3 私ですか?
主人公視点
この翻訳ソフトには便利な機能がある。その名もテンプレート機能。
テンプレートを保存しておけば、ボタン1つで翻訳を切り替えられるらしい。
例えば『日本語→中国語』と『中国語→日本語』をテンプレート登録しておけば、ボタン1つでそれらが切り替わる。
僕が話して、彼女が話すときはボタンを押す。それだけで異国の人とも会話ができるのだ。なんとも便利なものである。
さっそく僕は最初に
体育終わりの休み時間、僕はやはり
「体育って疲れるね。僕は一番苦手な科目なんだけど……
話しかけてみたが……なんだか今日の
翻訳ソフトを介して、彼女から返答が来た。
「✕✕✕✕✕✕」【それは戦争において役に立つと考えます】
「そんな重い話をするつもりは……」
政治的な話になってる。戦争の話になってしまった。最近はどんなことでも、すぐに炎上するから重い話題はしたくない。
「じゃあ……えっと、好きな科目は何?」
「✕✕✕✕✕✕」【夜の保健体育です】
リアクションしづらい……なんて返答したらいいんだ。ただの保健体育なら良かったのに……夜のとかつけたせいで、とてもリアクションしづらい。
とにかく話題を変えなければ。なんとかして軽い話に持っていかなければ。
「タピオカって飲んだことある? ちょっと前にブームだったよね。僕もいつか飲みたいと思ってるんだ」
僕がそれを翻訳して伝えると、ちょっとだけ彼女の顔が柔らかくなった気がした。
タピオカが好きなのだろうか。そう思っていると、
「✕✕✕✕✕✕」【それは温暖化の原因であると考えます】
「そうなの?」
タピオカって温暖化の原因なの? 原材料とか知らないからリアクションできない……
というか、だから重い話はしたくないんだって。地球温暖化とか難しい話はわかんないって。
軽い話題……軽い話題……話題を変えないと……
「
「✕✕✕✕✕✕……」【温暖化の要因の1つとなります】
「そうなの?」
同じリアクションしかできない。ゲームも温暖化の原因になるの? 電力の使いすぎ? それとも素材の問題? わからないからコメントできない……
とにかく温暖化から離れないと……
「趣味とかあるの? 僕は家でゲームなんだけど……
なんだか話しかけるたびに
「✕✕✕✕✕✕……」【私はあなたのことを考えます】
またそういう事を言う……本当にドキッとするからやめてほしい。
うーん……
……
中国語、勉強しようかなぁ……
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