第11話
大きなため息を吐いた後、
厳かな雰囲気のある生徒会室のソファセットに対面で腰を掛ける。
そして渡辺岳に話をはじめるよう目で促す。
こいつとは、できるだけ口を利きたくないという気持ちが態度に出てしまう。
重い空気の中、渡辺岳が口を開こうとした時、生徒会室のドアが開いた。
ノックもなかったことから生徒会関係者とも考えたが、入り口には会議中の立て看板もだしてあった。
この場合、生徒会室の入室が許可されるのは会議関係者または生徒会・風紀委員の役員である。それ以外は教師くらいだろうか。
それでも入室前にノックをするのがモラルというものであろう。
それを破ってまで入ってくるくらいの理由が何なのかは知らないが入ってきたの人物は…、今一番会いたくない人の筆頭である伊藤瞳…。
見た目はものすごく常識的だし真面目そうなキャラのくせにインモラルなことを平気でする。自己防衛のためなら、変な噂を流したりすることいとわない狡猾さもある。
それは過去の経験から既に知っている。
また、独善的に人にかかわってくることがあるので、面倒くさいことになると半ば確信して俺は三度ため息を吐く。
ん?
そもそも何でここで話をすることを知っているんだ?
岳には連れてこないよう条件付けしたはずだ。
だれかあの場で聞いていたやつらが教えたのか?
そして、何故か隣の菅谷は、平然としているのだが?
俺がひとりで混乱していると、菅谷が話し出す。
「この際、当事者二人から話を聞く方がいいと思ってな。俺が教えたんだ。」
「それならそうと俺にも教えておいてくれよ。ていうか、教えるなきゃダメじゃない?」
「教えたら、お前のことだから何かしら理由をつけて来なかっただろ?それに二人が一緒の方が色々と心配も減ると思うしな?」
そう言いながら菅谷は、二人のことを軽く睨んでいた。
さて、伊藤氏が加わり、さらに混乱している俺であるが…。それをわかっているのかは知らないが再び岳が口を開く。
「えー・・・と。俺としても想定外のことなんだけど、なんで瞳を呼んだの?これ以上の混乱を避けるために教えなかったんだけど。俺はこのまま話を続けてもいいのか?」
「もちろん。わざわざ、この部屋を用意した上に関係者に根回しまでしているんだ。何も話さないで帰るなんて、俺は許さないよ。」
と菅谷がいい、俺は何も語らず岳の目をみて早くしろと再び促す。
「関係者か、どこまで話が及んでいるのか少し怖い気がするな・・・。
俺が何の話をしに来たのか、わかっているんだろうけどさ、一応けじめとして、あの時の事情を聴いてもらいに来たんだ。こう言っては何だが、あの時の俺は、口を開くたびに殴られてたからな。碌に謝罪することも出来なかったしな。それに、あの後は近づくこともためらうくらい怖い雰囲気を纏っていたからさ…、お前ら…。」
「何を言うかと思えば…。俺は、お前に対して未だに嫌悪感を持っているよ。それから、お前を殴ったことについて罪悪感は一切ないし、謝罪をしようとは全く思っていないよ。俺に謝罪させようって腹ならお門違いだ。
そもそも先に手を挙げてきたのだって、
俺がそういうと、菅谷が若干キレ気味に話を促した。
「それで、御託は良いから?話を進めろよ。」
ビクッとしたがくは、俺たちに頭を下げた。
「あ、あぁゴメン。そんなつもりじゃないんだ。まずは、謝罪からだな。
許してもらえそうにないが、俺がまともじゃないことをしたのは事実だ。すまなかった。あと、悪いが少しだけ言い訳を聞いてほしい。」
「………。」
「実は、俺と瞳とは幼稚園から小学校までは同じところに通っていて、その頃から仲がいい友達だったんだ。所謂、幼馴染みというやつだ。
でも、中学に上がるタイミングで親の仕事の都合で急に引っ越ししてしまったんだよ。
手紙も出していたんだけど、そのうちに瞳のところも引っ越してしまって、当時はスマホなんて持ってなかったからそのまま音信不通になってしまったんだ。」
「………」
「それで、連絡もつかない状況になって、やっと瞳のことが好きだったんだって気がついてさ、初恋ってやつだったんだよな。
でも、瞳とは連絡も取れないし、もう会えないって半ばあきらめていたんだ。」
「・・・・・。」
「実は、入学式の日には、瞳の存在に気が付いていて、すごく美人になっていて驚いて。声を掛けようともしたんだけど、忘れられていたどうしようと考えてしまうと怖くて、声を掛けにも行けなかったんだよ。
部活もあったし、話しかける切っ掛けも見つからないうちに、モエ君と瞳の交際の噂を聞いて慌ててさ、瞳に声をかけたんだ。」
「・・・・・・。」
「最初のうちは友達に戻れたことがうれしかったんだけど、瞳の話の中にモエ君が出てきて、瞳と交際しているって改めって知って。
横恋慕になっているのはわかっていたよ。それでも瞳とは俺の方が先に知り合っていて、俺の方が先に好きなったのにって、日に日に気持ちが強くなってしまって、それで、夏休み直前に、久しぶりに2人で会った時、気持ちが抑えられなくて告白して、彼女に受け入れてもらったんだ。
あの時は俺の方が、モエ君に横取りされたくらいに思っていて、自分勝手な考えだけで行動していたから。
今はさ、自分のことをクソ野郎だと自覚している。本当にスマン。」
一応、謝罪の言葉を吐いたが、俺には上っ面の体面だけの言葉にしか聞こえなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます