好奇心は猫どころか周囲を巻き込みましてよ?

「オルレアンさん。本当は、したんです?」



 誰が。そこをかなり強調しています。

マドレーヌが緊張のあまりお茶を一気飲みしましたわね。



「なあ、アルザスの記者さん。良かったら、アイツにも取材するか?」



 無理やり逸らしましたわね。

ですが、これ以上調べられたら困ります。

ええ。触れてはいけない事が世の中にはありますから。



「え、ええ。おい、行くぞ!」

「え、あっ、ちょ!まだ聞いてませんよ!」

「領主に変わり、案内致します」



 シャルに連れられ、記者の皆様は研究室へと向かわれた様です。

間一髪ですわ。



「いやー、ヤバいわ。あのリュシー・マクシミリアンって記者クソ面倒くさい」

「同感ですわ」



 彼女からは私の事を知っているような、けれど確信を持てない様な雰囲気を出していました。

それを問おうとしていたのでしょう。

まさか、幽閉された私とは思いもしませんもの。

ですが、少し問題も。



「もし、私が背後に居るとなれば。きっと国王は問いただしますわね。『追放された令嬢が反逆しようとしている』と」

「言いがかりが過ぎるって。ま、その時はほとぼりが冷めるまで適当に隠れとけ」

「いっそ新大陸へ行くのも様ですわ。あえて東の国にでも良いですわね」



 そんなことを思いながら、冷めたお茶を頂きます。

このくらいの、程よく熱いのが体中に駆け巡りますわ。



「アンネ、もしアイツらが私らの事、いや。お前の事を書いたらどうする?取り下げるように手紙でも」

「それは彼らに確信を余計に与えているだけですわ。ですけど、黙っている訳にもいきません。その時は、別の新聞社の記者でも招いてもみ消してもらいましょう」



 情報は情報で消す事が出来ます。

剣は剣で制する様に。

確かにペンは剣よりも強いですわ。

ですが、ペンも剣も持つ者こそ、真に強いのです。



「アイツら来ないな」

「彼女は緊張しやすい方ですから、私たちの事はあまり言わないはずですわ」



 しばらくすると、ドアが開きました。

記者さん二人が帰ってきたみたいですわ。

若干やつれて見えるのは気のせいかしら。

マクシミリアンさんは、私に目線を向けることはありませんでした。

次来たときは、警戒しないといけませんわね。



「本日はありがとうございました。ラヴォアジエさんと話せてうれしかったです。帰るぞ」

「はい……。ここで失礼します」



 そして、ぼそりと「ボク二度と来たくないや」とごちる。

その言葉、そっくりお返しいたしましてよ?

それよりも。

ラヴォアジエは研究をしていたはずです。

彼女の研究室へと行かなければ。



「ラヴォアジエ、先ほど人が来てましたわよね?」

「アンネ様!き、来てました!けど、中には居れていません!機材や薬品で危ないので」

「でしたら、何か尋ねられませんでしたか?例えば、私の事や王宮の事など」

「流石に伏せましたぁ。アンネ様の事はマドレーヌさんから聞いてますので!」



 黙っていてくれたのかしら。

流石ですわね。

マドレーヌに後で礼を言わないと。



「ラヴォアジエ。研究は順調なのかしら?」

「は、はい!私の考えた通りでしたあ!硝石を砕いたものは火薬の威力を上げます!しかも今まで以上に!これを増産出来れば銃の威力もいえ、大砲の威力も上がります!」



 そう言うと、彼女は「ふひひひ」と奇妙な笑い声をあげ始めました。

嬉しいのでしょう。わかります。仮定が合っており、その通りになったのですから。

さて、次は銃でしょうか。



――ナロウ歴1785年 6月1日 夕刻

ラヴォアジエが火薬の改良に成功。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る