第10話
この後、渡辺と話をしなきゃいけない事実を面倒に思い、回想しながらボーッとしている間に、授業が終わっていた。
今日はほんと授業に集中できなかったなぁ。
ノートすらとってない…あとで親友に教えてもらおう。
うん、あいつのせいでもあるし責任は感じてもらいたい。
んで、その親友が話しかけてきた。
「ハジメ、ぼけっとしてんなよ。授業終わったぞ。って、大丈夫か?顔色悪いな。寝不足で体調崩したのか?これからあいつと話に行くのに平気なのか?」
あん?いつの間にか正面に来ていた菅谷の股間が目に映る。
足が長いなコイツ、色々と不愉快だ。
「いや、菅谷よ、放課後のこと勝手に決めといて何を言ってくれている??
俺の顔色が悪いだと…?人相が悪いじゃなくか?
うーん。まぁ心配すんなよ。話し出せばアドレナリンが出てきて元気になるさ。」
「それならいいけどよ。
あの時も岳が弁解しようとしても話しを聞かなかっただろ?
あいつがなんか言おうとしてお前の両肩をつかんだところにボディブロー決めてたもんな。その後もハイキックとか。
ヤンキー漫画みたいですごかったけどな。無表情のままだったから怖かったけどよ。
あの女はビビッて泣きまくって何を言ってんのかよくわからなかったし。
あの時に見ちまったものも、おこったことも、事実は変わらんだろうが、時間が経ってお互い頭も冷えた頃だろ?
アイツの話も一応聞いてやろうぜ。馬鹿げた理由だったら、今度は俺がぶん殴ってやるよ。ていうか、アドレナリンで体調管理すんのはやめとけ。体に悪そうだ。」
「おっ。ホントに心配してくれてんだ。でもな、短い期間の交際とはいえな浮気された事実は変わらんし、岳を許せない気持ちも多分変わらんぞ。とはいってもな不思議と嫉妬心はないぞ。あるのは単純に裏切られたことに対する怒りだけだから。」
「だろうな。お前ならそういうだろうよ。淡白な付き合いしかしなそうだもんな。」
「失礼な!あれ以来、俺は一部の生徒からは痛いヤンキーを見るような痛い目で見られてるし。変な陰口までたたかれて。
ていうか、お前!あの時見てたのかよ!?
なら、なんで今まで教えてくれなかったのさ?(ていうか、止めろよ)」
「悪いな、ある人に頼まれてみなかったことにしてた。」
「なんだそりゃ?」
「本当は変な噂が流れる前に対処したかったからなんだけどな…。ほら、伊藤瞳さんのことを横恋慕した萌が、一方的な嫉妬心?八つ当たり?で、あいつをボコったって噂が浸透してるだろ?ほかにもいろいろとあるみたいだけれども。」
「だな。ま、一方的にボコったのは事実だ。」
「そうだな。先生や生徒会もお前のことは知っているからなんかできることはないかと考えていたんだよ。
「それも知らなかった。だからか、あの後、9月の生徒総会で会長が、俺たちを生徒会庶務に指名してきたのは驚いたよな。」
「ほんとだよ。しかも、なぜに信任が通ったのか、いまだに謎だ。」
「それな、俺もだよ。ま、俺の場合は萌の件に巻き込まれたんだけどね。結構な人達がお前のことを心配してくれているわけだ。」
「だとしてもだ。目立ちたくない俺にとって生徒会役員なんてとっても迷惑な話なんだよ。ロクなことがない。お前には悪いことをしたかもしれないが…。」
「俺は気にしてないよ。それに、お前の親友ポジは悪くないと思っているからな。」
「それならいいけどよ…。」
そう言いながら大きくため息を吐き、菅谷に背中を押され教室を出て、生徒会室に向かうのであった。
生徒会室に向かう途中、昼休みの俺たちをみていたであろう生徒が、こちらを見ながら何か言っている。はっきりは聞こえないが、いい話では無いだろうなぁ。
2年生になり、生徒会副会長となったおかげか、以前に比べればイメージも良くなってきたと思っていた…んだけどな。
ま、そんなもん今更気にしてもしょうがないか。
クラスの奴らからも話しかけられるのは、まぁ、菅谷のバーターとしてかもしれんが。
磯部は・・・関係ないな。アイツはただの賑やかしだ。クラス違うし。
授業が終わりすぐに来ていたのであろう、渡辺岳が生徒会室の前で待っていた。
待つのが好きなんだな、こいつ。
俺は何も言わずに渡辺岳をどかし生徒会室の鍵を開ける。
この生徒会室の鍵は、会長以下6人の生徒会役員がそれぞれの責任で預かっている。
だから本来ならこんなことに使っていいはずがないのだが…。
菅谷曰く、
「生徒から貴重な意見を聞くために生徒会室を使うのだから正当な使い方だ」
と胸張って言い切った。
その上、生徒会顧問石井先生の許可まで取ってきやがった。
口論くらいならごまかせるが、殴り合いの喧嘩になったらなんて言い訳すればいいんだろうか。(ん?そうさせないためなのか?普通はしないか。)
そして、俺は渡辺岳から話を聞くこと自体を面倒に感じながら再び大きなため息をはいた。
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