全ての道は1つに通じてましてよ?
私の流した噂は徐々に広まっているようです。
噂の広がりは同時にそこに住まう民の情報力にも通じますわ。
つまりは、下からでも上からでも伝わりやすいならばある意味で使えます。
変な噂でも信じたりするのかしら。
「おい、アンネ。領土の一部を売るだって?どこにあるんだよそれ」
「さあ。どこでしょうね」
「ふ。分っているでありますよ。アンネ殿」
おっと。ラファイエットさんはもう理解したみたいです。
軍人という事もありますけど、彼女は見抜くという事に関しては相当な様ですわ。
意外と侮れませんことよ。
「お嬢様でしたか、あの話は。冷や冷やしました」
「シャルごめんなさいね、あなたにも伝えておくべきでした」
「お気になさらず。今、お入れしますね」
マドレーヌはそれが一瞬表情を変えました。
おお。理解したのですわね。
そして、彼女は御付きのものを呼ぶと耳打ちをしました。
これあまりロクなモノではないですわね。
「従者さん。少しよろしくて?」
「は、はい」
「何か言われまして?教えてくださいます?」
「あの、その」
「大丈夫ですわ。マドレーヌには秘密にしますから」
さて、話した内容と言うのは実際に土地を用意すると言うもの。
なにそれすごくすごく面白そうじゃないですの。
そんな事私に直接言ってくださればよいのに!
マドレーヌは普段ツンツンしてますけど、デレデレになる時がありますわね。
ツンツンデレデレですわ。
略してツンデレ。
そんなことを思いながら書類の山を整理する。
色々と見ると、成長している事や自分たちがしてきたことが反映されているのは、見ていて気持ちの良いものですわ。
あら、この書類少し違和感。あとで教えてましょう。
「良いですわね。ふふふ。御下がりになってもよろしくて」
「し、失礼します!」
慌てて帰らなくてもよろしいのに。
お茶でもお誘いしたかったですわ。
仕方ありません。
その場所へ向かいましょう。
その前にマドレーヌにそれとなく探りでも入れましょう。
ちょっとしたサプライズですわ。
「マドレーヌ、私の噂を真に受けまして?」
「そんなんじゃないよ。けど真実味がある方が良いって思ってさ」
「すぐに用意が出来ますの?」
「元々私が持っている土地だからな。今は使ってない」
「では、その土地はどうするおつもり?」
「お前さんを哀れと思った私が寄付したって事にしてある」
どうやら、かなり持っているようです。
まあ、領主ですからそうですわよね。
「ところでご友人から何かありまして?」
「あるよ。幸いカルディナル内に居るんだとよ」
「そうでしたのね。適当に出たところを捕まえましょうか」
「分かった。そう伝えておく」
「大丈夫ですわ。ラファと共に捕まえますので」
「お前なあ、少しは私の事を」
「良いことを教えますわ。輸出と輸入の項目をよく見ておいてくださいませ」
そう言い、私はラファと共にカルディナルへ向かう。
馬で風を切るのはとても気分が良いですわね。
「そうですかい。こいつが姉御が良く話題にするそのラファイエットさんです?あっしはここの主、フランセーズ・サントノーレと申しやす」
「自分の名はラファイエット・リビエールと言います!よろしくお願いいたします!フランセーズ・サントノーレ殿!」
「いきなりでごめんなさいね。フランさんがスパイを見つけて下さったとお伺いしまして、助っ人を呼びましたの」
じい、とラファを見つめる。
表情が若干硬くなるのはわかりますわ。
「お茶にしませんこと?親睦も含めて如何でしょう」
「良いのですか?今捕まえなければ脅威が」
「ラファ。時には休むのも仕事でしてよ。でもあなたのその真面目さは好きですわ」
少し顔が赤くなっていますわね。
ふふ、照れた顔始めて見ましたわ。
まるで少女ですわね。
「さて、スパイはどこかしら?」
「ああ、それなら今見つけやした。おい」
扉が開けられ、数人が縄で巻かれた状態で入ってきました。
まあ、多いですわね。
何があったか楽しみですわ。
「た、助けてくれ……」
「ここは自分に任せるであります」
そう言い、ツカツカカツカツと一人一人を見ていきます。
そして。
リーダーなのでしょうか。
その者をまるでコップに紅茶を入れるような動作で鳩尾に拳を入れました。
「ぁう……」
「貴様、誰に言われた?」
「ま、マリーの使いって奴だ……許してくれぇ!」
「嘘は言ってないな?」
そう男の方が強く何度もうなずく。
あっさりこう、自白されてしまうと面白くないですわね。
ですけど、これでマリーが関わっていることは解かりました。
今は彼らを帰しましょう。
ですが。
「フランさん、ここで人を一人。お引越しさせることは可能かしら?」
「出来なくもありやせん。しますかい?」
「お願いね。ラファ、もうよろしくてよ」
――ナロウ歴1785年 4月5日
マリー・べキュー・バリー、アンネ・ビジソワーズに対する偽情報流布に対して、スパイを送り込むも、失敗に終わる。
後にカルディナル事件と呼ばれる。
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