第8話

「本当にお客さん来ますかね」


 ペイスが店をホウキで掃除しながら不安そうにいった。


 私たちがコアモンスターを倒してかなり日数がたっていた。


「わかんない...... でもモンスターは減ったんだよね」 


「ええ、国からも安全になったと交付されて、往来が増え始めていますけど」


「鍛冶屋さんで量産している道具もフランさんが買い取ってくれるらしいし、待つしかないね」


「カンヴァルのところにいったんですよね」


「うん、あのカニ、メタルクラブの一部を加工しようと悪戦苦闘してた」


「あのメタルクラブもバーバラさんも扱ってないから置きっぱなしですしね」


「あの金属は加工が難しすぎるらしいからね。 あとあの銃なら直せるって」


 そんな話をして私が外を見てると、おもむろにドアが開いた。 身なりと品のよさそうな中年の女性が二人の女性をともなってそこにいた。


「すみませんが、こちらが冒険者の店ですか?」


「はい! なんのご用でしょう! まあこちらへ!」

  

 私はテーブルへと招く。ペイスがお茶を入れている。


「はい、こちらに依頼すると、何でも手にいれてくれると聞いて参ったのですけれど」


 女性は穏やかな口調でそう聞いてきた。


「ええ、ええ、なんでも手にいれますよ! なんでしょうか?」


「わたくしは、ルネールと申します。 実はある宝石を手に入れて欲しいんですの。 これと同じものを」


 そういうと片方のイヤリングを机に置いた。 そのイヤリングの先端には青く輝く宝石かあしらわれていた。


「これアークライトですね」


 お茶を運んできたペイスがいった。


「ええ、今は閉山しているスクハ鉱山でとれたものなの、何とか原石が欲しいのだけど、持ってきてくださるかしら」


「はい!! 喜んで!」


「では、お願いします。 これがわたくしの家ですから、手に入れたら使いをください。 こちらに向かいますので」


 そういってルネールさんはゆっくりお茶をのむと、お上品に帰っていった。


「はぁ、なんか、いいところの夫人って感じ」


「ええ、おそらく貴族か、大富豪と言ったところでしょうね」


「それでスクハ鉱山ってどこ?」


「えーと、カンヴァルの工房の奥にある山にあったと思います」


「なら、カンヴァルに聞いてみるか...... じゃあさっそくいってみよー!!」


 私たちはカンヴァルの工房を訪ねた。 金属をうつ音がけたたましくなっている。


「カンヴァルーー!」


「ああ、カンヴァルとペイスかどうした?」


 カンヴァルは傷たらけでててきた。


「どうしたじゃないですよ! 逆にどうしたんですか!!」


 ペイスか驚きエクスヒールを使う。


「いやぁ、実験で失敗してね。 で何のようだ?」


「仕事が来たんだ!」


「カンヴァル、アークライトって知ってますか?」


「ああ、この上の鉱山でとれてた宝石だな。 透明度が高くて高額な宝石だ。 今はモンスターのすみかになって閉山したけどね」 


「それをとってきてくれって依頼」


「あそこか......」


 カンヴァルは腕を組んで考えこむ。


「なに?」


「いや、あそこのモンスターは強くはないけどとにかく速いんだ。 私も挑戦したけど速すぎてとらえられず逃げ帰ってきたのさ」


「さすがに当たらなければ剛力も役に立たないもんね。 そんなに速いのか...... でも依頼だからやるしかない。 私の剣直ってる?」


「それが完全におれちまってるから、直せない」


「ええーー!!! 他に武器ないの!?」


「他って行ってもな...... どちらにせよ当たらないよ。  あっ、そうだあれなら」


 そういって奥の部屋に向かい戻ってきた。


「ほらこれだ!」


「それって銃!?」


「きれいに直したから使えるはずだ」

 

「でもどうやったら...... 弾もはいってないのに」


 銃を手にとると、真ん中の弾を込めるパーツが横に外れる。 その回転するパーツには六つの穴に何か透明な宝石のようなものが入っている。


「でも弾丸じゃなくて、宝石みたいのが入ってるんだよ」


「その宝石に魔力を込めるんだ」


「魔力を......」


「あたしは魔力のコントロールがうまくなくてね。 やってみたけど目の前で爆発して飛ばされたんだ」

 

「それでそのケガなんですか......」


「それを私が使うの!?」


「あたしは魔力操作が不得意なんだよ。 ただ鍛冶に使ってるだけだから、全力で魔力がはいっちまう。 少しだけ魔力を込めればいいはずだ」


「ええ~、そんな曖昧な感じなの?」


 私はその穴に埋まった宝石に少し魔力をこめた。 そして外に出ると気に向かって銃を構える。  


「本当に撃てんのかな。 重いから両手でもつしかないし、ふらふらするんだけど...... 爆発しないよね」 


 半信半疑で銃の引き金を連続で引く。


 タンタンタン


 乾いた音が鳴ると、前の大木にいくつもの小さな穴が開いた。


「えっ? なに今の」


 ペイスが木を見に行くと慌てて帰ってきた。


「う、後ろにまで貫通してます......」


「うそ!!」


「すごい威力だな...... 爆発すると思ったのに」


 いつの間にか隠れていたカンヴァルも驚いてるようだ。

 

「ちょっ! 逃げないでよ!!」


「すまん、すまん、魔力によって威力や効果が異なるようだけど、使ってみて調べてくれ。 あっ! あたし、メタルクラブ加工がまだなんだ。 あと、鉱山でいいものがあったら持ってきてよ!」


 そういうと工房へ戻っていった。


「逃げたな......」


「でもこれで鉱山にいけますね!」  


「ちょっと不安だけど、さっそくいこう!!」 


 私たちは鉱山へと向かう。

 

 

「ここが鉱山...... 何かつるはしとかハンマーとかトロッコとかおきっぱなしなんだけど」


 鉱山前にはいろいろな道具が散乱していた。


「ええ、五年前、突然モンスターが襲ってきたらしくて、逃げてそのままらしいですね」


 トロッコ用のレールにそって中に入る。 坑道内にはところどころランタンが置かれていた。


「これなら明るくして進めるね」


「ええ、私も灯りの魔法がつかえればいいんですけど」


「そんなのあるの?」


「前の遺跡とかは石に囲まれてたのに明るかったでしょう」 


「確かに、そういえばそうだった!」


「あれは古代の人がつかった魔法技術だと思います」


「へぇ」


「まあ、その銃と同じで失われた技術ですね」


 そう話していると、何かを感じてさけぶ。


「伏せてペイス!!」


 伏せると、頭上を何かが高速で飛び、みると天井に大きなコウモリが数体ぶら下がっている。


「ポイズンバット!! あれにかまれると毒とマヒをうけます!!」


 コウモリが牙を向け迫ってきた。


「速い!! 知覚加速!」


 なんとかかわす。 ナイフをふるも当たらない


「ダメだ! ナイフじゃあたらない!! 多分剣でもムリだ!」


「私も魔法を当てられません! ヒカリの雷の魔法なら!」


「ムリ! 私の雷を当てるには速すぎて、下手すればここが崩れる! 銃...... いやこんな重いのじゃ銃身がぶれて余計当たらない、むちゃくちゃ撃つか...... でもそれじゃすぐ魔力がなくなる、いや!」


 私は銃を構える。


「知覚加速!!」


 ゆっくり周囲が遅くなる。 こちらに迫るコウモリの動きも見えた。


(私の体もゆっくり動く、これなら銃身のぶれもない! いいタイミングで銃の引き金を引けば)


 タンタンタン


 三発撃つと一発がコウモリの体に命中して、地面におとした。


「よし!!」


 他のコウモリたちも続けざまに撃ち落とす。


「やった!! 威力があるから当たれば倒せる!」


「すごいです!! そんなにその武器を使いこなせるなんて!」


「いやー、それほどでもあるけどーって実は私の知覚加速を使ったからできるんだ」


「知覚加速を?」


 私はその説明をしながらモンスターを倒して先へと進む。 



「そんなことができるんですか......」


 ペイスは感心している。


「うん、この銃、私のスキルと相性がいいみたい!」


「ええ! これなら鉱山のコアモンスターも倒せそうですね!」


「だね! 挑戦してみるか!」


 私たちはさらに奥へと進む。 すると捨てられたつるはしの上の壁に青く光るかけらを見つける」


「あっ、これ!? アークライトって!」


「ええ、それです! あっ! あそこにも!」


「よっし! とりあえず、とれるどけとろう!」


 私たちは壁をつるはしで崩し、鞄一杯アークライトを手に入れた。


「えっ? 何か揺れてない」


「ええ、何か振動が」


 少し奥に進むと、広い場所にでる。 そこにはなにもいないが地面に大きな穴がいくつもある。


「なにこの穴、鉱夫さんたちが掘ったのとはちがうよね......」


「この固い地面を...... 離れた方が良さそうです......」


 私たちが足早に離れようとすると、目の前の地面がもりあがる。 でてきたのは巨大な蛇のような姿をしたモンスターだった。


「グランドワーム!! でも大きい! こんな大きさのはみたことがありません!」


「こいつがコアモンスターね!!」


 頭の部分が開くと、中は何十層にも生えた牙のようなものがうごめいている。


「デカイからどこ撃ってもあたるでしょ!」


 私は銃を撃ちまくる。 するとモンスターの頭が閉じ銃弾は弾かれた。


「ええ!! 効かないの!!」


「私が! ファイアアロー!!」


 炎の矢が向かいモンスターを包むが、なにもなかったかのようにこちらに突撃してくる。


「効いてない!」


「知覚加速!!」


 私はペイスを担ぐとその場から逃げ出す。


「あいつはダメだ!」


 何とか逃げきり鉱山からでることがてきた。 二人その場ででへたりこむ。 


「はぁ、全然効きませんでした。 やっぱりコアモンスターを倒すのは難しいですね......」


 ペイスがそういってうなだれる。


「うん、なめてかかってた。 そんな簡単ならこんなにモンスターが増えてはないってことだね......」


 私はすぐ立ち上がる。


「でも!! 依頼はこなせた! 喜ぼう!!」


「ええ! やりました!」


 私たちは二人で喜ぶ。 


 帰りにカンヴァルの工房によると、モンスターの素材を持って帰ってきてないことですねられた。

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