女神クエスト!!

愚弟

プロローグ

「スゥ‥‥‥スゥ」


 空に浮く小さな島スカイハイで、鮮やかな薄紫色の髪に、少し幼い顔立ちが特徴の青年が昼寝をしていた。

 青年の名はソーヴィ。かつて邪神と戦い世界を救った英雄である。

 今はスカイハイで邪神討伐記念として女神パイムとバカンスを楽しんでいた。


「もう、こんな所に居たのね。ソーくーん、ちょっとお願いが‥‥‥あら、可愛い寝顔ね」


「スゥ、スゥ」


「ふふっ、起こすのも可哀想だし待つ事にしまょう」


 寝ているソーヴィの元にパイムが来て数十分。

 ソーヴィは目覚めるのと同時に、頭に違和感を感じた。


「んぁ?地面が柔らかい‥‥‥それに、空が見えない?」


「起きた?おはよう、ソーくん」


「おはようございまーす。‥‥‥えっ、パイム様?‥‥‥も、もしかして俺って今膝枕されてます!?」


「そうよ〜膝枕の感想はどう?」


「ウブブブブっ!も、もう死んでも良いくらい最高です!うへへっ」


「お世辞でも嬉しいわ〜♪」


 片想い中の相手に膝枕されていると分かったソーヴィ。

 気持ち悪い笑みが我慢できず溢れてしまうも、柔らかな太ももの感触に全神経を注ぎつつ、視線はしっかりとパイムの大きなお山さんに釘付けになっており、脳内フォルダに保存していた。


(さ、最高の感触に美しい景色だ!これが天国なのか??)


「あのね、今日はソーくんに大事なお話があるの」


「うへへへへ」


「実は邪神を倒せたのは良かったのだけれど、邪神を倒した時に邪神の魔力が少量だけど残ってたみたいでね、それが一部の人間に移っちゃって‥‥‥」


「う、うひっ」


「言い訳になってしまうのだけれど、あまりにも少ない魔力量だったから気付けなかったの。その邪神の魔力を持った人間、六極と呼ばれている者達が最近地上で暴れていて大変なのよ」


「おほほほほほ」


 未だに膝枕の虜になっている馬鹿に構わず話を進めるパイム。

 しかし、パイムの次の言葉が馬鹿を現実に戻すほど馬鹿にとって衝撃的だった。


「本当は私が魔力を回収できたら良いのだけれど、邪神との戦いで力の大半が失われていて厳しいの。だからソーくんに依頼するわ。ソーくんが六極を倒して魔力を回収して欲しい。それが終わった時、ソーくんの言うことを何でも聞いてあげるわ」


「くぅぅぅぅ〜‥‥‥ん?今なんて言いました?」


「もう!ソーくんに邪神の魔力を回s」


「その後です!終わった時になんと言いました!?」


「??ソーくんの言うことをなんでも聞くって」 


「っしゃぁぁぁぁ!!!!」


「ひっ!」


 情緒不安定のソーヴィに軽く恐怖を抱いたパイム。

 だか、今のソーヴィにとってドン引きしているパイムなど眼中にはなかった。


(な、なんでも言うこと聞く!?つまり、パイム様と夫婦になれるし、あんな事やこんな事までできる!いや、パイム様と恋人として時間を過ごすのも良いな‥‥‥いやいや、恋人だと別れてしまう可能性もある。やっぱり結婚して夫婦になった方が‥‥‥いやいやいや、結局結婚したとして離婚するかもしれない。はっ!なにがあっても絶対俺と別れずに結婚前提のお付き合いをして欲しい。これが最善ベストじゃないのか!?お、俺の天才的な頭脳が恐ろしいぜ)


 この気持ち悪い思考を纏めるのに約0.5秒。

 考えが纏ったソーヴィは早速行動に移す。


「パイム様!」


「な、なにかしら?」


「その依頼引き受けます!さっきの発言、撤回しようとしてももう遅いですからね!では時は金なりと言う事でもう行きます!」


「ちょ、ソーくん!?」


「うぉぉぉぉ!!!」


「あっ、行っちゃった‥‥‥飛び降りなくても私の魔術で地上に送ってあげたのに‥‥‥」


 奇声を発しながらスカイハイから飛び降りたソーヴィ。

 パイムは呆けた顔で、暫くソーヴィが飛び降りた場所を見つめていた。


「双六だか蝋燭だか知らねえけど全員瞬殺してやるぜぇぇぇ!!!待っててくれよパイム様ぁぁぁぁ!!!」


 今、最強の魔術師が自身の邪な願いを叶える為の苛烈な旅が始まる。






 〜ソーヴィがスカイダイビングしている頃のパイム様〜


「もぉ〜ソーくんったらあんなに張り切っちゃって。魔力の回収が終わったらどんな事を頼んでくるのかな〜ソーくんが好きなお姉さんっぽい仕草や口調にしても全然次のステップに進まなかったし‥‥‥で、でもでも恋人になって長いから、これを機にあんな事やこんな事を言ってくるのかな〜そ、それともエ、エッチな事とか!?え、えへへ〜」

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