別の問題が出ましてよ
マリーの使い、というよりはマリーの差し金と言うべきでしょう。
私を消したくてしょうがない事は解かりました。
大きく動き過ぎましたけど、しばらくは穏便にする必要があるかもしれませんわね。
すぐに領地が改良されるとは思えませんものね。
知的で可憐な私がいると踏んだのでしょう。
ありがとう、愚かで醜いマリー。
私の価値が大きく上がりましてよ。
「さて、あなたにから貰った土地はどうしましょう。隣国に売るなんて嫌ですわ」
「何を建てるよ?豪邸?ああ、店もいいな。資金が手に入る」
「そんなに大きいものでしたのね」
「仮にも王族関連の令嬢だからね、小さなのなんていらないだろ。そこらには配慮しているつもりさ」
どうやら、その土地はとても大きいそうです。
でしたら。したいものがありますわ。
昔からの夢を。
「でしたら、農地にしましょう。プライベートで使えますわ」
「アンネ、こほん。……お嬢様。良いのですか?」
それに私、自由に使えるお金は欲しいですの。
手元のものはもう少ない。
シャルに払う給料は何とかしています。
彼女を手放すなんてとんでもない!
農地であれば、自然相手ですけど、必ず需要はありますわ。
誰も食べる事と飲む事に関しては逃れることはできませんことよ。
それに、資金があるならばちょっとしたことも出来そうです。
例えば、シャルやマドレーヌ、ラファに良いものを送ったり。
フランさんにも送らなければいけませんね。
私から何も返さないのはダメですわ。
「農地にするのか?少しもったいない気もするけど」
「そこをワイン畑にしますわ。余りそうであれば、ウシやブタを育てるのも良いですわね」
「お、肉か!塩漬け肉以外も食べたいからな。よし!今すぐしよう!現地へ行こう、アンネ!」
「もちろんですわ」
ふふ、楽しみですわね。
私の農地!
馬車に乗り込めば、私のスローライフが待っていますわ!
ところで、田舎で家畜や野菜をお世話することって、スローなのかしら?
「ここですのね」
「良いだろ」
そこは山々に囲まれて素晴らしい場所。
青々と茂る草木がこの地の良さがうかがえますわ。
小動物も居ますわね。
土壌は……素晴らしくてよ!
これなら問題なさそうです。
「どうだ?ブドウは作れそうか?」
「お任せあれですわ。ここにワイナリーとここより、少し離れたところに家畜小屋を作りましょう」
「ならそうしようか。おーい!出番だぞー!」
マドレーヌがそう言うと、ゾロゾロと屈強な男性の方々が現れる。
道具からして、大工の様です。
「後の細かな事はこいつらに」
「いえ、大丈夫ですわ。設計図を書く紙はありまして?」
「ここにあります」
流石シャル。
私は早速紙を流れるように書き込む。
この辺りはこの大きさで、この建物はこのように……。
ペンが止まりません。
そして、ペンが止まりました。
「お嬢ちゃん、その大きさでいいんです?」
「ええ。この設計図通りにお願い致します」
そう言い、私は金貨の入った袋を渡す。
ですが、断られてしまいました。
「いや、もう代金は領主様から頂いているんだ。お嬢ちゃんが来てから一層明るくなられて俺らうれしいのさ」
「そうなのですの?」
「前まではどこか気丈に振舞っていた感じだった。前の領主……自分の父親が亡くなったんだ、だったら支えるってのが領民よ」
マドレーヌ。
あなた、良い方々に慕われていますわね。
少しだけ、羨ましいですわ。
――ナロウ歴1785年 4月8日
アンネ・ビジソワーズの農場建設開始、同年12日に工事が終わる。
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