鳥頭

文重

鳥頭

 俺の目の前で太古の舞踏が繰り広げられている。腰布1枚の若い女が目の前を舞いながら通るたび、むき出しのたわわな胸に自然と目が吸い寄せられるが、なぜか欲情をかき立てられることはなかった。

 その要因の一つは、女の顔をあらかた覆っている、鳥の頭を模したかぶりもののせいだろう。長い嘴を持つその鳥頭と女の真剣な表情との対比が、どこか場違いなおかしみを醸し出しているのだ。

 もう一つは、半裸の女の舞いが全く蠱惑的なものではなかったせいだ。男たちを前にしても、いささかも媚びることなく、あからさまな“しな”を作ることもなく、ただ一心不乱に踊り続けている。


 ここはどこなのか。俺は夢を見ているのだろうか。それともタイムスリップして古代に飛ばされたのか。靄がかかった頭を振り振り、記憶を呼び起こそうとあがいてみる。


 唐突に音楽が鳴り止み、鳥頭の動きも止まった。したたり落ちる汗を拭おうともせずに、その目が真っすぐに俺を射抜いた。

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鳥頭 文重 @fumie0107

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