第2話 六極との戦闘

「六極を倒しに来た」


 ソーヴィの宣戦布告を受け、メモリも剣を抜き戦闘体制に入る。


「六極を倒しに来た?随分と自信があるわね」


「まあな。俺強いし」


「その自信、いつまで続くかしら‥‥‥ねっ!」


 メモリが瞬時に距離を詰め、ソーヴィに切り掛かるが、ソーヴィは最小限の動きで剣を交わす。


「うーん、速さは普通だな」


「ちっ!これなら‥‥‥っ!?」


 ソーヴィに最初の斬撃を躱されたメモリは、直ぐ様剣を引いて次の攻撃に行動を移そうとするが、剣の先がソーヴィの足によって押さえつけられていた。


「どうした?隙だらけだぞ?」


「‥‥‥」


 メモリは剣が取れないと分かった瞬間、凄まじい速度で後退し、ソーヴィから距離を取った。

 そして、お互いに次のアクションが無かった為暫く相手の様子を観察していた。


(強い‥‥‥コイツの動きの初動が全然見えなかった。あんなに自信満々だったのも納得だわ。この人ならもしかすると‥‥‥)


(俺の方が力が強いのを理解した瞬間剣を捨てて直ぐに引いたか、意外に冷静だな。それにしてもコイツ、もしかして‥‥‥)


 ソーヴィは何かを悟ったと同時に、メモリに指を刺して魔力弾を飛ばす。


「くっ!」


「躱すのが遅い」


「なっ!!」


 メモリは魔力弾を躱そうとしたが、想像以上の速さで魔力弾が迫っており、躱すのが厳しいと判断した結果中途半端な体制で魔力弾を弾き飛ばした。

 その隙をソーヴィが見逃すはずも無く、メモリのガラ空きになった腹に掌底を叩き込む。


「ヴォエッ!!」


「ほら、次の攻撃に備えろ」


「!!!」


「今から魔力弾をぶち込むぞ!」


「っ〜〜〜!!範囲固定フィクシーズ!!」


 パァン!


「きゃっ!」


「おっふ」


 ソーヴィが放った無数の魔力弾が止まる。

 魔力弾のみが突如止まった事により、魔力弾内のエネルギーが暴発し一斉に割れる。

 割れた魔力弾から漏れたエネルギーが衝撃波となり周りを襲った。


(やっと固有魔術を使ったか。魔力弾が破裂する前に止まっていたな。

 物体の動きを止める系の魔術か、結界とか壁張り系の魔術か〜。まあ、壁張り系だったら最初から防御してると思うし、ほぼほぼ止める系の魔術だな。条件までは知らんけど。

 結構時間が過ぎちまったな。そろそろ茶番は辞めるか〜)


「ハァッ、ハァッ‥‥‥なんで追撃してこないの?」


「ん?あ〜悪い悪い、衝撃波をまともに受けたお前の反応が可愛くて呆けてたわ」


「は、はぁ!?ふざけた事言ってんじゃないわよ!あんた、私を倒すつもりあるの!?」


「ないよ」


「はぁ〜!?あんたさっき六極を倒すって!」


「だってお前、六極じゃないだろ」


「‥‥‥っ!」


 ソーヴィの発言が当たっていたのか、メモリは大きな目をさらに見開いたまま押し黙る。

 そのメモリの反応を見てソーヴィは自身の考えが当たっているのを確信した。


「ど、どうして」


「やっぱりな。ある程度追い込めば邪神の魔力を出すかと思ったら全然出す気配がないし、軽い戦闘でもう限界そうだし」


「あっ、あぁ‥‥‥」


 ソーヴィに六極じゃないと完璧にバレてしまったメモリは、尋常じゃないほど体が震えだし始めた。

 そんな様子を見たソーヴィは子供を安心させるような優しい声でメモリを慰める。


「そんな怯えた顔すんなって。別に六極じゃないならもう攻撃はしねえよ。六極は‥‥‥あいつだろ?」


「えっ!!」


 刹那、ソーヴィは後ろを振り向かずに指先から背後の木を魔力弾で撃ち抜いた。

 木々が薙ぎ倒された影響で土煙が天高く昇っていく。


「おいおい、こんな可愛い少女にいきなり物騒なモン飛ばしてくんなよ。興奮して濡れちまったじゃねえか」


「はぁ、やっぱりお前が六極だったのか」


 土煙から聞こえてきた声に思わずため息を吐くソーヴィ。

 土煙の中から出てきたのは先ほどソーヴィをこの拠点まで道案内した少女、イメロンだった。


「せいかーい!なあソーヴィ、早く殺り合おうぜ!お前の戦闘を見てたら身体が疼いて疼いてしょうがねえ!」


「その見た目でバトルジャンキーとかギャップ萌えが過ぎるぜ。まあ、早く戦うのには賛成だな」


 今、真の六極との戦闘が始まる。

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