自領を見るのも大切ですわ
「領地を見に行く?」
「やはり自身の目で見なければ何も解決しません。
実際に効果があったのか。そこから新たな問題が出ていないか。それを見るのも目的です」
マドレーヌが書類作業を終え、一息ついています。
私も手伝いました。
居候よりも完璧お嬢様の方がカッコがつきますから。
それに、実際に見なければ何も分からない。
中には机上の空論と化したものもありましてよ。
「戦火から立ち直ろうとしているんです。それに急に進め過ぎたことはその……申し訳ありません」
「気にしないでくれよ。私だけじゃどうにもならなかったんだ。むしろ助かっていると思うさ」
それだと良いのですが。
良い言葉よりも悪い言葉が世の中にはかなり多いそう。
もしかすると罵声を彼女が浴びるかもしれません。
その時は悪役令嬢よろしく逸らしてみせますわ。
一度やってみたかったですし。
きっと役者も真っ青の演技をお見せできますわ!
「それじゃ行ってきてくれ。私は別の仕事があるからな」
「あなたも一緒に行きますわ。拒否権はありません」
「おい!だから私は」
「マドレーヌ様。無駄ですよ。そうなったお嬢様は私にも止められませんから」
さて。マドレーヌ。
その地でしっかりと見なさい。
あなたがした全てを!
それを見てどう思うかは自由。
さあ!共に!
「ああもう!分かったよ!それが終わったら見に行く予定だったけど!」
かくして、領地見学ツアーとなった訳です。
私ったらやはり天才では?
さて、オルレアン領のとある農村にマドレーヌと私は今居ます。
トウモロコシやジャガイモはありますが、コメは難航していますわね。
育て慣れているものの方が良いのでしょう。
しっかりと青々と大切に育てられているようです。
「おや?お嬢ちゃんどこから来ただ?」
第一農民発見です。お爺さんです。
見つかったけど関係ないですわ。
実情を聞くチャンス!
「少しそこまでです。このトウモロコシ、皆様は食べられまして?」
「ああ。領主様が食べられたからだあな。最初は抵抗あったけんども、美味しそうに食べられちゃあオラ達も食べたくなるだよ」
「領主に対して言いたい事はありまして?」
「ハハ。お嬢ちゃん面白いだあよ。そうだなあ、いい加減小麦を沢山使ったのパンが食べたいだ」
それでは特別ゲストをお呼び致しましょう!
ダララ……ジャン!
「や、やあ」
「りょ、領主様!?なしてここに!?」
「どうなのかなって見に来たんだ。パンに使う小麦は済まない!もう少しだけ待っててくれないか?」
「構わないだよ。大麦もあるし、それにコメ?もある。難しくて中々育たないだ」
マドレーヌはかなり慕われていて、ジョセフ様の偉光だけで評価されていない事を改めて確認できました。
じゃないと、あそこまで広がりませんわよね。
お爺さんは見知らぬ私に茹でたトウモロコシを下さいました。
もちろん、茹でる以外として粉にしてパンにする方法も教えありますから抜かりは無いですわ。
「コメが育たない?でしたら、まずは田んぼ……つまりコメを育てる畑ですわ。それを足を使って耕すのです。
「お嬢ちゃん詳しいだな。分かっただよ」
さり気ないアドバイスはナロー系で鉄板!
マドレーヌの株が大上がりですわ!
「いやあ、感謝される日が来るなんてな。よし!このまま領内見てくか。色々わかる気がするからな。そん時は、よろしく頼んだぜアンネ!」
「あら、私はあなたのお付きなので全てあなたがするのでして?」
「助言が無きゃ、ここまで慕われてないさ」
マドレーヌ。
それはあなたの素の実力ですわ。
私はそれを可視化しただけ。
全く。愚かな領主ですこと。
──ナロウ歴1785年 3月15日
平等公が領内をアンネ・ビシソワーズと共に視察する。
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