第19話 しりとり
ここは横浜…。
人々が行き交う交差点の信号機の上に、彼女は腰掛け人間どもの心の声を聞いている…。
妬み、誹り、不満、欲望…。
心が黒く染まった人間どもに取り憑きあざむき狂わせて、奈落の底へ堕とす為に今日も彼女は獲物を待っていた…。
彼女はふと思い出した様に、自らの思念を広げる。
活動範囲を横浜から都内に移し、政界へと食い込んだ彼女の使い魔のケイタの思念を感じようと…。
「ケイタ…今私はワクワクしてるぞ…この国を破滅に追い込むお前の思念がヒシヒシと感じる…」
「おい!アザミ!!」
「ひゃー主様!!」
いきなり、創造主たる作者のぐり吉がアザミに声を掛けた。
「お前、真面目な顔して何にやってる?」
アザミは急いでぐり吉の前に跪き、頭を垂れた。
「ご機嫌麗しゅう、主様…」
「つか、その挨拶、小っ恥ずかしいから止めろって言ったよな?お前、俺の気持ちを逆なでして喧嘩売ってんの?お前、消えたいの?ん?ん?」
「イヤイヤ、んな事ありませんよ…一応、この挨拶は私なり主様に対する敬意の表れっすから」
「だから、んなのいいから普通にしろ!ってか、お前、シリアスに何やってんのよ?」
「いや、小説アザミのお仕事っすよ」
「バカかお前!今この世界は、小説アザミちゃん…仕事は小説アザミの方でやれ!」
「主様、紛らわしいっすよ」
「俺が出てきたらアザミちゃんの方に決まってるだろーが…つか、周りを良く見ろ!小説アザミの方は風景がリアルだろ?小説アザミちゃん、今この場所はアニメの風景みたいだろ?」
「あぁーそう言えばそうっすね。気づきませんてました」
「ってそう言う事で、ケイタを呼んだ」
「へ?何に故に?」
「いや、小説アザミでケイタ出したのは良いけど、イマイチ、ケイタのキャラがはっきりしないんだよな…だから、お前とケイタで打ち合わせしてケイタのキャラ作りと今後の展開を決めとけ!」
「イヤイヤ、それは主様の仕事じゃないすか」
「俺は忙しいんだよ!現実世界で仕事して、リアルなミカを食わせなきゃならないんだから…それにミカは今体調があまり良くないんだ…」
「って、そりゃチャンスじゃないっすか?ミカ様、弱ってるなら、主様、やりたい放題…」
「バカヤロー!!リアルな方の俺はまぢミカ一筋なんだ。んな事言うと、お前ミカに嫌われるぞ!小説の方のミカは元気で凶暴のままなんだからな!グーパンされたら、お前、首もぎれて飛ばされるぞ。お前、死なないんだから、何度も何度も死ぬくらいの痛みをくり返すぞ!」
「ひゃーご勘弁を…って言うか、ケイタと打ち合わせしても、展開は決まらないっすよ」
「大丈夫!最後にはお前とケイタの立場が逆転して、お前がケイタの奴隷になるって感じて展開を考えろ」
「そんなの嫌っすよ、あたしゃ無敵の魔王のままで居たいすよ」
「もう、小説アザミ、早く終わらせたいんだよ、人気も無いしね」
「イヤイヤ、これから伸びますって…まだまだ続けましょうよ」
「この小説アザミちゃんも小説ミカちゃんになってるしな。なら、アザミは消して、ミカちゃんの方が良くない?」
「イヤイヤ、そこはアザミちゃんの方が良いだしょ?」
「思い切って、小説ケイタ君でも良いかな?」
「いやアザミちゃん」
「いやミカちゃん」
「アザミちゃん」
「ケイタ君」
「アザミ…」
「ミカ…」
「カニ…」
「にく…」
「くも…」
「モアイ」
「イカスミ」
「ミカ…やっぱミカだな…ププッ」
「ズルいですよー」
「まぁ、お前からかってもしょうがない。今からミカんとこ行くから、またな!」
ぐり吉は風の様に去って行く。
ひとり残されたアザミは、八つ当たりをすべく、ケイタを待っていた。
「アザミお姉さん、おまたせー」
彼女は黙ってケイタの額にデコピンを連打した。
ケイタの額には、赤くアザミの「ア」の字が浮かんでいた…。
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