第5話

バイトと家事による疲れもあったが、なんとか睡魔との戦いに打ち勝ち、午前の授業が終えた。


つまり、昼休みである。


俺は、自分で詰めてきた弁当を持って菅谷と学食へ向かう。


菅谷はいつも学食で食べている。

その関係で俺も学食で弁当を食べることにしているのだ。


「さて、昼休みだ。飯にいこうぜ。」


学食につくなり菅谷は今日の定食とにらめっこしている。


A定食:生姜焼き定食 B定食:サバの味噌煮定食である。


実物が飾られており、どちらもうまそうで俺もたまには学食にしようか悩むところである。


コレが500円とは今のご時世非常にありがたい話である。


わが校の学食のホールは広くは各学年ごとに座れるブースが決まっている。

なので、席探しにはそんなに困らない。


「今日の飯はどっちにするかな?ちなみにハジメの弁当はなん?」


「昨夜の残りの焼き鳥と金平ごぼう、厚焼き玉子にばあちゃんの漬物な。」


「うまそうだな、今度俺にも作ってくれない?元カノには作ってたじゃん」


「何が悲しくて野郎の弁当作んなきゃならねぇんだよ。あいつは料理ができないから仕方なく作ってただけだ。それに、毎食つくってわけでもないから」


「そうだったな。とりあえず、席も確保したし俺は注文してくるわ。」


菅谷は、元バスケ部だけあり背が高い、俺よりも5センチも高い180センチあるから結構目立つ。


そんな奴(ランドマーク)が立ち上がれば、それなりに目立つ。


俺たちは、生徒会役員であることからそれなりに知られているし、今はだいぶ落ち着いたが、昨年やらかしたこともあり一時期は悪目立ちもしていた。


そこに来て俺の名前だ。


名前のことで昔からよくいじられていた。


俺の名前は漢字で「萌」と書く。でも、読みは「モエ」じゃない「ハジメ」である。

だが、しかし・・・・。


「お、モエ副会長、今日も学食で弁当ですか?」


「モエ君、たまにはみんなとごはん食べよ」


などと、同級生から声をかけられたりするので、


「はは、悪いまた今度な。」


俺は、苦笑いしながら都度適当に返事をする。


自分の名前は、嫌いじゃない。祖父母がつけてくれた大切な名前だ。フルネームは斎藤萌だ。


新選組の隊長と同じ”さいとうはじめ”である。


誰にも言わないが、めっちゃ気に入っている。


小学生の頃から、同じようにいじられていたためさすがに慣れたが、むかつくことに変わりはない。


とはいえ、俺も高校生だ。


多少揶揄われても我慢できるさ……と、思っていたが。


「おっす、モエちゃん。今日も弁当かい?」


無理だった。


「あ”?コラ?!だれがモエちゃんだ。俺の名前はハジメだって教えただろうがぁ!!」


俺のことをモエちゃん呼びした友人Aこと磯部の胸倉をつかみ持ち上げる。


とりあえず足が浮くまでリフトしてやる。


「わ、悪かったよ、少しからかっただけじゃんか。く、苦じぃ。マジでヤバイ、勘弁して。ギブ!ギブだから!」


本気で苦しがっている様子であったため、手を放してやると礒部は、尻もちをついていた。


「ハジメちゃんは冗談が通じないねぇ。そんなだとモテないよ。目つきが悪いくらいで顔は悪くないのにさぁ

・・・―ってあ、ヤベ・・・すまん。」


「謝らなくていいよ、かえって虚しくなる。それからチャン付けはやめろ。キモイ。」

礒部とジャレていると、菅谷が戻ってきた。


「おーい、何してんの?うるせーぞ?ていうか、生徒会副会長が胸倉をつかむな。あと、言葉遣いな、完全に昭和のヤンキーだったぞ。さっきの顔と目つきもマズいな。通報案件だ。気をつけろよ。」


結局、A定食にしたらしい菅谷から説教を受けることになった。


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