第4話 交差する運命

太郎とリサ、二人の物語は、思いがけない形で交差することになった。

太郎がミュージシャンとして成功を収めた世界線で、リサはアーティストとして活躍していた。二人は、あるチャリティーイベントで出会った。

太郎のバンドが演奏し、リサが絵を描く。音楽と絵画が融合するパフォーマンスだった。

二人は、お互いの作品に深く感銘を受けた。太郎の音楽は、リサの心の奥底にある感情を呼び覚ました。リサの絵は、太郎に新たな音楽のインスピレーションを与えた。

イベント後、二人は意気投合し、親密な友人関係を築いていった。お互いの過去や、リセットボタンのことも打ち明けた。

「君も、リセットしたんだね」太郎が言った。

リサは頷いた。「ええ、でも今は、リセットしてよかったと思っています」

「僕もそう思う」太郎は笑顔で答えた。「でも時々、あの時のままだったらどうなっていたんだろうって考えることがあるんだ」

リサは黙って頷いた。彼女も同じ思いを抱いていた。

ある日、二人は海辺を歩きながら、人生について語り合っていた。

「もし、もう一度リセットできるとしたら、どうする?」太郎が尋ねた。

リサは少し考え込んだ。「わからないわ。今の人生に満足しているけど、でも...」

「でも、他の可能性も気になる?」太郎が言葉を継いだ。

「そう、そんな感じ」リサは頷いた。

二人は、波の音を聞きながらしばらく黙っていた。

「でもね」リサが口を開いた。「たとえリセットしたとしても、きっと私たちは出会うと思うの」

太郎は驚いた顔をした。「どうして?」

「だって、私たちはお互いを必要としているから」リサは優しく微笑んだ。「私の絵は、あなたの音楽を必要としている。あなたの音楽は、私の絵を必要としている」

太郎は深く考え込んだ。確かに、リサの言葉には真実があった。二人の芸術は、お互いに影響を与え合い、高め合っていた。

「そうだね」太郎はようやく口を開いた。「僕たちの出会いは、偶然じゃなかったのかもしれない」

二人は、夕日に照らされた海を見つめながら、静かに笑い合った。

その夜、太郎とリサは、それぞれの家でリセットボタンを見つめていた。しかし、もはやそれを押す必要性を感じなかった。

彼らは、自分たちの選択が正しかったことを確信していた。リセットによって得られた人生は、確かに苦難もあったが、それ以上に価値のあるものだった。

太郎は、ギターを手に取り、リサとの出会いに触発された新しい曲を作り始めた。

リサは、キャンバスの前に立ち、太郎の音楽をイメージしながら、新しい絵を描き始めた。

二人の芸術は、これからも多くの人々の心に希望と勇気を与え続けるだろう。

そして、彼らは知らなかったが、彼らの物語は、リセットボタンを持つ他の多くの人々に影響を与えていくことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る