第7話

 私たちは今まで探索していた場所をまわり、モンスターを倒して素材を集めた。 売れるものはバーバラさんに売り払う。


「素材として売れるものはバーバラさんに売ったし、売れずに鋳造できるものはカンヴァルさんが集めてくれた鍛冶屋さんに加工してもらって、包丁、釜、クワ、ハサミ、鎌、手斧にしてくれた」


「これをフランさんのお店で扱ってもらえればいいんですね」


 ペイスと私が喜んでいると、カンヴァルさんは怪訝な顔をしている。


「ただ、そううまく行くかね......」


「どうして? かなりいいできだよ。 それに値段も安い」


 私は出来上がった包丁を手にそういった。


「いや、確かにできはいい、値段も安い。 でも客の方に先立つものがないんじゃな」


「先立つもの?」


「お金ですね...... 私たちが倒してもそれ以上にモンスターが増えて、いろんな仕事ができなくなってますしね」


 そうペイスが考え込む。  


「確かに、なんだが食品なんかも品揃えが悪くなってるね。 しかも高いし」


「モンスターが街道まででてくるようになってるからね。 物流がへってんだよ。 運送料も高くなる。 だから物価が上がってる」


「それってダンジョン......」


「そうさ、町の西にあるスーラの森にあるらしい。 国に騎士団を派遣するように頼んでるらしいけど、まあ放置だろうね」


「あそこの遺跡か ......仕方ない」


「まさかヒカリいくつもりですか!!?」


 ペイスとカンヴァルさんは驚いている。


「どちらにせよ。 このままほっとけば、いずれこの店はおろかこの町だってやっていけなくなるよ」


 二人は沈黙する。


「確かに...... 時間の問題ですね」


「そうだな。 あそこのダンジョンがなくなれば街道のモンスターがけっこう減るし、畑なんかも戻せるかもな」


「よし! 行くよ! 二人とも!」


「わかりました行きましょう! この町のためですし!」


「ああ、いい素材が手に入るかもしれないしな!」


 二人とも同意してくれたので、私たちはダンジョンに向かうことした。

 


 次の日、入念に準備をして西のスーラの森へと入る。 モンスターを倒しながら、素材を集めようとするカンヴァルさんを押さえながら先を進む。 昼前には森の奥の遺跡に着いた。

 

「ここね。 ペイスここなんの遺跡?」


「わかりません...... この世界には古代に魔法文明があったといわれていたり、神たちが住んでいたという話があったりと、いろいろいわれていますが、定かなことは」


「考古学者とかいないの?」


「学者なんていないさ、みんな日々の生活が大変なんだよ。 歴史を調べるなんてのは半ば道楽みたいなもんさ」


 カンヴァルさんがあくびしながらそういった。


(ふーん、なら遺跡から、なにか持ち出してもいいってことか)


「ヒカリ、なにをにんまりしてるんです? まさかよからぬことを考えていませんか」


(うっ! ペイスするどい)


「ううん別に、ではお宝...... いえコアモンスターを討伐しましょう!」


 私たちは遺跡の中に進む。 遺跡は石でできた迷路のようで、壁づたいに進んでいく。 


「なんで迷路にする必要あんの」


「隠れるためでしょうか?」


「まあ、モンスターからしたら隠れやすいしな」


「モンスターってそんな賢いの?」


「そうですね。 かなり頭のいいものもいるとききます」


「ほんと!!」 


「ええ、父さんから聞いた話では、古代の魔法で作られたモンスターもいるとのことです」


「そんなモンスターもいるんだ......」


「きたよ! 構えて!」


 暗がりから石のような体を持つカニのモンスターが現れた。


「でか! これなに! 石のカニ!?」


「ストーンクラブです! 物理があまり効きません! 魔法で......」


「いいや! 効くさ!」


 そういうとカンヴァルさんが走り、大きなハンマーを振り回すとカニの体を粉砕した。


「すごいカンヴァルさん!!」


「ええ! でもあんな重いものを軽々と...... 男の人でもそんなハンマーふるえないですよ」


「あははっ、これはあたしのスキル【剛力】《パワー》さ、筋力を倍にするんだ」


「それでそんなにカンヴァルさんは力が強いのか」


「ちがう!」 


「えっ?」  


「あたしはカンヴァルでいい、さんづけはやめろ。 そんな年はかわんないだろ」


「じゃあいくつなの? 私は15」 


「私は16です」


「わたしは...... じゅうきゅ、18......」


「絶対嘘だ。 19でしょ!」


「いいんだよそんなことは! これから二人ともさん付けはやめろよな」


 そういうとずんずん一人で進んでいった。

 

「私なんか早く大人になりたいのに、なんでごまかすかな」 


「ふふふっ」 


 ペイスは笑っている。 私たちはカンヴァルについて階段をおりて行く。

 


「それにしてもこの剣切れる! この固い石のカニをバンバン切り裂けるよ」


 私は集まってきたカニを切りながら、そうカンヴァルに話す。


「そうだろ。 あたしが作ったからね。 いい素材があればもっといいものも作れんだけどね」


 ハンマーで砕きながらカンヴァルは笑っている。


「お、お二人とも話ながらよく戦えますね」


 炎の矢を放ちながらペイスはいった。


「まあね。 ペイスにかけてもらったストレングスもあるし、余裕、余裕!」


「ああ! このストレングスっての体が軽いし攻撃の威力もあがる! すごいねペイス」


「い、いえ、そんな」


 ペイスは照れている。 そうこうしてかなりの階層をおりた。


「ここが十階か...... 大分おりたけど空気はあるね。 空気孔とか見当たらないのに」


「魔法でつくられた遺跡なんでしょうね」

 

 その時地響きがして天井からパラパラと石が落ちてきた。


「奥になにかいるね...... 大きい」


「ですね。 これがコアモンスター」


「ああ、ゆっくり奥の部屋をのぞこう」


 角を曲がり広まった奥の部屋をのぞく。 太い円柱が何本もある大きな部屋には、今までのカニの数十倍はある光沢のあるカニが地響きをたてながら部屋を歩いていた。


「あれがストーンクラブ!? でかすぎない! あっ! でも、あそこ宝箱みたいなのがある!!」


 部屋のすみに金縁の木箱がいくつかおいてあった。


「いえ、それよりあんなの倒せるんですか!?」


「それに体が石じゃない金属だ。 メチャクチャ固そうだな」


 ペイスとカンヴァルは驚いている。


「でもやるしかない! いくよ!!」


 私が先行して突っ込む。 


「サンダーボルト!!」


 巨大な雷がカニを包みその場で止まった。 しかしカニはゆっくりこちらに向かってくる。


「効いてない!?  なら剣で!」


 カニの足を切ろうと剣をふるうと、剣が真ん中からおれた。 


「おれた!?」


 すぐさまカンヴァルがもう片方の足を殴りぐらつかせた。


「ファイアボール!!」  


 カニが体勢を立て直し殴ろうとしたとき、カニ顔に炎の球が当たり怯んだ。 


「ヒカリ! カンヴァル引いてください!!」


 私はカニから離れ部屋の外へとでた。


「......はあ、はあ!助かったよカンヴァル、ペイス!!」


「ええ」


「しかし、あたしの造った剣が折れるなんて...... どうする?」


 カンヴァルが聞いてきた。


「カンヴァルのハンマーは一部だけど砕いた。 でもそれだけじゃ決定打にはならないね......」


「一度もどって新しい武具を造るしか......」


「そうはいってもメタルゲッコーの武器以上となると、しんどいね」


 カンヴァルはこまっている。


「うーん、ならやっぱり、いま何とかあいつを倒すしかないか」


「といっても物理攻撃があまり効かないんじゃ...... 私の魔法も多少は効くみたいですけど、動きを止める程度、火力が足りませんし......」


 ペイスは不安げにいう。


(火力か...... なら)


「ねえカンヴァル、あいつがコアモンスターならイコルがあるはずだよね。 それをハンマーで砕けば倒せるんじゃない」


「まあ、それはそうだが、どこにあるのかわからないんじゃどうしょうもないよ」


「それは私とペイスでやるから、むき出しになったところをお願い!」


「それが可能なら、わかった...... まかせろ!」


 部屋に戻り魔力を練る。 カニが地面を砕きながら、近づいてくる。 私はペイスと呼吸を併せる。


「いいペイス!」 


「はい!」


「せーの!!」  


「サンダーボルト!! ファイアアロー!!」


 私が放った雷と炎が重なって雷炎がカニを飲み込んだ。 その炎熱がカニの表面を溶かすと、胸の辺りに青い大きな結晶が見えた。 


「あった!! カンヴァル!」


「わかってるよ!!」


 カンヴァルは走りカニの足を体を回転させハンマーで叩く、すると体勢を崩した。 そして地なりを起こして倒れたカニの上に乗ると胸の結晶にハンマーを振り下ろした。


 パキィィンン!!


 そう高い音がして青い結晶は砕けちり、カニは動きを止めた。


「やったよ! ペイス、息ぴったりだ!」


「ええ! 倒しました!!」


「カンヴァル?」 


 見るとカンヴァルはカニの上で調べている。


「すごい!! こいつの体みたこともない材質だ!! お宝だ!! やった!!」

 

 そういってカンヴァルはカニの上で小躍りしている。


「はぁ、素材マニアめ」


「ふふっ、仕方ないです」


「あっ! そんなことよりお宝~お宝~」


「一緒じゃないですか......」


 あきれたようにペイスがいう声が後ろから聞こえる。 


 大きな金縁の木製の箱をゆっくり見てさわる。


「とうやら、開いてるみたい」


「何か罠が仕掛けられているとか......」


 ペイスにいわれて、少しはなれた所から折れた剣で開けてみる。   


「特になにも起こらないね...... あとは中身、なんだ空、これも空、これだけ......  あっ! これ!?」


 恐る恐る中をみると、何か金属の筒のようなものがはいっている。


「これって! 銃!?」


「じゅう?」


「うん! たまを飛ばす武器だよ! これ多分リボルバーとかいうんだ」


「なんだってーーー!!」


 カニの上にいたカンヴァルが降りて走ってきた。


「どれみせてくれ! たまを飛ばす武器だなんて聞いたことない! ふむ、ふむ、なるほど!」


「古代の遺物ですかね。 ずいぶん古いけど」


 そうペイスがいった。


「でも使えない...... このはずして回転する丸い穴のに弾をこめるはずなのになんかで埋まってる......」


「なんでそんなこと知ってる? いや、それにこれはたまを込めるものじゃない...... 魔力を放つ武器だ」


 カンヴァルが銃を見ながらそういった。


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