第2話  仕返し

人間どもが行き交う交差点の上の信号機、彼女は今日も座っていた。 


人々の歪んだ心の叫びを聞き取る為に、邪悪な笑みを携え腰を掛けていた。


「samちゃん!何でそんな事言うかな?」

 

「ミカ、怒った?」


「怒ったに決まってるでしょ!!」



信号機の上の彼女はニヤリと笑い、男女の会話に耳をそばたてる。


「だってさ、ミカに惚れてる男達に、ミカ、優しくし過ぎだから…」


「だからあんな事言う?バカじゃないの!!」


「俺には…」

 

「頭悪いわね!あの人達とsamは同じはずないでしょ!あの人達はお客さん、samはどう?少し考えたら判るでしょ?」


「怒るなよ…判ったから…」


「私はバカな男は嫌い!」


「判ったってば…」


「ホント、バカだな!」


「判った、謝るからさ…もう、言わないから…」


「なんで私の気分を悪くする?バカなんだから…バカな男は大嫌い!!」


「嫌いになった?」


「またそう言う事いう!!嫌いなら何も言わないよ!!」 


「判ったよ、悪かったよ…」


「もう、殴らせろ!!」


ミカはsamに往復ビンタをした…。

samが痛くないように…。


「ひぇーん…許す?」


「しょうがないから、許す!でも、まだ怒ってる。私は小説の中へ戻るから、反省してろ!!」



ミカが小説へ戻ると作者であるsamは項垂れた…。



あはは…主様、ミカちゃんに弱いんだー!


あははははは…。


つか、ミカちゃん、こえ〜。


主様にあんな事言えるの、ミカちゃんだけだね…。


ミカちゃん…いや、ミカさんと呼ばせて貰おう。


主様の唯一の弱点のミカさんとは、是非とも仲良くさせて頂きたいな…。


あの主様にビンタだよ?


他の娘達がやったら、抹殺されちゃうよ。


keepの冬花あたりをそそのかして、ビンタ張らしてみたいもんだわ…。


まぁ、そそのかすのは、アザミちゃんの得意分野だしね。


やっちゃうかな?



「おい!アザミ!ちょっと来い!何をやっちゃうんだ?」


ひゃー、主様に見つかった…。



アザミは作者であるsamにひざまずく。

 

「いいから、頭を上げろ!で、何をやるんだ?」


「いえ、別に…」


「お前、俺に隠し事か?死にたいのか?ん?ん?」


相変わらず、主様は私に厳しいな…。



「いえ、ミカさんって恐いなって…」


「あぁ!お前、聞いてたな?忘れろ!」


「そんな…楽しすぎて忘れられませんよー」


「耳を出せ!忘れられるように、引き千切ってやるから!つか、お前、完全に俺をナメてるな?」


「ひゃー、ナメてないっすよー」


「その態度が気に食わん!あやまれ!」


「ひぇー、すみませんすみません」


「もっと心を込めて!」 


「お許し下さい、主様、ぐり様、samちゃん様」


「折角、お前、可愛い見た目にしてやったのに、次ナメくさったら、ブサイクババァかカメムシに変える。どっちがいい?」


「ご勘弁ください、主様…」


「俺がミカに弱いこと、誰かに言ったら、お前、完全にカメムシな!クッサイ、カメムシな!!」


「言いません。神に誓って言いません」


「悪魔のくせに、神に誓うな!まぁいい」


今日もアザミに八つ当たりをした、創造主の作者samは、スナックミカでミカにもっと好かれるネタを考えながら、コーヒーショップへ向かった…。


去って行く、主の背中を見送り…アザミは舌打ちをした。



ちっ!

誰かに言わなきゃいいのか?

じゃぁ、メモに書いて、どこかに落としておくかな?



人々が行き交う交差点は、清掃員が怒っていた。


何やら、文字が書かれている紙切れが散乱していたからだ…。


「こんなに散らかしやがって…何が書いてあるんだ?」

 


創造主はミカさんの、恋の奴隷になりました。


主様の弱点発見!それはなんとミカさんでした。


「私は誰にも言ってない…ププッ!」


アザミは主様が茶化されて、恥ずかしがって困る姿を想像した。


アザミはあちこちにバラ撒いたこの紙切れが、1枚でも主様が作るキャラクターの目にとまれと、神に祈って今日も誰かに取り憑いた…。


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