第17話 パラサイトミカ
人間どもが行き来する横浜の交差点の近くの喫煙スペースの脇のベンチで、アザミは鼻をほじくり暇を持て余していた。
ほじくり出した鼻くそをポンと弾くと、鼻くそはアザミの分身となり、アザミの隣に腰掛けて、ふたりで会話を始めた…。
「あぁー退屈…最近はケイタが代わりに人間どもをたぶらかしてくれるから、あたしゃ暇でしょうがないよ」
「え?あたしも働けって?んな気になれないね…だってこの前のミスコンで失敗したからね…主様ズルいよねー。ミカ様出しちゃうんだもん…」
「あの後、人間どもにやつあたりしようと思ったけど、地獄の実家で磯部巻き食ったら、どうでも良くなっちゃたからなー。」
鼻くそからのアザミの分身もまた、鼻くそをほじっている。
その鼻くそから、また分身をつくり、アザミの分身を増やし続けてやろうかなどとも考えたが、無数の自分が現れたら、皆、好き勝手をして、煩わしいから、分身を消してまた、ひとりに戻った。
アクビを噛み締めて涙を指先で拭うと、創造主たる作者のsamとスナックみかのミカ様が歩いて来る。
ミカ様はご立腹の様だ…。
不機嫌そうに肩を抱く主様の手を払っている。
「ププッ…こりゃ一波乱有りそうだね…追跡しなきゃね…ププッ」
アザミは意識を宙に散りばめ、主様に気づかれ無いよう後を追った…。
「samちゃーん…なんでこんなとこで生活費渡そうとしてるのよ…恥ずかしいじゃないの!」
「え?今渡さなきゃ忘れちゃうかと思って…ゴメン」
「それにさ…なんか今日のsamちゃん、女々しいのよね?仕事、うまくいってないのは判るけど、私は男らしいsamちゃんが好きなんだよ…もっとシッカリしなさいよ!」
「え?俺、女々しい?いつもと変わんないよ…ゴメン」
「なんで謝る?そう言うとこなんだよ?」
リアルな本業がうまくいってないのは、自分がヤル気を起こさないからなのはsam自身も判っていた。
「ミカ、今日、エッチするぞ」
「ふーん…判った…」
ミカはエッチは嫌いだ…。
基本、ミカが嫌がる時はしないと言う約束だった。
ふたりは無言でラブボへ入り、ミカは不機嫌そうにsamに告げた。
「早く脱ぎなよ、サッサと終わらせるから…」
「嫌なら断れよ」
「ここはあなたの世界よ!あなたは主なんだから、私が断われるはず無いじゃない!嫌だってあなたに従わなきゃならない!リアルな私もそう!あなたの欲求は拒めなくなった!」
嫌がるミカに何かを吐き出そうと、samは強引にもエッチをした。
ミカの中でsamは果て、ひとりでシャワーへ行く…。
戻ると不機嫌極まりないミカがタバコをふかしていた。
「ひとりでイッてサッサとシャワー行っちゃってさ…samなんか大っ嫌い!!」
無言のsamは横へ座りタバコに火を着ける…。
「あなたね…私に嫌われたいの?私から消えたいの?」
「いや、そんなことはない…少し頭を冷やしてきただけだよ」
「いいや!私から消えたくなってる!そう感じる!」
「そんなことは絶対に無い!」
samはミカにキスをしようとした。
ミカは横を向き、キスを拒んだ…。
「拒めるじゃねぇか…判ったよ…悪かったよ」
「自分のモヤモヤを私で解消しようとするな!今日はしないって言ったのに、するなら、最初からそう言え!」
「判った…でも、俺はミカが拒めないように設定してないぜ。ただ、今日はやりたかったんだよ…なんかミカが俺から離れて行くようで…」
「だからそんなことは無いし、あたしを怒らせるな!だいたい、消えるかもって思わせたのはあなたの方じゃない!私が去る訳無い!!」
「馬鹿だな…俺はミカしか愛さない…愛せないんだから…許せよ」
「馬鹿はあなたでしょ…今日のsamは大っ嫌い!!」
samはミカにキスをした。
ミカの口へ舌を入れた。
ミカはsamの舌を噛んだ。
「イタタタ…噛むんじねぇよ」
やっとミカは笑顔になった。
「愛してるよ」
「うん…」
ちっ!
結局仲直りかよ…。
やりゃ仲直りすんのかよ!
あぁーつまんないな…。
アザミは交差点へ戻って行った。
「samちゃん、私はsamから離れないよ。寄生虫よ。samからsamをずっと吸い続けてあげる。パラサイトミカだからね…」
「俺はミカの悲しむ顔は見たくないし、させないから、俺にまかせろ!!いくらでも吸わせちゃる!じゃ、もう1回やる?」
「調子コクんじゃねぇよ!やらないから!!」
「やっぱ拒めない設定にしようかな?」
ミカは黙ってsamのみぞおちにグーパンチを放った…。
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