やはり、『しょく』がなければ何も成り立ちませんわ!

コメやトウモロコシが徐々に広がり始め、飢える者も少なくなりました。

騎士の皆様は若干多めに見繕っています。

魔物とか野盗に襲われて台無し、なんて嫌ですもの。

やはり、飢えは魔物や魔王以上に厄介ですわね。

魔王。それは魔物を使役している方。

組織的だと思われる動きや生態系を無視した動きは大抵この方々のせいです。

捕まえたら報奨金が出ましてよ。

私より工夫されているとは、正に向上心の塊でしてよ!

無論、作物は私たちが買取り、領地の経済を回すのが最優先。

それがもっと大きくなれば、国は救われます。

税を大きくする事もありますが、それはもっと国が豊かになってから。

その前に1年どころか半世紀先の事を見据えるのが執政する者の勤め。

ですが、農業だけではどうにも行かないもの。

様々な方が居て、初めて『生活』が出来まして。

ですが、困りました。



「現在、この領内では以前と比べて落ち着いていますが、やはり強盗など様々な事件が発生している様です」

「騎士の皆様方が居るのでは?」

「居るには居ますが、追いついておらずどうしたものかと」



そんなの簡単よ!新たに雇えば良いじゃない!


なんて、言えたら良いのですが。

財務表を見ると火の車です。

このまま雇い入れてもその方の為にもなりません。

さて。どうしたものか。

働いたらそれ相応の褒美を与える。

常識です。



「こうなったら、私の財産を売ってでもかき集めないと」

「その必要は無いぞ。多少私が無理すれば行けなくもない」

「では、新たに雇い入れましょう。近頃では強盗騎士もいる様ですから」

「野盗を雇うってか」



それはギャクかしらマドレーヌ?

だとしたら面白いですわ。



「ええ。集団ごと。もちろん、条件はつけるわ」

「それでアンネ、どんな条件だ?」

「シャルに勝てたら雇い入れます。文句は受け付けません」

「強いのか、そいつ」

「これでも格闘術はすべて使えます」



さすがシャル。略してさすシャル。

大流行り間違いなしです。

シャルとほぼ同等の力がある方なら、心配はほぼ無いですわ。



「それで条件は?」

「私を守りながら戦う事、なんてどうでしょう」

「それはいけません!お体に傷をつけるなんてそんな!」

「大丈夫でしてよ。それにあなた、強いでしょう」



シャル程強い方を私は見たことがない。

騎士団の精鋭たちの腕をへし折る事はもちろん、野盗の類いに関してはほぼ斃している。

私より身体能力は遥かに上です。

すごく強い私の幼なじみだ。



「分かったよ。なら募集かけるか。条件はあります?」

「領民と私達のことが好きな事。身分は問わないわ」

「そのまま書けば良いんだな?」

「ええ。お願い」



さらりさらりとペンを進める。

所作も綺麗だ。

そして、条件を一言一句間違っていないかを確認すると、それを数枚作って領内のあちこちに張り出す。

後は待つだけ。



そこから数日が経ちました。

やれ、自称「最強の騎士」だの「最大勢力の盗賊の長」だの「街最強の喧嘩屋」だの多くの方々が来ました。

まあ、戦力を測る目的でシャルと戦わせました。

残念ながら、多くの方々は勝てませんでしたが。

ですが、その中でも目を見張る方がいました。

ラファイエット・リビエール。

彼女は生真面目が表に出てきている。

話して分かったが、私とほぼ同じ考えをしていた。

何よりも経歴が凄い。

なんでも王国と新大陸とを渡り歩いている。

戦績も華やか。

勲章はすべて本物。

家督を継ぐだけはある。



「自分は政には手を出さぬと誓っています」

「それはどうしてかしら?まさか、政治は貴族様の仕事と考えての事?」

「いえ。自分は父や母よりも世渡りが下手でして、宮廷内で籠るよりも戦場に出て、戦う方が性に合っていると考えているのであります」

「ふむ、では王国と新大陸。あなたはどちらが大事です?」

「民です」


言い切った。

だが、これは危ない。

御しやすくもあるが、その分私たちにも向けられかねない。

どうやって手網を握るかがカギか。



「何故?」

「私は諸島連合に父を母を殺されました。ですが、復讐はある程度果たしました。今度は民に尽くす番です!」



あ、熱い。

熱いな。うん、熱い。

けれど、軍事に関することは本物。

まさに経歴通り。



「では、お給料はどのく─」

「必要ありません。この戦争が終わったら改めて下されば」

「それは無し。無かったら暮らしていけないわ。いい?そんなことここでも他所でも言ってはダメ。足元見られるわ」

「う……で、ですが!」

「はい、終わりです。また連絡するわ」



そう言うと、彼女は極度に緊張した様子で出ていく。

うん、そうだよね。



「お嬢様、どうしましょう?見送りですか?」

「シャル。あれ程面白い人材居ないわ。ここで逃しておくと損よ。それに」

「それに?」

「彼女、私たちに通じる所があるわ」



後、彼女は御しやすいし。

それと何となく、マドレーヌと気が合いそうですわ。

面白そうが本心ですけどね。




──ナロウ歴1785年 3月11日

軍事担当として『両英雄』ラファイエット・リビエールが加わる。

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