい。


 いや……でも……りんさんが恋人と一緒にいて幸せになれるのなら、なにも僕は言わないほうがいいのだろう。


 僕はりんさんとたまたま隣の席になっただけだ。

 それ以上でもそれ以下でもないし、それ以上にもそれ以下にもならない。


 ……なんとなくモヤモヤしてきたので、気になっていたことを聞いてみる。


「あの……僕が話しかけるの、嫌だったりする?」


 彼女は1人が好きなのかもしれない。好きで孤立しているのかもしれない。

 もしもそうなら、僕が話しかけるのは迷惑かもしれないのだ。


 彼女の返答は、


「✕✕✕✕✕✕」【比べると等価交換です】


 なにと比べられたんだろう……た、高山たかやまさんか? 高山たかやまさんに話しかけられるくらいには嬉しいのか?


 そもそも、高山たかやまさんに話しかけられてりんさんは嬉しいのか? それすらもわからん。


 というか……高山たかやまさんって誰だ? なんで僕は知らない人に嫉妬してるんだ? 性別もわからないのに……


 ……高山たかやまさん……


 まぁ、りんさんが幸せなら、それでいいや。


 ……


 なんでりんさん……こんなに顔が赤いんだろう。

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