第6話 アヤと翔子


人間どもが行き交う横浜の交差点の信号機。


その信号機に今日も退屈そうに彼女は座っていた。


あぁ…今日も退屈…。


人々に取り憑きあざむき殺し合いをさせる…なんて、実際どこが面白いのよ!


んな事より、主様に可愛がって欲しいわよ!


ても、主様はミカさんにべた惚れだしなー。


せめて、イケメンくんとたまには恋愛でもしたいわよ。


主様、書いてくれないかな?


ん?


こりゃ珍しい!


私が嫌いなふたり…。


「グラスの中」のアヤちゃんと、「惚れボクロ」の翔子ちゃんが、カフェでお茶してるじゃない…。


ププッ…こりゃ、盗み聞きをして欲しいって私に言っている様なもんじゃん。


さてさて…。



「ねぇ、翔子ちゃん、最近どうなの?」


「どうって、変わらないわよ…」


「私なんて、とっくに連載終わってさ、もう誰も読んでくれないのよ」


「あんたなんかまだ良いわよ。私の惚れボクロは最初から読まれないわ。それに、主様ももう、全然構ってくれないし…」


「それでも、翔子ちゃんは主様に何回も抱かれたじゃない!私なんかいつも添い寝だけよ!最後に一回だけ、結ばれたって書いてあるけど、あれ、違うからね!やってないし…最初の添い寝でホントは一回だけはしたけど…一回だけよ」


「でも、グラスの中は今でも読まれてんでしょ?うらやましいわ」


「主様の行きつけのお店の娘しか読まないわよ。そんで私と自分を比べてなんか私に反感かってるし…」


「アヤちゃんは可愛いからね。しょうがないよ」


「翔子ちゃんだって、妖艶って言われてるじゃん」


『はぁ~主様、たまには抱いてくれないかな?』


ププッ…二人同時に抱いてくれといいやがんの…ププッ



それにしても、主様、皆に慕われてるな…。


まぁ、創造主だもんね。


主様がそういう設定にしてるからね。


じゃなきゃ、あんなブサイク、誰も惚れないよ…あたしゃ違うけどね。


あたしゃ、主様一途さ!!


おっ!噂をすれば、主様登場だね!


「おぉ!アヤに翔子じゃん。久しぶりだな」


「主様〜!!」


「ん?どした?」


「寂しいですぅ」


翔子が媚びた。


「主様〜たまには朝まで一緒したいですよー」


アヤが甘える。


「んー。そっか、最近忙しくてな。悪りぃ悪りぃ…今夜はミカに会うからダメだけど…そうだ!今からメシでも行くか?」


「やった〜!!」


「何でもお前らの好きな物で良いぞ」


「しゃぶしゃぶ食べたいー」


「おぅ!じゃ、浪漫茶屋でも久々に行くか?」



えー!しゃぶしゃぶですとー??



「主様〜!!私も連れてって下さいー!!」


「なんだ、アザミか…お前はこの前、牛丼食わせたろ」


「牛丼としゃぶしゃぶは違いますよー」 


「でも、肉は肉だ!一食は、一食だ!だからお前は留守番な!!」


「ひぇーん、しゃぶしゃぶ食べたいですぅー」


「お前は可愛げないからダメだ」


「お願いいたします。食べ終わったら、主様をしゃぶしゃぶしますからー」


「下品…やっぱお前は留守番な!」


「ちっ!」


「ん?今。ちって言ったよな?ん?」


「言いませんよ、主様、私に厳し過ぎますよ。一緒に連れてって下さい」


「しょうがないな…じゃ、一緒に来い!ただし、アザミは白菜とネギだけな。あっ!しゃぶしゃぶの汁も飲んでもいいぞ」



「何だかんだっても、主様はアザミちゃんを好きなのよ」


「そうそう、良くアザミちゃんのとこに来るでしよ?辛く当たるのは好きな証拠…ほら、好きな子に意地悪する男の子と一緒よ」


アヤと翔子に慰められて、アザミはこの二人を好きになった…。


「主様…アヤちゃんと私で食事の後、3Pしましょうよ?」


翔子が言った。


「私、主様を気持ち良くさせちゃう」


アヤが言った。


「たまにはいいか…」  


創造主たる作者はニヤけた。


「えー?それなら、私も入れて4Pにしましょうよ?」


『下品…』


アヤと翔子が同時に言った…。


アザミはやはり、アヤと翔子は嫌いだと思った…。

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