第12話
岳の言葉が切れたタイミングで、菅谷から伊藤瞳へ
「それで、伊藤さんも速攻で岳に乗り換えたんだ?」
と、質問していた。
それにたいして、伊藤さんが頷く。
「なら、伊藤さんからも萌に伝えたいことある?」
「私も最低なことをしたのはわかってるつもりよ。
でも、ハジメ君とのカレカノの関係って、ハジメ君の話を聞いていて、あなたには誰かが寄り添ってあげなきゃいけないって思いだけだったの、母性?義務感ていうのかな?
…だから、恋愛感情はなかったのかもしれない。」
「…。」
菅谷がありえない…と、つぶやいている。
「…仕方ないじゃない。
本当に好きな人が、それも初恋の相手が、久しぶりに話しかけてくれて、昔から好きだったって告白までされたら……。
それでもね、夏休みが明けたらハジメ君と会って、ちゃんと説明して、別れてもらおうと思っていたの。
それが、あんなことになって……。
私は、
「なるほどね、嫉妬とか八つ当たりとか、まさかあんな陰口(噂)を流されるとは本当にびっくりしたよ。いや、八つ当たりについては案外外れでもないかな?」
…人は簡単に人を裏切る、独りの方が気が楽だ。こんな奴を一時でも信用しようとした俺が悪いと心の中でつぶやく。
「伊藤さんの自己中さには驚きを隠せないね。
あの後のハジメの様子は知ってるでしょ?
噂のせいで大炎上って感じでさ。
孤立していって悲惨だったよ。
うわさが乱立するもんだから、しばらく俺とも話してくれなくてさ。生徒会にも顔を出さなくなるし…。
伊藤さんならハジメの過去の話も聴いて、知ってるんじゃないの?そういうのに敏感になってること。
それでよく自分の立場を正当化できたもんだね。」
菅谷のやつも苦笑いしながら言葉を吐いた。
それから少しの間、無言の時間が続いた。
ちなみに伊藤さんは自分が責められることを想定していなかったのか、俯いている。
表情は分からないが肩が震えていることからショックを受感じているのか?。
自分のインモラルな行為に気が付いたかな?
モラリストのつもりだったみたいだしね。
無言の状態が続いたためか、
「これ以上話すこともないだろう、謝る気もない人もいるみたいだし。当時の状況もはっきりした。なら、これで解散でいいかな?」
と、菅谷が話を締めようとする。
俺は頷き、岳は「本当にゴメン」と頭を下げている。
伊藤さんのみ無反応であった。なにを考えているのかわからない。
では解散とソファから立ち上がった瞬間。
顧問の石井先生がはいってきた。
そして、開口一番に。
「恋愛相談は終わったのか?www」
と気楽な様子で問いかけてきたのだ。
………。
ていうか、ここを借りた理由、恋愛相談ということになってたのか。
「なんだ?仁からはそう聞いているぞww」
ニヤニヤしながらこっちをのぞき込んで見てくる先生。
先ほどの重苦しい空気が霧散し、カオスな空気へとバージョンアップ。
なんて冗談言ってる場合ではないな。
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