第14話「戦士達の大晦日」
この日は大晦日。
街の人々はお正月を迎える準備の総仕上げをしている頃だろう。
そんな年末は音楽の戦士達にとっても忙しかった。
雑巾を絞る茂。
「う〜っ、冷てぇ〜……ったく、何で俺らが大掃除手伝わなきゃいけねぇんだよ……」
「文句を言うな。本部は俺達で使ってるんだから俺達で綺麗にするのは当たり前だろ!」
彰は茂に注意しながら掃除をしていた。
「だったら他のメンバーはどうしたんだよ?」
「あのな〜今日は大晦日だぞ?裕二も琴音も新庄も紅白に出るんだから忙しいに決まってるだろ」
王堂も掃除をしている。
「まぁ、それは分かるけどさぁ……ミューズさんと音曽根さんは?」
「2人は手分けして買い出しに行ってるよ。お節料理の材料だったりお正月飾りだったり……」
「ふ〜ん……」
「お前口より手を動かせよー!」
「へいへい……」
そこへ栞がやって来た。
「皆お待たせ!手伝うよ!」
「あー!栞!やっと来た〜」
「仕方ないでしょ?ウチだって大掃除だったんだから」
「悪いな栞ちゃんここまで手伝わせて」
「あっ、いえいえ、この間は皆さんのお陰で助かりましたから、これぐらいはさせて下さい」
「栞さんってさ……茂には勿体無い位いい子だな」
彰が言うと……。
「うるせー!」
茂が怒って立ち上がった瞬間バケツの水をひっくり返す。
「あー!!」
「バカ!仕事増やすなよ……」
「オメェのせいだろ!!」
「良いから早く拭けー!!」
大掃除はまだまだ終わらない……。
その頃ノイズのアジトでは……。
「諸君、本年中は破壊活動ご苦労だった。ムザンが倒された為、新年の祝いは出来ないが、来年も宜しく頼む」
意外と律儀な組織の様だ。
「はっ!来年こそは音楽の戦士共を葬り去り音楽の無い世界を作り上げてご覧にいれます」
ドレイクがそう宣言すると。
「フンッ、暴れるしか能の無いお前にそれが出来るのか?」
ゼレーバがドレイクを小馬鹿にする。
「何だと!?テメェ〜!!」
「止めろ!見苦しいぞ」
「もっ、もうしわけありません……」
「そろそろフリーゼも戻るはずだ。新年の士気を高める為の宴を行うぞ」
「はっ!」
その頃、ミューズは買い物を終え帰っていた。
「ちょっと買い過ぎちゃったかな〜……まっ良いか。皆食べるでしょ」
音曽根は一足先に帰り、お節料理を作り始めていた。
その様子を覗く茂と彰。
「なぁ……お節って音曽根さんが作るのか?」
「ああ、音曽根さんは料理上手いからな……毎年作ってる」
「へぇ〜……音曽根さんって何でも出来るな」
「おいお前ら!そんな事してる暇あったら窓拭き手伝え!」
王堂から注意させる。
その頃、裕二はマジックボーイズのメンバーと共に紅白のリハーサルをしていた。
「よし、フォーメーションも完璧!皆本番もこの調子で頼むぞ!」
そこに琴音がやって来た。
「裕二君、どう調子は?」
「琴音さん!お疲れ様です。ええ、良い調子ですよ!」
「そう。でも今日は組違うから敵同士ね。負けないからね!」
「臨むところですよ!」
「それはそうとちょっといい?」
「あっ、はい……じゃあ皆は休憩しててくれ」
そう言って裕二と琴音は場所を変えた。
「何ですか?」
「うん……前に王堂さんが言ってた戦士団の中に裏切り者が居るって話……どう思う?」
「ああ……その話ですか……裏切り者が居るなんて考えたくないですが……神の楽譜の存在をノイズが知ってたとなると信憑性は増しますよねぇ……」
「うん……一体誰何だろう……」
「奏での戦士団って言っても世界中に居る訳だし、戦士が裏切り者とも限りませんからね……」
「正直絞り込めないよね……何かヤダなー仲間を疑いながら戦うのって……」
そして、夜……。
茂達はそのまま奏での戦士団本部で大晦日を過ごしていた。
「なぁ、醤油取って」
「おう……」
「どうだこのマグロ?上手いだろ?」
「美味いっすね」
「そろそろ紅白始まるわよ!」
ミューズがテレビを点けると紅白が始まった。
「裕二や琴音さんこれに出るんだもんなぁ……すげぇよ」
「しっかし……今年は色々な事があったなぁ。茂君が加わって……王堂君も帰って来て」
「そういえば……俺もこんな落ち着いた年末なんて久しぶりだなぁ」
と王堂が言うと……。
「あれ?そうなんですか?」
「去年まではムザンが何処の国に現れるか分からなかったから警戒しまくりで、ムザンが現れたらその国の戦士達の援護に向かう事になるし……クリスマスが終わったら被害にあった街の後片付け手伝ったり……なんだかんだで気づいたら年が明けてたって感じだったからな……」
「えっ!?奏での戦士団ってそんな事までするんすか?」
「ああ、基本的には非戦闘員が後片付け等をするんだが、王堂君は自ら手伝ってくれててな……」
「まっ、それも今年で終わった。それも茂がムザンを倒してくれたお陰だ」
「いや……そんな……」
「茂……お前には戦士としての才能があるのかも知れない……どうだ?来年から戦士の方に本腰入れてみないか?」
「いやそれは……勘弁して下さいよ」
その時、ノイズ出現を察知!
「ノイズ……」
「クソッ、大晦日ぐらい大人しくしとけよ……」
「行くぞ」
王堂、茂、彰は現場に向かった。
そしてその場所は……。
紅白歌合戦をやっている日本武道館だった。
「アイツの狙いは紅白歌合戦だ!全力で止めるぞ!」
「はい!」
日本武道館に迫るノイズは……。
フリーゼとマリンバノイズラーだった。
「フフフッ……ベルアゼス様の手土産に紅白を破壊してやるわ!」
「させるか!!」
茂がマリンバノイズラーに飛び蹴りを食らわせる。
「何っ!?お前達は……音楽の戦士共……」
「テメェか、フリーゼ!!」
「フンッ、グランディオーソか……南極の時以来だね……」
「ったく……日本の年末の風物詩を壊そうなんて許せねぇ!」
茂達はそれぞれの楽器を呼び『変身』
「お前ら、ノイズラーを頼む。フリーゼとは俺が決着を着ける!」
「はい!」
「グランディオーソも気を付けて」
「フンッ……来な!」
ビートとボイスはマリンバノイズラーと戦う。
そして、グランディオーソはフリーゼと戦う。
その頃、日本武道館では出番を待っている裕二、琴音、新庄の元にミューズから連絡が……。
3人が合流する。
「おい!連絡見たか?」
「ええ……まさかここが狙われるなんて……」
「茂君達が戦ってくれてるみたいです……私達も早く……」
だが、そこに更に音曽根から連絡が入る。
新庄のスマホに音曽根が電話をしていた。
「新庄君、皆居るか?」
「ええ、ミューズさんからのメールを見て集まった所です」
「そうかなら丁度いい。皆にも伝えてくれ。茂君からの伝言だ」
「え?茂からの伝言?」
「!茂……?」
「!まさか……ピンチなの?」
「『皆さんは紅白に集中して下さい。日本武道館は俺達が必ず守ります』とな」
「つまり……来るなって事か?」
「ああ、茂君は皆に気を使っているんだろう。ミューズさんから連絡はあっただろうが、ここは茂君の気持ちを汲んでやってくれ。ミューズさんには私から説明しておくから」
そう言って音曽根は電話を切ってしまった。
「茂の奴……」
「どうします?」
「これは茂の思いやりだ。大事にしよう」
「じゃあ……」
「ああ、俺達は紅白に集中するぞ」
「分かりました」
だがその頃、ビートとボイスはマリンバノイズラーに苦戦していた。
マリンバノイズラーがマリンバを叩き衝撃波で攻撃。
「ぐわぁぁぁっ!?」
「クソッ、コイツ結構強いぞ……」
「だからって……負ける訳には行かねぇ!!」
ビートは『ビートチェンジャー』を取り出す。
「ボイス、援護してくれ!」
「任せろ!」
ボイスも『マイクチェンジャー』を取り出す。
「お前なんかに日本の大晦日を壊させはしねぇ!!」
マリンバノイズラーが再び衝撃波を放つ。
「させるか!うぉぉぉぉっ!!」
ボイスが『マイクチェンジャー』を使った声の力で衝撃波を相殺。
「今だ!!」
ビートは必殺技『ロックスターブレイク』を発動しマリンバノイズラーを倒す。
そしてフリーゼと戦うグランディオーソは……。
「お前のノイズラーは倒されたぞ……まだ戦う気か?」
「くっ……おのれ〜!!」
フリーゼはまだ攻撃を仕掛けて来る。
「喰らえ!!」
「仕方ねぇな……だが、そろそろ終幕だ!!」
グランディオーソは必殺技『ロックスターマキシマム』でフリーゼを攻撃。
「ぐあぁぁぁぁっ!?」
「どうだ!」
「ぐうぅ……お……おのれ〜……」
フリーゼに深手の傷を負わせていた。
「来年こそは……貴様を……倒す!」
フリーゼは姿を消した。
「よし……日本の大晦日は守れたな……帰るぞお前ら」
「うーい」
「はい……」
大晦日の風物詩を巡る戦いは終わった。
しかし、戦士達の戦いは年明けと共に更に激しさを増す事になる。
続く……。
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