第23話 もうおしまい




人間どもが行き交う横浜の交差点の信号機の上に、邪悪な笑みの女がいた…。


彼女の姿を見ることが出来たのなら、パーカーを羽織り、ミニスカートのまだうら若き少女の様に見えたであろう…。  



「はぁ…書けない…皆殺しの設定は難しい…」


彼女はニヤリと口角を上げ、男に向かって吐息を吐いた…。


吐いた吐息は茎と葉に小さく鋭いトゲがある血の色をしたアザミの花へと姿を変えた…。


アザミの花はゆらゆらフラフラと風に乗って飛んで行き、男の手に触れすぅーっと消えた…。


男は信号機を見上げ、彼女に向い手招きをした…。


「お久しぶりです。創造主様…」


彼女は男に頭を下げた…。


「本当にお久しぶりですね?って主様?涙が…」


「お前に隠してもしょうがないな…ミカがいなくなった…あいつの母親みたいに…消えたんだ…」


「いつか帰ってきますよ…」 


「いや…ミカはもう帰らないよ…ミカの病気のことも、俺にはすべて話さなかったしな…それに俺が不甲斐ないからいつまで経ってもミカを幸せにすることができなかったしな…俺も疲れたよ…もうおんなは俺には不要なのかもしれないな…泣いたからもう大丈夫…」


「本当、相変わらず主様は諦めが早いね。だから、薄情者って言われるんすよ?」


「あはは…薄情者かぁ…俺は薄情だからな」


「私が居るでしょ?大丈夫っすよ」


「いや…もう何も書かないし書け無いな…だから、小説アザミもアザミちゃんも終わりだな…お前めこれからは俺の中だけで生きろ…お前は俺で俺はお前なんだから…」


そう言うとsamはノートパソコンを閉じて、小脇に抱えて霧のように消えていった…。   完

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アザミちゃん ぐり吉たま吉 @samnokaori

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