取材とはここも有名になりましたわね

 珍しく身なりを整えるマドレーヌ。

今日は取材される記者が来るのですからそうですわよね。

多少は良くしたいのが本音です。

私は、陰ながら応援していますわね。



「なあアンネ。頼むよ。私の代わりに全部答えてくれよぉ、こう、なんて言うか取材されるって凄く」

「堂々となさい。それに今回はあなたについてですから、そのまま答えれば良いのですわ」

「そういうものなのか?」

「そういうものですわ」



 本当は知りませんが、堂々としていれば良いのです。

嘘は言わないのですから、その通りに伝えてくださいますわ。

新聞は見る側でしたが、まさか見られる側になるとは。

さて、今回はなんと王国最大の新聞、アルザスです。

私もよく読むものです。

新聞は高価ですが、その分色々な事が書かれています。

特に世情に関することは大体ここから仕入れていますわね。 

最も、諸島連合からコーヒー・ハウスが出たみたいですわ。

王国内にも、少ないですけど、似た様なものがあるそうです。



「どうも、ご機嫌麗しゅうマドモアゼル。私はアルザスの新聞記者エベール・コルドリエと申します」

「同じく、リュシー・マクシミリアンと言います。今日はよろしくお願いします」



 壮年の方が入ってきました。

隣の方は……子供かしら?

その割には大人の様に見えますわね。

服の上から一部が強調されている気がします。

主に胸が。



「おや?どこかで見た様な顔が」



私の顔をマジマジと見ています。

何か付いているのかしら?



「おい、失礼だぞリュシー。オルレアン様、申し訳ありません。彼女の無礼は何卒」

「ああ。構わない。それよりも取材をするんだろ?何をお尋ねしたいのです?」

「オルレアン領が何故、ここまで発展したのか!ですね」



 それはそうですわよね。

それは来ますわよね。ええ。

シャルの入れたお茶が良い香りを漂わせています。



「決まっている。領民のたゆまぬ努力さ!それがたまたま大きく良くなっただけですよ」



 マドレーヌ?

それもあると思いますけど、まさかそれで通すつもりではないですわよね?



「それ以外もあると思いますが?」

「後は錬金術の発展かな。すごい奴が居まして、ソイツのおかげで変わったんですよ」

「ほう?それは知りたいですねえ」



 先ほどから、マクシミリアンさんは速記をしながらですが、私たちをじいと見てばかりです。

お茶にも手を出していません。

彼女、何か引っかかっている感じですわね。



「ラヴォアジエが私に尋ねて来たんだ。以前から交流もあったからな。アイツは農業関連の知識もある。私じゃ遠く及ばないくらいさ。それでちょこちょこ力を貸してくれたって訳」

「ラヴォアジエと言うと、錬金術を使わない錬金術師ラグランジュ・ラヴォアジエですかな?」

「ああ!私のお父様と知り合いでその縁で―――」



 ある事ない事かは置いておいて、彼女が押しとおす力はすごいですわね。

知る限りでは、そうではない気がするのですが。

私はマクシミリアンさんを尋ねたいですわね。

彼女、油断ならない空気をしています。

そして、取材は進みました。



「本日は以上です。ありがとうございました」

「ああ。記事を楽しみにしてるよ。いの一番に見せてくれよな!」

「ええ、もちろん。リュシー帰るぞ」

「あの、少しよろしいですか?」



 ――変わった。

目つきが。空気が。



「マドレーヌさん。本当は誰がしたんです?」

「それはラヴォアジエさ。さっきも言ったろ」

「違いますね。錬金術師にそこまで知識がある方をボクは知りません」



 そして、彼女は私に眼は、マドレーヌに。

まるで彼女を問いただす様に、こう言いました。



「オルレアンさん。本当は、誰がしたんです?」



――ナロウ歴1785年 6月1日

王国最大の新聞『アルザス』から取材を受ける。

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