6話 わたしは乙女ゲームの主人公ではなかったようです。

 わたしがラブ☆メモリーの主人公だと思い込んでいた理由の珍しいピンク色の髪と水色の瞳は、本物のラブメモのヒロインと見比べると


 くすんだ色のただの癖毛と水色と言うには濃すぎる瞳の色だった。


 じゃあ



 わたしは




 誰――――?




 何の為にここまで、これまで、こんなところまで、やってきたのだろうか――――

 わたしの11年間は何だったんだろう――

 しっかりと立っている筈なのに、まるで地震が起きたかのように地面がグラグラと揺れている様な感覚に襲われる。


 あそこに、あの子が、ラブメモのヒロインなら、わたしは――?



 ラブメモに出てくる女子キャラは主人公の他にライバルキャラが二人いる。


 一人は公爵令嬢のエリザベッタ・エヴァンズ

 金髪縦ロールにツリ目がちな紫の瞳が印象的な美少女で、主人公の攻略対象が王族・貴族の時のみ登場し、平民の主人公とでは釣り合わないと身分差を自覚させようとあらゆる手を使い邪魔してくるライバルキャラである。


 わたしは公爵家の産まれではないからこのキャラではない……


 二人目は茶色のポニーテールに茶色の瞳でそばかすが特徴的で、攻略対象全員のライバルキャラとして出てきて、最後には主人公を殺害しようとしたところを攻略対象に返り討ちに合う平民のアンナ。


 平民なのは同じだけど当然わたしとは姿が一致しない……


 そんな事をグルグルと考えていると不意にクリスチアンから声がかかる。


「あぁ、あの子はマリーといってエマと同じ特進科に入学する女生徒ですよ。」




 マリー……?誰…………?そんなキャラいない……


 だってラブメモでは……唯一、平民で、初めて特進科に入れて……


 特進科では、唯一の女生徒で………………


 だから……特進科に二人も女子キャラがいるわけなくて…………………………


 そんなキャラ……そんなキャラいないのに…………



 違う……いないのは………………わたし………………?




 遠くの方で誰かの声がする様な気がして、そのままわたしの視界が突然揺れたかと思うと、プツンと真っ暗になった。










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