新たな敵

第16話「戦士達の戦慄」

正月も終わり茂達はいつも通りの日常に戻っていた。

そしてこの日は茂達ブラックレイドの新年初練習の日だった。

「太一の奴遅いな〜」

「ああ……バイトは終わってもう向かってるってLINE来たのに……」

そこに栞がやって来た。

「皆お疲れ〜ってあれ?」

「まだ疲れてねぇよ……太一が来ないから練習始められないからな」

「太一来て無いの?珍しいね太一が遅いなんて……バイト長引いてるの?」

「いや、バイトは、終わってこっち向かってるはずなんだけど……」


とそこに太一が誰かと話しながらやって来た。

「いや、だから考えて無いですって!」

「あっ、来た」

「これから練習なんでじゃ!」

そう言って太一は誰かを追い返す。

「いや〜遅くなってごめん……」

「太一……どうしたんだ?」

「いや、例のマジックボーイズ?のスカウトの人がしつこくてさ……」

「ああ、まだ誘って来るんだ」

「うん……今もバイト先で待ち伏せされててなんとか撒こうとしたんだけど中々振り切れなくて……」

「それで遅かったんだ……」

「そっかぁ……じゃあ裕二に相談して辞めて貰える様に言ってみるよ」

「え?裕二?」

「あっ、いや……」

「あっ!マジックボーイズの佐野裕二か!確か最初にあのスカウトの金田って奴が来た時一緒に居たよな?でもあれ?お前それからツテあるの?」

「えっ!?いや……それは……」

一緒に戦ってる仲間とは言う訳に行かず返答に困る茂。


そこにもう1人来客が……。

コンコン……。

誰かが貸しスタジオのドアをノックした。

「はーい……あっ、どうぞ!」

それは茂達に内緒で栞が呼んでいた王堂だった。

「えぇー!?王堂さん!?な、なんで!?」

「ほ、本物!?それともモノマネの人?どっち!?」

「いや……本物だろ……でもまさか……」

突然の大物ミュージシャンの来訪にパニックになる辰哉と太一。

「すみません王堂さん来て貰っちゃって」

「どどど!?どういう事だ栞!?」

茂もパニック。

「ああ、この前王堂さんに茂達の演奏見てアドバイスしてあげて欲しいって頼んだの」

「はぁ!?」

「おい茂!何でお前がこんな大物ミュージシャンと知り合いなんだよ?」

「そうだ!しっかり説明しろ!!」

「あ……えっーと……その……」

辰哉と太一に詰め寄られ困り果てる茂。

「茂とは偶然知り合っただけさ。それより君達が茂の仲間か……宜しくな!」

「は、はい!こちらこそ……宜しくお願い致します」

辰哉と太一はガチガチに緊張していた。

「そんじゃあ早速皆の演奏を聞かせてくれ」


「よ……よし……じゃあ……行きます」

茂もいくら顔見知りとは言え王堂の、前で演奏するのはガチガチに緊張していた。

しかし、緊張しすぎでいつも通りの演奏は出来ず散々な出来だった。

「おいおい……お前ら固いぞ……緊張し過ぎじゃないか?」

緊張の原因はあなたです……。

流石に口には出せないが3人は心の中で同じ事を思った。

「よし、それじゃあまず緊張をほぐす所からだな。全員深呼吸しろ。全員の呼吸が整った所でもう1度演奏だ」

そう言って王堂は茂達に深呼吸をさせてから再び演奏させた。

そして演奏を聞き終わると……。

「うん、よし。太一君はまだ固い、リラックスリラックス」

「は、はい!」

「辰哉君は途中でリズムが崩れる所があったぞ。そして茂は歌いだしで少し噛んだだろ。聞いてる方はすぐ気付くから誤魔化せないぞ」

「は、はい!」

王堂の指導に熱が入る。

だが、そこは流石に世界的なギタリストだ。

王堂のアドバイスに沿って茂達は上達の手応えを感じていた。

「よし、少し休憩だ。栞ちゃん悪いがコレで皆に飲み物を買って来てくれ。俺はアイスコーヒーで。栞ちゃんも好きな物を……」

王堂は1万円札を渡した。

「あっ、はい。ありがとうございます」

栞は近くのコンビニに買い物に行った。


「王堂さん、すみません俺達の為に……」

「なーに気にすんな!辰哉君と太一君も中々良くなったぞ」

「ありがとうございます!!」


その頃、奏での戦士団本部では……。

「今日は誰も居ないですね〜」

「そうですねぇ……まっ、お正月も終わり皆それぞれの生活に戻ってますからね。裕二君と新庄君は年末年始大忙しでしたからようやくお休みの様ですよ」

「フォルテはもうすぐまたツアーが始まるとかで今日もレッスンですって……皆忙しいですよねぇ。ところでグランディオーソは?」

「ああ、さっきちょっと出て行くと言ってましたが、どこ行ったんでしょうね?」


誰もおらずミューズも音曽根ものんびり過ごしていた。


ゼレーバが街に現れる。

「さて、今日は久しぶりに出て来ましたが……相変わらず不愉快な世界ですね……」

ゼレーバは近くに居たアコーディオン奏者に狙いを付けた。

「素晴らしい音色ですね」

「!ありがとうございます」

「実に不愉快だ……だが、素晴らしく壊しがいがある」

「え?」

ゼレーバは闇のエネルギーをアコーディオンに送った。

アコーディオンノイズラーが誕生。

「うわぁぁっ!?」

アコーディオン奏者の男性は逃げ出す。


ノイズラー出現の連絡を受ける王堂と茂。

「茂、行くぞ!」

「はい!」

茂と王堂は現場に向う。

「ちょっと!何処行くんだよー?」

ミューズから連絡を受け彰、裕二、新庄、琴音もそれぞれ現場に向かっていた。

そして深見も。

「行くか……」


最初に現場に到着したのは茂と王堂。

「茂、さっさと倒して練習の続きだ!」

「はい!」

2人はそれぞれの楽器を呼び『変身』

ビートとグランディオーソが登場。

「行くぞ!」

「はい!」

2人がアコーディオンノイズラーに挑む。


「来たか、音楽の戦士……」

様子を見ているゼレーバ。

「盛り上がってるみてぇだな」

そこにドレイクがやって来る。

「ドレイクか……何をしに来た?」

「俺も暴れたくてよ」

「好きにしろ」

「んじゃ、遠慮なく!!」

ドレイクが戦いに参加。

「ドレイク!?」

「よぉ!戦おうぜ!!」

ドレイクがグランディオーソに襲い掛かる。

「グランディオーソ!?」

「俺は大丈夫だ!お前はノイズラーに集中しろ!」


だが、ビートが振り向くと既にアコーディオンノイズラーが攻撃して来ていた。

「うわっ!?」

ビートが避けようとするが間に合わない。

「はっ!」

そこにボイスが現れアコーディオンノイズラーを退ける。

「ボイス!?」

「よっ!待たせた」

そして、ブリッランテとフォルテも到着し、ゼレーバに攻撃を仕掛ける。

「ゼレーバ!お前の相手は俺達だ!!」

「フンッ……やれやれ……」

ゼレーバも応戦。

そして、フェローチェも到着し、ドレイクをグランディオーソから引き離す。

「お待たせ!ってオレが最後かよ〜……」

「いや、ジーグさんがまだです」

「そっか……しかし、アイツ最近見てねぇぞ?」


「チッ……戦士共が全員揃いやがった……」

「へへっ、このままお前達を全滅させてやるぜ!!」

グランディオーソが啖呵を切ったその時!

何者かが背後からグランディオーソを攻撃。

「ぐあっ!?」

「グランディオーソ?」

グランディオーソを攻撃したのは……?

ジーグだった。

「ジーグ!?何で!?」

「よぉジーグ!やっと本性現しやがったか!」

ドレイクが言う。

「ええ……そろそろ頃合いかと思いまして」

「ジーグ……どういう事だ!?」

「王堂さん……奏での戦士団の中に神の楽譜の情報を流した裏切り者が居るって言ってましたよね?」

「!?まさか……お前が!?」

「そう……それは僕……」

「な……何故だ!?何故ノイズなんかに……」

「……ずっと……ずっと嫌いだった……常に俺の上を行くあんたが……」

「え?……」

「あんたは才能に恵まれ……僕の欲しい物を全て持っていた……いくら努力してもあんたに一歩及ばない……それがずっと悔しかった!」

「そんな……だからってそんな事しなくても……」

ビートが言う。

「黙れ!!お前に何が分かる……音楽の世界でコイツに勝てず戦士の道を選んでもコイツに勝てず……僕は……もう限界だった……だがある時気付いたんだ……ノイズと一緒に音楽の無い世界にすればそんな思いも無くなると」

「くっ……ジーグ……本気で言ってるのか!?音楽の無い世界のその先に何がある!?」

「本気だよ……もう……音楽なんて要らない……この世界から音楽を消す!!」


「良く言ったジーグ……貴様の覚悟見せて貰ったぞ!」

ノイズのボス、ベルアゼスまで現れた。

「くっ……ベルア……ゼス……」

「受け取れ!これがお前の力だー!!」

ベルアゼスはジーグに闇のエネルギーを与えた。

「うおおぉぉぉっ!?」

ジーグは闇の力を得て闇の戦士ジーグとなった。

「ジーグ!?お前……」

「もうあんたの時代は終わった……死ねよ」

ジーグは必殺技『ダークライトニングバースト』をグランディオーソに向けて放った。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

その威力は闇のエネルギーが上乗せさせ通常の数倍パワーアップしていた。

グランディオーソは変身が解除され倒れる。

「くっ……」

「王堂さん!!」

ビートが王堂に駆け寄る。

「王堂さん!しっかりして下さい!王堂さん!!」

「茂……すまねぇ……もっと……練習……見てやりたかった……」

「そんな……元気になってまた練習見てくれよ……」

「悪い……そうしたいが……無理そうだ……皆にも謝っておいてくれ……」

「そんな……王堂さん!!」

「茂……お前には戦士の才能もあると思ってる……お前の手で……音楽を……守ってくれ……」

そう言って王堂は『ベースチェンジャー』を茂に渡した。

「な……何だよ……これはあんたのだろ?」

「お前は……良いミュージシャンになれる……世界に……音楽を……」

そう言い残し王堂は息絶えた……。


「王堂さん?……王堂さーん!?」


続く……。

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