情報こそ武器になりましてよ?

 カルディナルへ入ると、昼間と言うのにかなり賑わっていました。

カフェやレストラン、酒場も営業していました。

時折、手を引こうとする方も居ますわね。

きっと娼婦の方々でしょう。

ところどころ戦果の跡は見られましたが、それでもいつもの生活をしているのです。

私より逞しいですわ。



「ここも晒されましたのね」

「そうでさあ。避難民を受け入れてたんでね。さすがに戦争や魔物に襲われた時くれえは開けないと人としていけねえですので」



 そうですのね。

まあ、それで娼婦や男娼も昼間から居ましたのね。

ちなみに、私は男娼の方から熱い目線を向けられました。

そこまで魅力的なのでしょうか。



「お嬢様、それは物珍しさから見られているからです」

「知ってましてよ」



 ええ。知っていましたよ。

娼婦の方と言うより、全員が私たちに視線をくださいましたし。

屋敷へ到着すると、そこにも別の門がありました。

屋敷の中に屋敷がある。

変な感覚ですわ。

そこに入ると、大きく雰囲気が変わりました。

喧騒から静かな森へと入った様な、空気。

屋敷の周囲には彼女の私兵と思われる者たちが巡回をしていました。



「フランセーズ様!本日も異常なしです!」



 剣を携えた歴戦の男が彼女に敬礼をする。

まさに王に似ています。

そんなことを考えていると、彼女の執政する部屋へと到着。



「それで、例の事でやす?」

「ああ。頼むよ」



 そう言い、フランは部下を呼んで関連する書類を集めるように命じる。

そして5分も経たないうちに書類の山が置かれる。

私がそれを触れようとすると、手を止められる。



「お客人。自分の仕事ですので」

「ざっくりで良い。後はあっしらがやる」



 そう言うと、本当に山をざっくりと3つほど分け、そのまま部屋を出る。

それをマドレーヌは何枚か手に取ると私にこう言う。



「アンネ。左のが産業で右が財務関連。真ん中が国の現状だな」

「マドレーヌの姉御は流石でさあ」



 

 早速見る。この書類は実際の物に近いと考えていいだろう。

マドレーヌの手元にも届くが時折計算が微妙に違っていたりとしているのだ。

まずは産業。農業は黒字、輸出品は好評との事。

御用達という事もあり、内外問わず貴族の中でも広がっている様です。

大きく『オルレアンのチーズ』と銘を打っています。

御用達はやや小さめの丸い枠内に書かれているだけですわ。

それ以外はやや厳しい。

特に剣や防具の元である鉄。

それが不足している。

これは別のを見てからにしましょう。



「酒はどうですの?ワインやビールを作れまして?」

「税がキツいんでさあ。密輸も考えましたがね」

「おいおい。そんな事しなくても私がやるってのに」

「いやあ、ジョセフの親父にアンタの事頼まれているんで辞めてくだせえ」



 財務表を見るに、マドレーヌで見たものと同じ。

しかし、彼女の計算が違った理由もわかった。

虚偽報告をしていたのだ。

だが、そんなことはどうでも良い。

今は、疑問が解ければ問題なし。

そして、最後。

この国の現状。

増税による負担は国を確実に蝕んでおり、軍事関連の予算も流用しているそうだ。

しかも、王宮内では細かなどうでも良い事をするだけの者を高額で雇っている。

これではいくらあっても足りませんわ。



「フランさん。税を納められない理由は何故です?」



 そう尋ねますと、こう答えてくださいました。

「スパイがいる」と。

その調査のために多額の費用を使っているそうです。

さて。どうあぶりだしましょう。

チーズでも置いておこうかしら。



――ナロウ歴1785年 3月24日

屋敷内にて産業等について会合。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る