第21話 バースデー後半戦

人間どもが行き交う交差点…。

  

「つか、こんな事言ってる場合じゃない!早くシーに先回りだ!!」

 

彼女は千葉の夢の国へと急いで向かった…。



「ミカ、改めて誕生日おめでとう。さぁ、出発しよ!」


創造主たる作者のsamは、ミカにキスをし、ミカの車に乗り込む。


ミカはワンピースを着替え、DLフリークの顔になった。


「限られた時間。走るわよ!食べるわよ!いっぱい買うわよ!!sam〜買って貰うわよ!!!」

 

いつものフレーズを放つとミカはアクセルを踏み込んだ。


おぅ!

今日は誕生日だ!

好きなだけ食え!

好きなだけ買い物しろ!


samは心でミカに伝えた。


それを感じたミカはsamに天使の微笑みで答えた。


「新しいグッズがたくさん出たの」


「みんな買え」


「うん」 


「スモークターキー、復活だよ」 


「食え食え!」


「うん、とりあえず、ペッパーのポップコーン4つ買ってね」


「おぅ!つかタワーオブテラーのプレミア取ったぜ」


胸に貼ったバースデーシール…。


キャスト達が言ってくれる、ハッピーバースデーの言葉が自分の事のようにsamは嬉しい。



ダッフィーの耳のついたカチューシャ姿のミカをようやくアザミは見つけ、シラミに姿を変え首からぶら下げたポップコーンケースに潜り込んだ…。


「やっと見つけた…しばしこれで同伴しましょ。ポップコーンの匂いて気配を消せるからね…ププッ」

 


「ん?何やらアザミの気配が…まさかな?」


創造主たる作者のsamは一瞬訝しがったが、気を取り直しケープコッドのダッフィーのショップへ向かった。


ミカはショップへ入ると目を輝かせ、まるでアリエルの様に人波を泳ぎ、手に持つカゴへグッズを放り込む。 


レジに立つ。


次々にバーコードを読み取る。

 

「sam、なんか恐ろしい事になってるよ」


「え?何が?」


「金額が…」


「バースデーなんだ、気にするな…IDで…」


「気にするわよ。あなたのお金は私のお金なんだから」

  

と、言いつつも、またもやミカは胸の乳首のところでさり気なくVサインをしていた。


「ププッ…IDだからな」

 

袋に詰め込んだグッズを1度ミカに手渡し、samは言った。

 

「ハッピーバースデー」


「これがプレゼント?」


「いや、今日の全てが俺からのプレゼントだよ」




「ププッ、主様ってミカさまとふたりだと気取るんだなププッ」


アザミはポップコーンケースの隙間から覗き、独り言ちた。



「照り焼きチキン食ってランチボックス買えるセット食ったら、、ランドへ行こうか?」

 

「そうだね。早く行かなきゃランドの食べもの終わっちゃうからね」

  

「荷物、重いしなっと、ちょっとトイレ行こうよ」


トイレの前で右と左に別れ、samはトイレの個室へ入るとポップコーンケースを開けた。


「アザミ!出ろ!」

 

狭い個室の中、彼女は姿を現した。


「やっぱな…ポップコーンの匂いで隠れたって俺を誤魔化せる訳ないだろ!」


「ひぇー、すびません、すびません、お許し下さい」


「お前、カ○道楽からずっといたろ?」

 

「カニエキス、頂きました。うまかった…」


「うまかったじゃねぇよ!今日は来るなって言ったよな?どうしてくれようか?ん?ん?永遠に便所に閉じ込めてやろうか?便所に流してやろうか?」


「ひぇーお許しを…」


「今日はミカの誕生日だしな。殺生はしたくない。幸いミカも気づいてないしな」


「そうですよ、今日は穏便に…」


「ってお前が言うな!よし、このままポップコーンケースに入ってろ!んでポップコーンと一緒に俺に喰われたらお前は終わりな。噛み殺してやるから、それが嫌ならポップコーンケースの中を逃げ回れ!!」

 

「ちなみに、シラミの姿は俺が許すまで変えられないからな。最後まで逃げおうせたら許してやるよ」



トイレから出たsamはポップコーンをひとつまみ、口へ放り込んだ。


samにポップコーンと共に摘まれたシラミのアザミは必死で藻掻き、すんでのところでダイブしポップコーンケースへ逃げ戻った。


samはアザミに思念を送った。


「これは序の口だ。俺に食われないようにせいぜい逃げ惑え!ププッ」


シーの駐車場からランドの駐車場へ移りランドへ入園する。


「時間が無いわ!アトラクションとパレードは後回しね。まずはポテチュロ買って…スモークターキーよ!」


ポテチュロを食べ、ほとんど満腹なsamはスモークターキーを食べれなかったが、大食いのミカは軽くターキーを平らげる。


「ミカ、妊婦のようになってるぜ…その腹には何が詰まっているの?」


「ここには、愛と希望が詰まっているわ」


ミカはそう言い自分の腹を撫ぜる。


「いや、絶対にその腹はう○こが詰まってるだろ?」


「バカー」


ミカは笑いながらもsamへグーパンチを放つ。


そしてsamの耳元へ囁いた。


「samと一緒だと楽しいわ。ありがとね…さぁ後10分で店が閉まる!ペッパーチキンを買いに行くわよ!!」


ミカは小走りでチキンのフードショップへ向かう。


またまたショッピングに魂を委ねたミカは、すっかりアトラクションやパレードを忘れ、瞳に写るカラフルなグッズはミカの瞳を7色に輝かせ、目当てのキャラクターグッズを求め彷徨う…。


そして、瞬く間に閉園の時間を迎えた…。


「あぁー終わった。終っちゃったよ…」


「うん、でもミカは終わらないよ。そして俺達の記念日はまだまだ続くしね」 


「そうだね。あなたと一緒なら、毎日がsamとミカの記念日だからね」  



ミカはそう言いつつ、samの首から下げたポップコーンケースを開き、ひとつまみ持ち上げる。


「あら?やだー虫がいる!!」


「どれどれ」

 

samはポップコーンケースの中の逃げ惑うシラミを指先でつまみ、プチッと潰した。


潰れたシラミを指で弾き、samとミカは車に乗って帰って行った。


「ひゃー死ぬかと思った。主様、手加減無しで潰すんだもんな」


その時、創造主たる作者のsamから彼女へ思念が来た。


「アザミ、生き返ったか?お前は勝手に帰れ!つか、ミカともう少し一緒に過ごすから交差点に戻って俺を待て!」

 



人間どもが行き交う横浜の交差点…。


彼女はひとり佇んでいた。


「あ!主様〜!やっと来た!」

 

「ミカにお前の事話したら、ミカは許してくれたよ。ホントは万死に値するんだからな!2度と俺達を邪魔するなよ…ほれ…ミカがこれ食えってよ」

 

samはスモークターキーを一本アザミに渡した。


「アザミ。お前、ちょびっとミカに気に入られてるからって調子コクなよ。次は無いからな!!」


そう言いつつ、samはポップコーンもアザミに渡した。


そして、じゃあなと戻るsamの背中に言葉を発した。


「主様〜やっぱ私を愛していますね?」


歩いていたsamは、くるりと振り返り、アザミの所まで走り戻り、いきなりアザミの額にグーパンチを放った。


「お前なんか、絶対に愛して無いから!このポップコーンはお前は潜んでいたやつで、ばっちくてミカに食わせられないからお前に食わせるだけだから!」  


そう凄むとsamは足早に自宅へ戻って行った…。


彼女は額を擦りながら呟く。


「それでも、主様、お慕いしてますから…」


それを感じたのか?


samは悪寒により、ブルっと身震いをしたのだった…。

 


自宅へ戻った作者のsamは、ミカに正座させられ、説教を受けていた…。


「samちゃーん…せっかくアザミちゃんが祝いたいって言ってくれてさ、ついてきたのに何で私に内緒でアザミちゃんを隠すかな?3人で行動したら良かったじゃない」


「イヤ…ミカの誕生日なんだぜ…アザミなんかに邪魔されたくないよ」


「でも私に事実を隠したね?私には隠し事は禁止だったよね?ん゙?ん゙?こりゃお仕置きだね…」


ミカはそう言うと、自分の指をしゃぶった。   


「え?何にしてんの?」


「大丈夫大丈夫、この指をsamちゃんに差し込むだけだからね。それで許してあげる」


「え?どこに指を入れるの?」


「入れたら判る。とりあえず、パンツ脱いで…」


ミカは狂気をまとい、samの身体を押さえると、パンツを引き下げた…。


samは恐怖で気絶した…。


「ほれ…ぷすっとな…」

  

「ぎゃ〜〜!!!」


やはりミカは恐怖の大魔王だった…。


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