短編:ダンスパートナーはイケメン王子! でも、私じゃなく、可愛い令嬢の方が?
甘い秋空
ダンスパートナーはイケメン王子!
1.令嬢と王子様がダンス大会の練習をしました
「スバル様、体をしっかり縦に伸ばしてください、後ろに反りすぎていました」
「ギンチヨ、俺のダンスに意見するな!」
私の名前はギンチヨ、友好国からの留学生で、長い銀髪、黒の瞳、きつめの顔、一応は王族です。
学園の新校舎の完成記念で、ダンス大会が開催されるので、今日も練習しています。
3年生の男性パートで一番の王子様と、3年生の女性パートで一番の私とが、ペアを組んで優勝を狙います。
しかし、授業では、金髪イケメンの王子様は、素晴らしいダンスでしたが、大会の練習では動きが冴えません。
今日も練習後の反省会で、喧嘩になりました。
「腕の水平がずれていました、ホールドを維持してください」
「俺に意見するな」
「勇者と聖女がシンクロして、魔王城を破壊した伝説は、ご存じですよね?」
「王となるスバル様には、そのシンクロを求められているのですよ」
これは、少し言い過ぎました。
「うるさい! ギンチヨは、悩みなど、ないのだろ」
心が傷つくキツイ言葉を言われました。
「私だって、悩みはあります!」
悔し涙を見せないよう、背を向けます。
「王子様、私にもダンスを教えて下さい」
湧いて出たヒロミン嬢が、王子様をダンスの練習に誘い、二人でどこかに行きます。
ヒロミン嬢は、新進気鋭の男爵家の養女です。ピンクの髪と、お顔が可愛いので、勝手に男子が投票したミス1年生に選ばれています。
2.ヒロミン嬢と王子様との噂
「ギンチヨ嬢、王子様を知らないか?」
王子様が見つからないと、騒いでいます。
「ヒロミン嬢とダンスの練習に行きましたよ」
さっき見たことを話します。
「ヒロミン嬢も見つからないんだ」
二人は行方が分からなくなりました。
1時間後、外からカギをかけられた倉庫で、二人が見つかりました。
「二人きりで何をしていたのかしら」
「ヒロミン嬢は、王子様にキスされたと言ってるわよ」
噂話が広がります。
なぜか、私の心が苦しいです。本当の私は、貴方のことを、、、
だめです、、、彼は、ただのダンスパートナーだと、自分を抑え込みます。
「王子様は否定しているそうよ」
「王子様には、キスをすると証拠が残る、恥ずかしい魔法が、かけられているらしいの」
噂話が広がります。
もう、私には、シンクロどころか、ダンスを一緒に踊ることすら無理です。
3.大会の朝、王子様と二人きりに
今日の午後は、ダンス大会です。
体調は仕上げてきましたが、気持ちが乗りません。
王子様から、ダンスの打ち合わせをするので旧校舎の前に来るよう、手紙がありました。
校庭を挟んだ向こう側、旧校舎の前で、王子様と会います。
「ギンチヨ、朝早くこんな所に呼び出して、ダンス大会を辞退するつもりか?」
「呼び出したのはスバル様でしょ?」
「え?」
「にゃあ」
旧校舎の中から子猫の声がします。
「迷いネコ?」
「ここは、午後に取り壊されるので、早く助けないと」
二人で、立入禁止の旧校舎に入ります。
「引っかかったな」
校舎の中に潜んでいた賊に取り囲まれました。
子猫の声は賊の声真似でした。
子供だましの罠です。これは大失態です。
「ここで、午後まで過ごしてもらおう」
机が移動され、ガランとした教室です。
「待ちなさい、ヒロミン嬢の男爵家の3倍のお金をだすわ! 私たちを開放しなさい」
「相談するので、ちょっと待ってろ。外からカギをかけるので、逃げられないからな」
「ヒロミン嬢の男爵家の仕業なのか?」
「カマをかけたのですが、当たりでしたね」
教室の中は、二人きりです。
少し気まずいです。
「先日は、すまなかった、ギンチヨに悩みなどないと言ってしまって、、、」
「いえ、スバル様が抱える悩みよりは小さいことですから」
「私は、知ってのとおり友好国からの留学生です」
「この国との結びつきを深めるため、多くの人脈を作ることが役目の、、、国の道具です」
誰にも言えない悩みを打ち明けます。
「俺も、国の道具にすぎない」
「スバル様も、自分の意思を抑え込んでいるのですね」
「そういうことだ」
「悩みを話すとスッキリしますね」
「スバル様は、ダンスの時、私を避けていらっしゃいますよね、なぜです」
「そんなに私がお嫌いですか?」
以前からの疑問を聞いてみました。
「実は、俺は化粧アレルギーだ」
「授業の時は、化粧が無いので、うまく踊れるが、、、」
「そっか、大会は、派手に化粧しますからね、、、」
「では、ヒロミン嬢とのキスは?」
「あんな化粧だらけの顔に、出来るわけないだろ!」
「化粧がなくても、愛してもいない令嬢とは、絶対にしない!」
「安心しました」
「今、私はスッピンなので、踊ってみますか?」
「そうだな、ギンチヨと、自由にダンスを楽しんでみたいと、ずっと思っていた」
4.伝説のシンクロです
大会前のスッピンで踊ります。
スバル様とのダンスが楽しいです。
「スバル様、もっと体を近づけても大丈夫ですよ」
「このくらいか?」
お顔が近いです。
まさか、このまま、、、ん!
ダンスの、動きがダイナミックに、スピード感が高まります。
二人で、綺麗なシルエットを作り出しました。
体が光ります!
「「これがシンクロ!」」
光が爆発して、、、旧校舎を破壊しました。
教室の上に青空が見えます。
周囲は旧校舎のガレキの山です。
◇
ダンス大会は、シンクロを制御できないと危険なので、辞退しました。
賊を雇った新進気鋭の男爵家は取り潰し、ヒロミン嬢たちは牢の中で一生暮らします。
王子様と私がキスしたことが学園中、いや王国中に広がりました。
「まさか、スバル様のおでこに『KISS』の文字が浮かび出るとは、、、」
王子様がキスすると証拠が残る魔法って、本当だったのですね。
私たちの結婚式までには、魔法を解除する方法を、見つけ出してほしいものです。
━━ fin ━━
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
よろしければ、★★★などを頂けると嬉しいです。
短編:ダンスパートナーはイケメン王子! でも、私じゃなく、可愛い令嬢の方が? 甘い秋空 @Amai-Akisora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます