下巻の全容とお詫び 第42話 騎士団長会議

 下巻について7割方書き終わっているんですが、今の状態で完結したくないなっていう気持ちになってしまい書き直しすることにしました。

 読み進めてくれた読者さんにはごめんなさいです。


 とはいえ上巻を読んでくれていた人はいろいろ謎が残ったままでは消化不良過ぎると思いますので、下巻の展開や今まで不明であった部分は書いていこうと思います。

 全容を紹介するのに序盤の3話分だけは出そうと思います。

 夕方には3話出し、夜には下巻の内容を出します。




 聖都、騎士団本部にある一室。余計な物は一切ない部屋は、木材でできた分厚い巨大な丸いテーブルが中央に置かれている。

 そこにはイスが八つ用意され、それぞれに座る主は決まっていた。



「カイル団長、お主ほどの者が任務に失敗とはどういうことか?」



 カイルに訊ねたのは、この場の議長である第一騎士団長であり、同時に総督の座に就いているファウザ・ブライトだ。

 この場に集まるのは騎士団長だけであり、半数は二〇代後半の構成。

 最年少は第四騎士団長のレイア・メディアスで二四歳だ。

 第七騎士団長であるカイル・ウォーカーと第八騎士団長のイリヤ・ラームが三〇代前半。

 最年長は第五騎士団長の六八歳。数字だけ見ればもう引退していておかしくはないイザーク・オーベルだが、彼はエルフであり身体的には二〇代というところだ。

 そして第一騎士団長。身体は骨格がよく、筋肉質なのが見ただけでわかる。

 ファウザはニクラモナールの服を好むのかはかまを着ており、四八歳という年齢に風格のようなものを感じさせた。



「そうは言ってもなぁ」


わしの前でふざけておるのか?」



 首元で一本に縛られた白い髪が揺れ、イスの背にもたれかかっているカイルに威圧するような視線が向く。



「実際強かったからなぁ。お互い本気だったら殺し合いになっていた」



 カイルが言った言葉に、その場にいた団長たちのまゆが動く。

 それはヴァルキュリア戦術を使うカイルが、死を覚悟して戦うことになると言っているからだ。



「それは相手もヴァルキュリア戦術を使えるということか?」



 長い紺色の髪をスッとおろしている第六騎士団長のビザイストが訊ねた。



「ああ。それも雷系の、オリジナルのヴァルキュリアをな」



 さっきはまゆしか動かさなかった団長たちが、これにはさすがに表情を変えた。



「正確には聖遺による特殊能力ではあったが」


「聖遺?」



 これに反応したのはエルフのイザークだった。二〇〇という人や魔族よりも長寿なせいか、こういう反応をイザークがするのは珍しい。

 口元まである金色の前髪の奥から、青い瞳がカイルへと向けられる。



「ああ。二刀の聖遺で、太刀たち打刀うちがたなの聖遺だ」



 それぞれが思案するような表情になり、部屋を沈黙が包む。

 今回カイルは命までは奪われていないが、それでも敵として対立したことは事実。

 そして次はカイルのようにいかないかもしれないと考えても当然だろう。

 そんななか、確認するように口を開いたのは第二騎士団長のサガであった。

 髪を後ろに流し、冷静に分析するような目で話す。



「相手は聖女候補の護衛だった。彼はネビュラだったということかな?」


「いや、違うだろうな。一応俺も確認はしたが、その上で俺の感はネビュラではないと言っている」


「そうなるとネビュラの可能性が高い魔女、そしてさらにオリジナルのヴァルキュリアを使う者が敵対的な立ち位置ということになるね。

 魔女だけでも厄介だが、その護衛もとなるとなにか手を打つ必要がある」


「それなんだが、アイツはたぶん護衛として動いただけだと思うぜ」


「どういうことかの?」



 カイルの意見が意外だったのか、まゆを少し上げてファウザが促した。



「ハーヴェスト家には聖女が死んだという通知がいっていたらしい。

 それが実際には生きていたわけだから、騎士団を信用できないってのは筋が通ってるよな。

 あの状況じゃ飲めねぇだろうとは思ったんだが、一応俺に預からせてほしいとも提案はしたがご存知の通りだ。

 ただ向こうも俺の反応を見て、立ち回りを考えたんだろうな。

 じゃなかったら俺は今頃ここには座ってなかったはずだ」



 ファウザは無精髭ぶしょうひげを触りながら、第八騎士団長のイリヤへと視線を向ける。

 第八騎士団は他の騎士団とは違い、神聖魔法が使える者を中心に組織された団だ。

 そして今回カイルの治癒に当たったのがイリヤであるため、それを聞くためにファウザは視線を向けたのだろう。

 イリヤは襟足えりあしの辺りでパツンと切り揃えられた黒髪を耳にかけて口を開いた。



「治癒を行う際、最初に目を向けるのは患者の状態になります。負傷の具合を確認し優先順位をつけます。

 カイル団長の負傷具合を確認したとき、最初に気になったのは軽症であったこと。

 当然のようにあるはずである傷はなく、戦闘の際間接的に負ったであろう擦り傷や打撲しか見当たりませんでした。

 そうなるとカイル団長が敗れた原因は斬撃によるものではないとなります。

 ここで可能性として挙がるのは魔法となりますが、これも判断がつきませんでした。

 火であれば火傷などによる痕跡こんせきから判別しますが、私の経験にはない状態だったからです。

 ですがカイル団長が今話した内容で納得しました。

 それを踏まえてになりますが、確かにカイル団長への攻撃には手心が加えられていたのでしょう。

 私が治癒魔法をほどこさなくても、一ヶ月もあればカイル団長は回復できていたでしょうから。

 むしろジラン副団長の方が傷としては多かったくらいです。

 こちらも命に関わるような状態ではなかったのですけど」


「そっちも二枚羽のヴァルキュリアだったからな」



 カイルがセリナのことも告げると、団長たちはファウザへと視線を移した。

 ファウザは一度まぶたを閉じると、少し思案してサガの方を見る。



「セリス・ハーヴェストとその二人は行動を共にしておるんだな?」


「はい。学院も夏季休暇に入っており、ベント伯爵が預かるイストにいるようです」


「そうか。ならばセリス・ハーヴェストの保護という観点で見れば問題なかろう。

 セリス・ハーヴェストについての誤情報は調査するとして、問題はヴァルキュリアを使う二人。

 我々と剣を交えた以上、なにもなしというわけにもいくまい。おとなしく出頭するかの?」



 今度はカイルへと視線を移したファウザだったが目を細めることになった。



「まずは誤情報を洗うことだな。これが解決しない限り、あの様子だと聖女も聖都に戻ってこねぇんじゃねぇか。

 それにヴァルキュリアの二人以外にも、扉を押さえてきた騎士団。

 こっちの被害がかなり軽症で済んでいた。それだけの余裕が向こうの騎士団にはあったということだ。

 そんな騎士団をハーヴェスト家が抱えているってのも、こっちとしちゃぁ動きづれぇよな」


「……そうか。ヴァルキュリアを使う以上、包囲による数の威圧も意味はなし。下手をすれば騎士を失うだけとなるかの。

 学院の夏季休暇終わりで聖都に戻ってくればよし。それまでは様子を見ながら誤情報について調査するもとする」

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