第18話 夢の国DS

人間どもが行き交う横浜の交差点…。 


って今日もヒマだなぁー。


主様、来ないかな?



来る訳が無い。


今日は、創造主たる作者のsamは、スナックみかのミカとTDSに行っているからだ。


「samちゃん、今日は朝、朝8時に迎えに来て。塩パン買うんだからね!」

 

「整理券?」


「そうよ!9時の開園前にならぶわよ。手荷物検査終わったら走るわよ!!」


TDS…開園を待つ人々は、まださほどならんではいない。


開園と同時にお目当てのパン屋へふたりは走る。


ベーカリーの前には、10人程ならんでいる。


先に店員が注文を取りに来る。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

「塩パンを下さい」


「大変申し訳ありませんが、すでに完売となってます」


「え?開園同時に来たのに?」


「ホテル宿泊のお客様は開園15分前に入園しますから…そちらからのお客様が全て購入してしまいまして…」


「じゃあ、宿泊者以外は買えないってことじゃない!」


「申し訳ありません…」


ミカとsamはベーカリーから去った。


「塩パン買う為に早くから来たのに…宿泊者しか買えないっておかしいでしょ!!」


ミカは怒りを隠さない。


「夢の国なのに、一般来園者にも買える様にしないのは変でしょ?一般来園客に売りたく無いなら新メニュー、塩パン宣伝するなよ!!」


怒りに任せて、ミカはどんどんと先を歩く。


「ミカ、とりあえず一服して気を静めよう」


喫煙室でもまだ文句を言う。

 

「ムキー!ムカつく!塩パン!!」


「パンか…ミカ、俺のお腹触ってみな。硬いだろ?ミカのパンチなんかホントはへっちゃらなんだぜ」


samはわざと自分を殴らせる事でミカの怒りを鎮めようとする。


「ほら、ここ、グーパンしてみ」


samは痛いのを我慢し、ミカのみぞおちグーパンチを受けた。


「ありがと、気が治まった」


「しょうがないよ、気分を変えてシーを楽しもうぜ」


「うん!塩パンの恨み晴らすわよ!さぁ、今日も走るわよ!食べるわよ!お土産いっぱい買うわよ!ってsamちゃんに買ってもらうんだけどね…さぁ、早くプレミア取って!!」


ミカはいつものDLフリークに戻っているかのように思ったのだが…。



アトラクションへ向かう途中、キャストに声を掛け、ガーランドを貰う。


一言書いてくれて、ミカは喜ぶ。


「今日のノルマは二人で12枚だからね!」


「え?俺もガーランド貰うの?」


「当り前じゃない!ちゃんと綺麗に飾ったら、写真送るから…samも貰って!!」


目当てのアトラクションまで、キャストに出会うと声を掛けてガーランドを貰う。


「お父さんのお名前は?」


samと答える。


「あはは、samちゃん、パパと間違えられたね。私達、親子に見えたのかな?」


「ちっ!」


アトラクションに着く。


シーには何年も来てないsamにアトラクションの説明をミカはする。


バッグを脚で挟んで固定し、安全バーをセットする。


世界中を飛行する。


「うわーー!!」


ミカは奇声をあげ、楽しんでいる。


次々とアトラクションを楽しむ。


勿論ならんで待つのが嫌なsamは、金にモノを言わせ常にプレミアアクセスだ。


今日のメインアトラクション!!


垂直に降下するタワー*○ブ*テラーだ!


ミカはワクワクしている。


samは顔が引きつる…。


「ねぇ、俺乗らなきゃダメ?落ちるの嫌なんだけどな」


「当り前でしょ!!乗んなさい!楽しいから!!」


「こう言うのタマがキュンって上がるんだよなー」


「タマキュンしたら撫ぜてあげるわよ」


「じゃ、乗る」


二人して悲鳴をあげた。


「面白かったね」


「そうでしょ?じゃ何か食べましょ」

 

先を行くミカが後ろを歩くsamを振り返るとsamはスマホを見ていた。


「何やってんのよ!二人で来てるのにスマホなんか見ないで!!」


ミカの機嫌が戻り切っていないのに…ミカの地雷を踏んだ…。


「いや、小説サイトの新作に応援きたから…ゴメン」


「samちゃん、そういうとこなんだよ!この前のランドだって、何かにつけてすぐスマホ見てたでしょ?私はあの時は我慢して言わなかったけど、凄い怒ってたんだからね!」


塩パンの恨みか、機嫌がまだ完全に戻っていないミカの怒りはマシンガンの様に吠える。


「二人で楽しむのに、一人の世界に入るな!私はスマホ見る時はsamちゃんに断って了解得てから見るでしょ?ママに連絡する時だってsamに電話しても良い?って必ず訊くよね?」


「ムカつく!こんなんじゃ楽しく無い!もう帰りたい!」


「ゴメンって、もう見ないよ」


「謝っても遅いよ!」


「判った…ゴメン」


ミカはイキナリsamの肩を殴った。


「ムカつくから殴らせろ!」


「痛い!もう殴ってるじゃん」


「sam、前に立て!ケリだ!」

 

ミカはsamに回し蹴りをかます。


「気が済んだ?ゴメンよ」


「まだ気が済むか!グーパンチする」


ミカは鼻の穴をぷっくり広げ、悪魔も恐れる憤怒の形相で、samへのいつものみぞおちにグーパンチ。


「痛かった?」


痛く無いと言えば、大魔王ミカの怒りは終わらない…。


「当り前だろ。すげぇ痛い…」


「なら許す!!その代わりもう1回、○ワー*オブ*テラー乗るわよ!」


機嫌を直したかに見えたが、塩パンの件もある。


今日のミカは危険をはらんでいる。



これは買い物をいっぱいさせなきゃダメだな…。


samはミカと入ったレストランでそう思った…。


ショップを巡る…。


ミカの目に写るものをどんどん買わせる。


ミカは支払いをsamに任せていることに心配になってきた。


「買い過ぎ?」


「いや、大丈夫ってことにする」


samがそう言い微笑むと、ミカは安心して大きなバッグにお土産を詰め込み、ミカは今日初めて満足そうに笑った。


「samちゃん、パンツ買ってあげる」


本当に機嫌の良くなったミカは、samにパンツを買ってくれた。


「ミカんとこ、行った時の着替え用にパンツ置いといて」


「うん、判った、洗ってしまっとくよ」


歩き疲れたミカとsamは車に戻り、打ち上げ花火の音を聞きながら、ふたりは満足そうにキスをした…。


「楽しかったね…sam、ありがとね」


終わり良ければ全て良し…。


samは心の中で、その言葉を噛み締めたのだった…。




「主様ー!」


「おぅ、アザミ」


「なんか機嫌良いっすね?」


「そっか?後は戻って寝るだけだしな…お前もお疲れ様。今日はもうあがれ」


「あざーっす!って言うか機嫌の良い主様、久々なんすから、お話でもしましょうよ?」


「やだね」


「やだねって即答すか?何で嫌っすか?」


「今、俺は凄く良い気分なの…だからこのまま一日を終わらせたいんだよ」


「あたしとおしゃべりしたら、もっと気分が良くなるかもしれないじゃないですか」


「無い無い…それは無いな…そうだ!お前に良い言葉を教えよう」


「はい、なんすか?」


「終わり良ければ全て良し…だ!俺はこの言葉を座右の銘にしようと思っている」


「え?主様の座右の銘って、全ての女性は俺の恋人…とか、フリーセックスだったじゃないすか?あたしは知ってますよ?」


「馬鹿だなあ…そんなの座右の銘にしたら、ミカに殴られちゃうだろ!だから、ミカに訊かれたら、俺の座右の銘は、終わりよければ全てよし…って必ず言えよ」


「あたしは正直だからなぁ…つい、主様の座右の銘はフリーセックスって言っちゃうかもなー。主様は色んな女とやりたがるって…」


「お前、んな事、ミカに言ったら永遠に消し去るからな!アブラムシに変えて、犬が猫に食わせて、う○こにまみれたままでトイレに流すからな!どっちがいい?」


「ひぇー言いませんよ」


「ミカと仲直りできて、幸せな気分だったのに、やっぱアザミは無視すりゃ良かった…お前は悪魔みたいなやつだな!!」



「いやあたしゃ最初から悪魔っすから…」

 

アザミは心でそう思ったのだった…。


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