一人目の六極

第1話 六極との出会い

「だいぶ景色が変わってんな〜」


 ソーヴィがスカイハイから飛び降りて約1時間が経過していた。

 あと数秒もすれば森に突っ込んで地面に激突してしまうだろう。


「地上に降りんのは100年振りくらいか〜?よっと」


 ソーヴィは空中で木を器用に躱しながら、足から魔力を噴出して勢いを殺し、無事に地上に着陸した。


「さて、取り敢えず情報でも集めるとするか。なあ、そこの木に隠れてる人に聞きたいことがあるんだけど!」


 ソーヴィは後ろを振り向き、誰もいない木に向かって話しかける。

 数秒後、ソーヴィの目の前にある木の陰から10歳ほどの小柄な少女が恐る恐る顔を出した。


「こ、殺さないでください‥‥‥」


「えっ!?ご、ごめん!怖がらせたつもりは無かったんだ!俺が怖いならここから動かないからさ!聞きたいことがあるんだ」


「は、はい‥‥‥」


(久しぶりの地上でテンション上がってるから無意識に威圧しちまったか?気をつけないとな)


 少女を怖がらせてしまい軽くショックを受けたノーヴィだったが、気持ちを切り替えて何もしない意志を見せる為、両手を上げたまま少女に質問をする。


「今、六なんたらって奴らを探しているんだけど何か知らない?」


「六なんたら?‥‥‥もしかして、ろっ六極のことですか?」


「あー!それそれ!何でもいいから知ってる事を教えて欲しい!」


「ひ、一人だけなら詳しく話せます。六極の1人でメモリという盗賊がこの近くに拠点を構えていますが‥‥‥」


「まじで!?うひょー!幸先いいな!」

 

「ひっ!」


「あっ、ごめんごめん」


 六極の情報が思っていたよりも早く手に入り、

 しかも、その六極の1人がたまたま着地した森に拠点を構えているという。

 あまりの運の良さに思わずテンションが上がってしまい、再び少女を怖がらせてしまったノーヴィは反省しつつ少女に質問を続けた。


「なあ、そいつの見た目とか固有魔術は分かるか?」


「こ、固有魔術は分かりませんが見た目なら。赤色の髪で身長は貴方と同じくらいです。あと六極の人達は体の何処かに紋章が彫られていると聞いたことがあります」


「そっかそっか。あんがとな!」


(紋章か‥‥‥邪神の魔力による影響か?あいつも紋章が6個あったからな〜あいつと同じ紋章を持ってんなら他の六極も見つけやすいか)


「あ、あの〜」


「ん?どうした?」


「六極の情報を聞いて何をするつもりなんですか?」


「とある目的の為に全員倒す」


「え!?ろ、六極をですか!?」


 ソーヴィの答えに少女は思わず声を荒げる。

 先ほどの態度は何処へ行ったのか、少女はズンズンとソーヴィと距離を詰めた。


「ほ、本当に六極を倒すつもりなんですか!?あまりの強さにどの国も手を付けられないんですよ!」


「お、おう。だって倒さなきゃいけないし」


「そんな命知らずな人がいるなんて‥‥‥」


 少女は信じられない様子で、しかし少しだけ嬉しそうな顔をしてソーヴィを見つめた。


「どうせ俺より弱いって。それより話を戻すが、拠点ってのは何処にあるんだ?」


「え〜っと、ここから北へ向かって数十分程歩いた所にあります。よろしければ道案内をしましょうか?」


「おっ、良いのか?ならお言葉に甘えようかな。今更だけど、俺はソーヴィ。お前の名前はなんていうんだ?」


「イメロンです!道案内は任せてください!」


「おう!頼むぜ、イメロン」


 ソーヴィはイメロンと共に、六極のメモリが構えている拠点へと向かった。


「ごめんな。早く倒したいからってこんな森の中を走ることになって」


「いえいえ!マダー大森林なら慣れているのでこの位の速さなら大丈夫です!」


「そっか〜イメロンはその歳で凄えな〜」


「そ、そうですか?」


「だって大人でもこのスピード維持しながら森の中を走るって相当キツイぞ?しかも、その辺のモンスターを避けながら進んでるだろ?」


 ソーヴィの言う通り、イメロンはモンスターと接触しないよう目的地へと走っていた。

 一切戦闘がなかったので、ソーヴィ達は効率よく進むことができ、あと少しで六極のメモリがいる拠点に着きそうだった。


「は、ははは。この森で遊んでいる内に鍛えられたんですかね〜あはは」


「ふ〜ん、よく六極の1人が拠点を構えてるこの森で遊べたな」


(イメロンの首筋に見えた魔法陣みたいな模様、まさか‥‥‥)


「それは‥‥‥あっ!ソーヴィさん、拠点が見えてきました!」


「まじ!?おっ、あれか!んじゃ、先行ってくるわ!!」


「はい?」


「イメロンはもう戻ってていいぞ!道案内ありがとな!」


「キャッ!」


 そう言うとソーヴィは地面を蹴り上げ、森の中を走っていた時とは比べ物にならないほどの速度で拠点へと向かった。


「はっや‥‥‥あいつが蹴った地面抉られてるじゃん‥‥‥ははっ、ちょっと楽しみになってきた」


 イメロンは玩具を見つけたような笑みを浮かべながらソーヴィを追いかけるのだった。

 ソーヴィが蹴り上げて抉られた後がある地面の隣には、もう一つ似たような痕跡が残っていた。


「お〜近くで見ると以外に大きいな。建物って言っていいのかわかんねえけど、建物自体に微かな魔力を感じるな。魔術で組み立ててんのか?」


 ソーヴィは木材や鉄の塊が乱雑に積まれたゴミの山のような建物に着いた。

 ソーヴィは警戒しつつ建物の中へ入ろうと歩き出した瞬間、建物から一人の女性が出てきた。


「赤い髪に俺と同じくらいの身長。お前、六極のメモリで合ってる?」


「‥‥‥そうだけど。何の用?」


 ソーヴィの質問に答えるメモリ。

 だが、ソーヴィを見ておらずどこか怯えた目つきでソーヴィの後ろを見つめていた。

 そんなメモリに軽く不信感を抱くが、ソーヴィはそのまま戦闘体制に入る。


「六極を倒しに来た」

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