第3話 休日

横浜の人間どもが行き交う交差点に、今日はアザミはいなかった。

 

今日は、創造主のぐり吉たま吉が、休日と皆に告げたからだ。


アザミは公園のベンチに腰掛け、創造主の仮の姿の宮島が持ってきたポテチをパリパリ食べていた。


宮島は航太と広場で遊んでいる。


「アザミちゃん、カラオケ行かない?」


アザミは突然声を描けられる。


「何だよ、keepの冬花じゃんか」


「ねぇカラオケ行こうよ。若菜も来るからさー」


「あれ?お前、若菜を怨んで殺すんじゃなかったの?」


「あれは、小説の中の話だよー。若菜は今じゃ親友だよー」


冬花がアザミに近寄った。


「つか、冬花、お前、顔がこえーんだから、近づくなよ」


「ひどーい!じゃ、ちょっと待ってて」


冬花はうーんといきむと、ポンと元の女子高生の姿に変わった…。


「おぉ!なんだお前、可愛いじゃないの…」


「えへへ、この前、主様に元に戻れる様にしてもらったんだー」


「ちっ!主様はお前らにも優しいな…」


「うん、主様優しいよ。元に戻ると頭をポンポンってしてくれるしねー」


「ポンポンだと?私なんかして貰ったこと無いぞ!」


「えへへ、いいでしょ?変身するときにでちゃうオナラが可愛いんだって…」


「へ?オナラ?」


「うん、元に戻るとき、うーんっていきんでパスってオナラしないと戻れない設定なんだって…」


「主様、自分の趣味に走ったな…まぁいい、今日はやることが出来たから、カラオケは行かん!」


「なんだつまんないの…早く用事が終わったらカラオケに来てねー今日はフリータイムだから…」


冬花はカラオケに行った。


「さてと…始めるか…主様に頭、ポンポンされる作戦だ…」


アザミは小走りに創造主であるぐり吉の元に行く。


「主様ー!主様ー!」


「なんだアザミか…もうポテチはやらんぞ!」


相変わらず私には厳しいな…。


アザミはそう思ったが、満面の笑顔を浮かべ、主に近づく。


ぐり吉の前で跪き、頭を垂れる。


「主様、お願いがあります」


「嫌だ!」


「まだ何も言ってませんよ?」


「お前、ミカとの事をバラしたろ?だから、やだ!」


「いえ、あれは、大事な事だから忘れないようにメモっただけで、誰かに見られましたか?」


「とぼけるな!願いがカメムシになりたいってんなら、すぐに変えてやるぞ…カメムシはクッサイぞ!」


「ひゃーご勘弁を…」

 

「つか、ミカとの事は忘れろって言ったよな?」


「もう忘れましたから…」


「まぁいい。ミカの機嫌がなおったからな…許してやる」



やっぱ、ミカさんだけは敵に回しちゃいけないね…。



「で、願いって何だ?」


「私にも頭をポンポンして欲しいな…って…優しく…」


「はぁ~?何で?」


「主様をお慕いしているからです」


「ふーん、判った、頭出せ」


アザミは頭を差し出し、ぐり吉を見ると、ぐり吉の手の平は、パーでもチョキでも無くグーだった。


「ひゃー主様、頭をポンポンですよ?グーでゴンゴンじゃないですよ?」


「変わらんだろ?グーでもパーでも…グーでやったら、頭がパーになるかもな…ププッ」



「いえいえ…優しくポンポンで、その後ギュッってして欲しいです」


「首を締められたいか?判った」


「違いますよ!」


「あはは…」


ぐり吉はアザミの頭をポンポンとし、優しく撫ぜるとハグをし、アザミの頬に、ちゅっとキスをした…。


「お前は普段頑張っているからな。今日は休日だし、特別さ…」

   

ぐり吉は宮島に戻り、また航太の元に歩きだした。


「主様、大好き!今日は最高の休日でした…」


アザミは冬花に威張る為にカラオケへ向かった…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る