喧嘩する程仲が良いって本当ですのね

「自分の名はラファイエット・リビエールと言います!諸先輩方、ご指導ご鞭撻よろしくであります!」



採用を通達して、2日後。

彼女の紹介も兼ねての挨拶。

お茶会の準備はOK。

硬いなあ。



「私はここの領主で、マドレーヌ・オルレアンって言うんだ。よろしくなラファイエット」

「よろしくです!マドレーヌ殿!」



握手を交わす姿はとても素敵な光景ですわね。

彼女からは真っ直ぐで混じり気のないものを感じます。

ルイ様もご友人方とこのような光景があった事を思い出しました。

今忘却しましたけどね。

雰囲気も良いです。

面白いものが見られないのは残念ですが、これも良くってよ。




「皆さん。ここはお茶にしてもっと親睦をはかりましょう。シャル、用意をお願い」

「かしこまりました」



早速お茶会の用意が整いました。

さて、このまま衝突もしながらも仲良くなって下さいまし。

その方が私が助かります。

手網を握って制御するのはマドレーヌ、あなたです。

領主は基本的に執事的なポジションの方がいた方が進めやすい。

私にシャルが居るように。

おや。

早速歓談とは。

このまま私を楽にして下さるのかしら。



「嫌だ。そもそもお前はどうしてこう、キッチリしてるんだ!それじゃあ誰も得しないだろう!?」

「何故マドレーヌ殿は分からないのですか!それでは何もかも無くなってしまう!」



え?何これ。

私が微笑ましくお茶を飲みながら見ていると、いつの間にか面白い事になっているではありませんか。



「シャル、これはどういう状況?」

「民を徴兵するか否かと言う話です」



徴兵。

難しい問題ですわね。

志願兵はやる気があって自ら学ぶ気もある良いお方が多い方。悪く言えば安定志向ですわね。

徴兵は民を騎士団に置いてから、最低限戦える様にする方。バラツキや基準など細かな事を決めなければいけません。



「ラファ。では冒険者や傭兵を一時的に雇うのはいかがでしょうか。彼らは訓練が無くとも即座に戦えます」

「冒険者や傭兵は金を無心する者が多く、略奪もする輩もあります。自分としては信用出来ないに等しいであります。やはり!徴兵し、訓練し、そしていざとなれば自らの領地を守る!これこそが戦争の本懐であります!」

「ハッ、これだから戦場しか知らない奴は。そもそも戦争なんて徴兵するよりも騎士様に任せれば良いんだ。戦闘に慣れたのに任せて領民は火の届かない所に終わるまで避難させておけば良いのさ」



ククク。

甘い。

2人とも甘過ぎる。

この砂糖たっぷりなケーキよりも甘い。



「良くて?まず自ら戦うという事はラファに同意します」

「おお!流石アンネ殿!」

「けど、それは攻める時も攻められた時も同じです。兵が足りなければ民と言いましたけど、そもそも民を危険に晒すなんて言語道断」

「ほらな?やっぱアンネの言う通りじゃないか」

「ですが、場合によっては徴兵をせねばいけませんね。一定の基準をもって採用する。その後に調練すれば良くってよ」



王国の騎士団は軍記を守りますけど、あまり徹底していません。だから強盗騎士なるものが出てしまうのです。

グレーですが、そもそも正規の騎士がするとは恥ずかしいとは思わないのかしら?



「さて。私は領民が傷つくのは嫌です。無論、騎士の皆様も同じ私たちの民……その時は冒険者や傭兵を真っ先に雇い入れましょう」

「なっ!?アンネ殿!?」

「大丈夫です。彼らはあくまで正規ではありませんわ。それにこちら側に不利になる事をすれば、当然報奨は理解しているはずでして?」



それに冒険者や傭兵は非正規扱い。

つまり

捕虜になろうと関係ない。

これ程良い事があるのでしょうか。

それに正規兵の犠牲を減らせますから正に一石二鳥ですわ!



「それよりも、騎士団を2つに分けます。治安維持と軍事の部門です」

「分けるのか?それなら一緒の方が効率が良いと思うんだけど」

「確かに専門の騎士が居ると役割が分かりやすいでありますな」

「でしょう?でも軍事も治安維持も同じですが、加減は間違えない様に頼みますわ」

「了解であります!」



──ナロウ歴1785年 3月12日

オルレアン領にて、騎士団を治安維持部隊と軍事部隊と役割を分ける事を発布。

騎士団の基本として志願制とし、徴兵制は戦時下か同様の事態が起きた事と定める。

治安維持部隊は後に『警察』と名を改められる。

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