第21話

「何かいる......」


 ヘスティアのいうとおり部屋の奥から、何かの近づく音がしている。 それは金色の鎧を全身にまとった騎士のようだった。 その動きは何か不自然さを感じる。


「こんなところに人!?」


「ちがう引いてアルテ!」


 私がそう叫ぶと、その騎士は剣を抜き突進してくる。 ヘスティアが前に出て剣で受ける。 


 ガキン!!


 高い金属音が通路に響いた。


「ぐっ!」


「まずい! ヘスティア引いて!」


 私は魔法銃を撃ち騎士を後ずさりさせる。 ヘスティアが引いた。


「こいつ! とんでもない力だ! まともに打ち合うと剣が折られる!」


 アルテが弓を伸ばして足をはらおうとするが、弓は足に当たって弾かれた。


「固い!!」


 すると騎士は剣をアルテにふるう。


「危ない!!」


 ガギ!!


 鈍い音がすると、ヘスティアは小手で剣を受けた。


「二人とも下がって!! サンダーブラスト!!」


 私は雷の魔法をその兜に当てると、騎士は兜を飛ばして倒れた。


「大丈夫ヘスティア!」


 アルテが心配そうにいった。 


「ええ、痛みはあるが小手で防げました」


 ヘスティアは小手をさわる。


「それにしても、あの斬撃を小手だけで防ぐとは...... 盾や鎧以上ですね」  


「カンヴァルがラードーンから作った小手だからね。 えっ? なにこいつ!?」


 倒れた騎士が立ち上がると兜の下は何もない。 


「アンデッド!?」


「いえアルテさま。 おそらく鎧を人形化、ゴーレムとした古代技術かと、どこかに魔力の核があるはず、ヒカリ、そこを探すのです!」


 ヘスティアはそういうと、ゴーレムと激しく打ち合っている。


「こういうのはだいたい! ヘスティア離れて!」


 ヘスティアが離れるのをみて、私は魔法銃と魔法を同時に放つ。


「サンダーヴォルテックス」


 放った雷が収束して鎧の胸を貫いた。すると何かが鎧を突き破り転がり、鎧のゴーレムは倒れ動かなくなった。


「倒せた...... さすがヒカリ先生!」


「まあねー」


「二つの魔法を同時に放つなんて......」


 ヘスティアが驚いている。


「ふふん、すごいでしょ!」


「相変わらず非常識なことをしますね」


「ほめてんの?」


「も、もちろん」


 そうぎこちない笑顔でヘスティアはいう。


「あっ! 先生これ!?」


 アルテは何かを拾って持ってきた。 それは少し破損した玉のようだった。


「これは......」


「さっきの鎧から飛び出たものです」


「どうやらそれが魔力の核か、それでこのゴーレムは自律行動していたようだな」


「ありましたよ」


 アルテが部屋の角のほうで声をあげた。 石の台の上に宝石のようなものがいつも置かれている。 


「こんなにある!」


「だが、どれが使えるのかわからんな......」


「まあ、持って帰ってカンヴァルとムーサにみてもらうよ。 これはアルテがもってて、私とヘスティアはこの鎧をカンヴァルに持っていこう」


「はい!」


「ええ」


 私たちは宝石と鎧を持ってかえった。



「これは面白いね。 金属の人造ゴーレムか、金色でも、これは青銅か...... この玉はみたことないな」


 カンヴァルは鎧と玉を確認しながらつぶやいた。 私たちは遺跡から帰り工房へと来ていた。 


「魔法石の方はわからないな。 ムーサどうかな?」


「え~と、確か色で魔法が判別できます。 赤なら炎、青なら水そんな感じで魔法がはいっているはずです」


「すごいなムーサ。 そんなことも知っているのか」


「いえ、本で読んだことがあるだけです......」 


 アルテにいわれてムーサは照れている。


「そうか透明なのは何もはいってなかったからか、そう言えばペイスに魔法いれてもらったら色がついたっけ? ならこの白いのはムーサなに?」


「白いのは氷系統の魔法ですね。 黄色が雷系統、緑が木です」


「なるほど、それを銃にはめて魔力をこめれば、さまざまな魔法が使えるのですね」


 ヘスティアは宝石を眺めながら感心している。 


「あたしが形を整えてやるよ」


「ええ、お願い」


 カンヴァルにお願いし、私たちは帰った。



 それからしばらくちいさな依頼をこなしていた。


「ふー、やっぱり一人で依頼はしんどいね。 カンヴァルに銃を預けてるし剣と魔法だけじゃ大変」 


 仕事終わり店に帰っていた。


「お帰りなさいヒカリ ......三人ですし、でも二人で出るより、一人一人受けた方が仕事が進みますしね。 でも受付だけでも誰かが来てくれれば、ムーサさんもかなりの魔法が使えますし助かるのですが」


「わ、私もがんばりたいです!」


 ペイスとムーサにいわれて少し考える。


「そうだね。 なら三人で大きな依頼を受けられるし、でも受付を探すのが大変だよ。 一応募集してんのに誰もこないもん」


 うーんと三人で悩む。


「受付だけなら来そうなものですが...... やっぱりヒカリさんの名前ですかね」


 ムーサはそうつぶやいた。


「ん? 私の名前」


「あっ! いえ......」


「なに? 名前がどうしたの! いいなさい!」


 私はムーサをくすぐった。


「きゃあ、い、いや、あはは、やめてくだ...... あははっ!」


「もうやめてくださいヒカリ、あなたのあったりなかったりした話が噂になって伝わってるんですよ」


「あったりなかったりした話?」


「......ええ、家を三つ壊したとか、モンスターをペットにしてるとか、いやむしろモンスターなんじゃないかとか......」


「ひっどーい!! そんなことしたことないし、モンスターでもない!!」


「でもヒカリ、家はあるでしょう......」


「家はあった......」


「家はあったんですね」


 ムーサはあきれている。


「それで怖くて誰もこないのか......」


「まあ、もともとモンスターを倒す人間なんて少数ですから......」


「そうです。 人は知らないものは怖いですし、仕方ないです」


 肩を落とす私にペイスとムーサが慰めてくれる。


「ありがと二人とも、ちょっと元気でた」

 

 その時、勢いよく扉があいた。 


「ヒカリ! やっとできたよ!」


 カンヴァルが嬉しそうにはいってきた。


「ほんと! どれどれ!」


 カンヴァルが鞄から弾丸状に加工した魔法石を机に置いた。


「これが魔法弾だ」

 

「これを入れ換えて使うの」


「ああ、それとこれ一応あたしなりにあがいた」


 そういって机に置いた。 魔法銃の先に短剣がついている。


「これ!? 魔法銃この先剣になってる!」 


「ああ、銃と剣を組み合わせた魔法剣銃ガンブレードだ。 それはアルテの弓と違い魔力で柄ではなく剣身が伸びる、青銅のゴーレムの鎧を加工してみた」


 銃を握り魔力をこめると剣身が伸びる。


「おお! すごい! さすがカンヴァル!」 


「まあな! 自信作だぞ!」


「ありがと! これならシアリーズとだって戦える」


 私はガンブレードを掲げてそういった。


 

「......まだ二週間とたってないのに、またやって来るとは何か策でもあるの、その防具かしらね」


 そう私と対峙したシアリーズはこちらをうかがう。


(警戒は怠らない......か、隙をつかせてはくれないのはさすがだ。 何か元々訓練をしていたのかな。 素人の動きではなかったけど)


「まあね。 この装備はあなたを倒すための秘策のひとつよ」


「へえ、ひとつ......か、ならば二つ目もあるのかしらね」


「どうかな。 やってみればわかるよ!」


 私は低い姿勢で走ると左手で銃を向ける。


「それは見た......」 


「知覚加速!」


 時間がゆっくり流れる。 シアリーズは右手で剣がふるった。


(さすが! この時間感覚の中でもこの速さ! でも!)


 その剣の切っ先を右手の小手で受けるように持っていくと、剣を弾いた。


 驚き目を見張るシアリーズに私が左手で銃を撃つと、その体が銀色へと変化していくのが見えた。


(これに反応するの!? でもさらに知覚加速!)


 やはり頭に激痛が走る。 


(やっぱり...... 痛みがすごい...... 意識も、でも!)


 撃った魔力の弾は白い凍気を放ちながらシアリーズの体に当たる。


「ぐっ! これは氷! いや根がはる!? 木と氷の魔法!!」


 さらに魔力でのばしたガンブレードの剣先がシアリーズに向かう。


(これは防げない! 取った!!)


 だが、シアリーズは左手の隠しナイフが飛び、私の前で爆発し私は倒れる。


「隠していた魔法!? やられた......」


 そう思い目を開ける。 すると私が撃った弾がシアリーズに当たるところだった。  


(えっ!? なに! いや! 今は!)


 私は先程とは違い右手の剣でシアリーズを攻撃する。 すると左手の隠しナイフが飛んできた。 私はそれをガンブレードをのばして弾き、シアリーズの首元へと止めた。


「なっ!」


「これで、私の勝ちよね」


 それをみていたシアリーズの仲間たちが声をあげる。


「......ふぅ、まさか私の魔法を込めたナイフを弾くなんて......」


「まあ、私にかかればよゆうよ、余裕......」


 そう強がって見せた。


(さっきのはなんだったんだ...... あれラードーンのときも...... でも何とか意識は保てた......)


「仲間になってくれだったわね...... 私たちにはすべきことがあるのよ。 それで、生き残れたらということにしてもらえないかしら......」


「生き残れたら...... どういうこと?」


 私が詳しく聞こうとすると、ペイスが慌ててもったりもったり走ってきた。


「はぁ、はぁ、ヒカリ! アルテが......」


「ペイス! アルテがどうしたの!?」


「ブルジュラ一家にヒュアデがさらわれたって...... 子供たちがきて...... それを聞いて走っていったの、追いかけたけど離されて......」


「なっ! なんのために!!?」


「ブルジュラ...... 私たちの排除のためだろう。 だから、子供たちは近づかせなかったのに......」


 そういうとシアリーズは立ち上がり、仲間たちに私一人で行くと言い残す。


「だめ! 罠だよ」


「わかってはいるが、私たちのせいで子供か危険にさらされている」


「わかっている。 私も行く! ああペイス、ムーサに言づてをお願い!」


 そしてペイスに他の子供たちを頼んで、私はシアリーズについて行った。

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