目の前にあるこの景色、現実でしてよ?
「はぁ!?なんでだよ!」
怒るのもご最も。
家畜用の餌なんて誰も食べたくないでしょうし。
しかし、麦もなく、大麦も少ない。
そうであれば、痩せていても育つものを。
知識をフル動員して出した結論です。
ジャガイモもありますけど、連作障害になっては困ります。
「抵抗があるのは分かります。けど、多く残っているのがトウモロコシ等の飼料……これを食べずどうすると?」
「けど家畜の餌だぞ!?私たちは牛や豚じゃない!」
「では、このまま飢えて死にますか?それも悪くなりませんわね」
マドレーヌさん、凄く葛藤してますね。
仕方ありません。
飢えて死ぬか尊厳を持って死ぬか。
ここで私の体験をひとつまみ。
「一度、トウモロコシを食べた事があります。生とはいきませんが、茹でれば食べられましてよ。無論、私も食べますわ」
おお。マドレーヌさんが僅かに、僅かにご興味をお持ちになりかけてますね。
ふふ。私はそこから一気に畳み掛けます!
さあ!
このまま落ちなさい……。
「……一度、一度だけ食べてみよう。まさか家畜と同じものを食べるなんてな」
「お嬢様、私も一度食べても宜しいでしょうか」
シャルが乗ってきた!?
これは意外かも。
ここは私の腕の見せ所ですね。
私の料理、と言っても茹でるだけだけど。
火と塩加減さえ間違えなければ問題は無い。
「ここに塩はありまして?」
「沢山あるよ。毎日塩と週に一度少量の野菜を入れて贅沢してるけど」
「それより少し素敵になるかも」
鍋を拝借して、水を入れる。
さあ、そこにトウモロコシを入れます。
そこに塩をひとつまみ。
……少々入れすぎた気もしますけど、大丈夫でしょう。
火をつけて、しばらく待つと煮えてくる。
いい匂いだ。
「お上がりになられましてよ!」
皿に乗せられた茹でられたトウモロコシ。
うん!美味しい!
いい塩加減と瑞々しさがたまらなく良くってよ!
しかし、シャルもマドレーヌも食べようともしていません。
おっかなびっくり、と言ったところでしょうか。
なんて思っていたら、口に入れました。
最初に行動する者から着いていくのが私に課せられた一つの使命ですわ。
「アンネ!家畜の餌とは思えないくらい美味いな!」
「お嬢様は変になった訳では無いと信じていました」
シャルが今聞き捨てならない事を言いましたが、聞かなかった事にしましょう。
それよりも、マドレーヌさん。泣くほど美味しくて良かったです。
それもあり、茹でたトウモロコシは当初より多く消費されました。
お腹が満たされてたようで。
「さて。簡単なお話を。マドレーヌさん。まずトウモロコシを領民の皆様に。あなたを通してなら私より信じますから」
「ああ!なあ、他にも有るか?」
「ジャガイモもありますが、連作障害……同じ作物を育ててしまうと害が出てしまいます。ですから、あまり使われていない畑か肥料を新しく入れる事を伝えて下さるかしら」
「分かったよ」
早速行動しています。
きっとこれが彼女の魅力のひとつですわね。
後は農地も解決しましたが、トウモロコシやジャガイモだけでは偏ってしまう……。
何かパンに変わる様な何かが有れば良いのですが。
そう言えば、コメなるものが西の国にありましたね。
なんでも、それを使った料理がありました。
私の国にもありますが、化粧にしか使っていませんでした。
間違って口に入ってしまった時、ほのかに美味しかったのは内緒です。
そこから宮廷のシェフに内緒で作らせました。
幸い、世界各国の料理を網羅していると自称していまだけの事はありました。
また彼女の料理が食べたいですね。今は無理ですが。もし、私の元に来たら財産の半分を出してても雇いましょう。
何でも手間はかかるものの、腹持ちが良い。
ならば、次は。
「コメを出しましょう。調理は茹でたトウモロコシと同じでしてよ!」
「お嬢様!?コメは化粧品の原料ですよ!?」
「食べれましてよ!さあ!」
早速この素晴らしきアイデアをマドレーヌに伝えましょう!
彼女も目を輝かせるに決まってます!
幸い、栽培方法から収穫までを適当な紙に書き起す。
「マドレーヌ!コメを今度は広げましょう!さっきのトウモロコシと同じ方法で出来ましてよ!そうそう、栽培方法はこの紙にあります」
「おいおい勘弁してくれよー……」
トウモロコシとコメが食用として広がれば、後は小麦や他のものが枯れても代用として使えますわ。
そのうちそれにあった料理法が必ず出てくる。
きっと私よりもやって下さるはず。
そう!
小麦でパンを作るより、お菓子や他の用途で使われるものに目を向ければ良いのです!
「パンが無ければお菓子を食べれば良いのだわ!」
「お嬢様、それを外で言うのは辞めてくださいね」
「え?いい言葉じゃない」
「場合によっては煽ってますよ」
「じゃあ辞めておくわ」
──ナロウ歴1785年 3月6日
オルレアン領にてトウモロコシと米が食用として見出され、飢饉を救う。
これにより、飼料の一部を食料とする動きが地方に見られ始める。
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