第5話彼女の最後の喧嘩


:まゆがメッセージを送信しました


まゆ:りょーま!


涼真:まゆ、発作は良くなったの?


まゆ:今のところは大丈夫かな?ごめんね心配かけて


涼真:いいんだよ


まゆ:今日も病院来てくれるよね?


涼真:まあ、行ってもいいよ


まゆ:素直じゃないねー




涼真:………はあ


0:涼真はまゆの病室のドアを開ける


まゆ:涼真ー!おっはよー!


涼真:相変わらず元気だね


まゆ:1日を大切にだよー!


涼真:………


まゆ:ねえ、涼真、テストどうだったの?


涼真:1位だったよ


まゆ:すっごいねー!


涼真:…………


まゆ:ありがとうって言わなきゃ


涼真:ありがと


まゆ:なーに怒ってんの?


涼真:怒ってない、心配してるんだ


まゆ:どうして?


涼真:なんか、君が遠くにいる気がして


まゆ:……なにそれ


涼真:教えてよ、まゆの体は今どうなってるの?


涼真:そういえばおかしいじゃないか、外出許可も出ないし、家族とか彼氏と居ろって言われるなんて


涼真:まゆは……もう死ぬの?


まゆ:……うん


涼真:………どうして


まゆ:ターミナルって知ってる?


涼真:……ターミナル?


まゆ:うん。亡くなる準備をするってこと


涼真:………まゆのことか?


まゆ:そうだよ


涼真:……嘘だろ


まゆ:ほんとだよ。もうその準備をしてるの


涼真:いくらなんでも急すぎる


まゆ:私の病気はいつも急だよ


まゆ:もうそろそろだけど、私はいつか死ぬの


涼真:……まゆが死ぬなんて…言わないでくれよ




まゆ:な、なんで涼真が泣くの?私が死ぬことはわかってたことでしょ?


涼真:わかってるけど…受け入れられないだろ


まゆ:だとしても泣かないでよ


涼真:俺がまゆに出会って、どんな思いでこの病室に来てるかわかる?


まゆ:……なに?


涼真:君の笑顔が、君の声が、君の明るさが、俺を元気づけてくれたんだよ


涼真:そんなまゆが死ぬなんて……言うなよ


まゆ:……でもね、どう頑張っても私は生きられないよ


涼真:……なら君に会わなきゃよかった


まゆ:……え?


涼真:後悔しか残らないよ。俺はずっと君と居たいのに、一緒に居られないなんて


まゆ:どうしてそんなこと言うの?


涼真:だって!俺は……


涼真:いや、何でもない


まゆ:……謝ってよ


涼真:……何を?


まゆ:私に会わなきゃよかったなんて言わないでよ!


まゆ:私は涼真に会えて……こんなに嬉しいのに、なんでそんなこと言うの?


涼真:………だってそうだろ。俺は何も出来ないんだから


まゆ:別に何かして欲しいわけじゃないよ


涼真:それじゃダメだよ。いっそ、俺だってまゆと同じ病気になって同じ気持ちになってみたかった


まゆ:……私の気持ちわかってないじゃん。勝手なこと言わないでよ!


涼真:……まゆ


まゆ:涼真は今すぐ死んでって言われてもどうせ死ねないでしょ?


涼真:………


まゆ:私の病気は…生きたくても生きられない人が沢山いるの。それなのに何でそんなこと言うの!?ひどいよ!


涼真:………ごめん


まゆ:……私の気持ち…ちゃんと考えて


涼真:でも、俺の気持ちもわかってくれ


まゆ:………え?


涼真:まゆに会えて嬉しいからこそ、そう思ってしまうんだ。悲しいんだよ


まゆ:………涼真


涼真:何か俺に出来ることはないかっていつも思うんだ。でも答えは見つからない


涼真:君に出会えて嬉しいのに、君と話して、距離は段々と近づいていくのに、君は遠くに行ってしまう


涼真:このやるせない気持ちを…まゆにもわかってほしいんだ


まゆ:………そっか。そうだよね


まゆ:もしかしたら、私なんかより涼真の方が辛いのかもね


涼真:……まゆと比べたら、俺は生きられるから幸せだよ


まゆ:その気持ち、忘れないでね?


涼真:え?


まゆ:生きてるだけで幸せだって気持ちだよ


涼真:………うん


涼真:この気持ちも、まゆと一緒に居たからそう思えたのかもしれないね


まゆ:……ありがと


まゆ:仲直りの写真撮ろ!


涼真:わかったよ




まゆ:ねえ、涼真。私が死んだらやっぱ悲しい?


涼真:当たり前だろ


まゆ:そっか。なんか嬉しい


涼真:何回も言わないからな?


まゆ:涼真


涼真:……ん?


まゆ:ハグする?


涼真:……俺はそんな手には乗らないぞ


まゆ:じゃないと、私、遠くに行っちゃうかもしれないよ?


涼真:………


0:涼真はまゆを抱きしめる


まゆ:……あったかいね


涼真:……そうだな


まゆ:この温かさは忘れたくないなー


まゆ:こんな時にこんなこと言っていいかわかんないけどさ


まゆ:私ね……


涼真:………ん?


まゆ:……涼真と…


まゆ:…………っ!!


涼真:ま、まゆ!?


まゆ:………はあ、はあ。……っ!!


涼真:待って!まゆ!今ナースコール押すから


まゆ:…はあ…はあ…ごめん涼真


涼真:こんな時に謝らないでよ


まゆ:……違う、そうじゃなくてさ


涼真:………え?


まゆ:私……本当に死ぬかも


涼真:……まゆ!?


0:いつもと違う発作が起こる


0:そしてまゆの緊急手術が行われた


:6話に続く

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