第4話
思い出しちまった黒歴史…。
忘れてたわけではないんだけど、掘り起こされるとなんかイラついちゃうんだよな。
「はぁ。もう過去のことで、そこまで気にしてないつもりだったんだけどな。あいつよりはマシな道徳観をもっているつもりなんだけどな。妹も一時期あいつにお熱だったからなぁ。やっぱり、男は顔ですか。」
「ほぉ、お前の妹がねぇ」
「手ぇ出すなよ?」
「出すわけないだろ!」
「知ってるよ。あの件を除けば割といい奴だった気もするんだがな。もっとも、中学時代からムードメーカーみたいなやつだったし調子に乗りやすいとか、ムカつく傾向はあったけどな。こんな屑野郎ではなかったと思う。中坊の頃の俺に話しかけてきたくらいだし。」
「悪かったよ。あいつらがお前にしたことは俺も許せないしな、俺はもうバスケ部を退部してるから好き勝手言えるし。そもそも、お前を傷つけたやつの肩は持たん。何より、お前に誘ってもらえたから生徒会にいられるしな。鴨川副会長とも正当な理由で傍にいられるしな。」
そう言いながら笑う菅谷。本気で久美のことが好きなんだなと感心する。
(鴨川久美は俺の幼馴染だ。妹みたいな感じだけど。)
うちの学校は、原則として何らかの部活動、または生徒会や風紀委員のような組織に所属しないといけないというめんどくさいルールがある。ちなみに俺は、生徒会に入る前は書道部の幽霊部員であった。
どこにも所属するつもりはなかったが、1年時担任の石井先生が顧問により、いつの間にか入部させられていた。ちなみに生徒会の顧問も石井先生だ。
「俺からするとな、菅谷のほうが副会長に向いていると思うんだ。成績も学年でも一桁順位で、バスケ部の元エースシューターだろ?イケメンだし。」
「んじゃ、お前が会計やるか?」
「無理っす」
「じゃあ、しょうがねぇじゃねぇか」
「だな」
「お前は人を纏めるのがうまいしな。だが、俺がイケメンというのは認めよう。」
「イケメンはくたばりやがれ。」
そんな会話をしているうちに教室にはクラスメイトが続々登校してきたため一度話を切り、適当に無難に朝の挨拶を繰り返す。
目つきが悪い俺は適当に愛想良くしていないと直ぐに悪いほうに勘違いされる。
過去にやらかしているから全否定はできないが。
1年の時にも悪い噂で苦労したし。
ボッチは良いけど孤立はつらいからなぁ。
だからこそ、クラスメイトとも必要以上にかかわらず、にわかボッチ生活をしているのである。
俺は、幼い頃から色々あって、他人に特別好かれたくはないが、嫌われたくもない(孤立したくない)というめんどくさい性分だ。
しかも、人に対して不信なところがある。
よって友達も少ない。
(陰キャというわけではないと思っている陰キャだ。)
ただ、少しばかり根暗で重い性格が災いしてるかな?
黒い歴史となるが…。昨年、初めて彼女ができたが、わずか3か月で浮気され、お別れとなっている。
菅谷の話にも出てきた、バスケ部の現在のエースでありイケメン。
そして学年上位の成績。このイケメン君こそ、元カノの浮気相手であり、なんと中学時代の俺のオトモダチだったりする。
こちらの彼に乗り換えられ、僅か3か月で見切品となってしまった俺ではあるが、正直言うと彼女と別れたことについては特別コレといった感情はない。
今となっては彼女のことを、好きだったのかもわからないが、裏切りに対しての怒りは感じている。
しかし、彼女に彼(俺)がいると知っていて、よくもしれっと交際を始められたものである。
彼の神経が理解できない。彼女についても同じだが。
浮気以上にムカついたのは、あの元カノの女子に変な噂を流されたことだ。
クラスの連中とかに陰口たたかれまくって地味につらかった。
過去の事情も重なり人とのコミュニケーションをとることにかなり億劫になっていた。
2年になって、あのバカップルとクラスが別になって、俺の周りが少し静かになったのが、唯一の救いか。
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