第6話彼女の最後の言葉
:まゆがメッセージを送信しました
まゆ:ねえ、涼真
涼真:まゆ、無事だったの?
涼真:二日も連絡来なかったから心配したぞ
まゆ:ごめんね、心配かけちゃった
まゆ:ねえ涼真
涼真:何?
まゆ:会いたい
0:涼真はまゆの病室に向かう
涼真:まゆ?
まゆ:………
涼真:……まゆ!?
まゆ:………すぅー……すぅー
涼真:な、なんだ、寝てたのか
涼真:……まゆ
涼真:………うぅ、まゆ……
涼真:お願いだよ…死なないでくれ……
まゆ:なんで泣いてんの?
涼真:っ!
涼真:ね、寝たフリなんて卑怯だ!
まゆ:なんでそっぽ向いちゃうの?こっち向いてよ
涼真:いやだね
まゆ:もう、しょうがないなー
0:まゆは後ろから涼真を抱きしめる
涼真:……またハグかよ
まゆ:嬉しいでしょ?
涼真:からかうなって
まゆ:でもね、今回はハグじゃないよ
涼真:……?
まゆ:聞こえる?私の心臓の音
涼真:……うん、少しだけ
まゆ:私、この心臓が大嫌いだったんだ
涼真:そりゃそうだよな
まゆ:気まぐれに発作が来るし、学校にも行けないし、夜も眠れないし
まゆ:いっそ、死んじゃおっかなって思ったこともあるよ
涼真:………
まゆ:でも、私は生きてる。この心臓と一緒にまだ生きてる
まゆ:この心臓は、私が涼真と出会うために動き続けてくれたんだよ
涼真:………まゆ
涼真:………うっ…うぅぅ。ありがとう
まゆ:よく言えました
まゆ:涼真に会えて私は幸せだよ
涼真:まゆがそう言ってくれるなら、俺だって同じ気持ちだよ
涼真:幸せだ
まゆ:………うん
涼真:まゆが俺を海に連れ出した時、走る無邪気なまゆが眩しかった
涼真:まゆの髪が柔らかく揺れる様子も振り返るその笑顔も、キンと高い声も優しそうな眼差しも
涼真:俺はまゆとの思い出を絶対に忘れないよ。大切な思い出だ
まゆ:………涼真
まゆ:涼真のその言葉が私の人生を幸せにしてくれる
まゆ:生まれてきてよかったって何度も思わせてくれるの思わせてくれるの
涼真:……ありがとう
まゆ:もう涼真は人に感謝出来る人だね
涼真:これもきっとまゆと過ごして、まゆに教えてもらったからだよ
まゆ:……ありがと…グスン
涼真:まゆ、泣いてるの?
まゆ:……私は涼真みたいに泣き虫じゃないから!泣いてないもん
涼真:じゃあ今すぐ離れて顔見せてよ
まゆ:やだよ、離れたくない
涼真:………
まゆ:あ、今、涼真、顔赤くなってるでしょ?
涼真:な、なってない!
まゆ:じゃあ顔見せてよ
0:涼真とまゆは顔を合わせる
涼真:………ふふっ
まゆ:あははっ
涼真:泣いてるじゃん
まゆ:涼真だって顔赤くなってるじゃん
涼真:うるさいなぁ
まゆ:うるさくないよー
涼真:……ふふっ
まゆ:………あははっ
涼真:……こんな時間がずっと続けばいいのにな
まゆ:そんなこと言われたら私、嬉しすぎて今すぐに死んじゃうかも
涼真:そんな事言うなよ
まゆ:冗談だよ。私はまだ死なないもん
涼真:まゆが居なくなっても俺はまゆみたいに笑顔で居続けたい
まゆ:……ううん。涼真はもうずっと笑顔で居てくれたじゃん
涼真:………え?
まゆ:私にはわかるよ
涼真:どういうこと?
まゆ:それはまた明日教えるね
涼真:……じゃあ、明日も会える?
まゆ:うん、私も会いたい
涼真:じゃあ、また明日ね
まゆ:うん。ばいばい
0:涼真は病室を出る
まゆ:……はあ……はあ
まゆ:……私は涼真の心の中に居るよ
まゆ:……さよなら
0:この言葉を残したまゆが帰らぬ人になった
0:その連絡が来たのは涼真がまゆの彼氏だと思ってるまゆの担当の先生からだった
0:心臓病が悪化し、まゆはその場で亡くなったのだった
:新着のメッセージはありません
涼真:なんでだよ
涼真:また明日って言ったじゃねーかよ
涼真:ふざけんなよ!まゆ!!
涼真:俺は・・・君のそばでもっと笑いたかった
涼真:君に笑顔でありがとうって言えばよかった
涼真:もう一度君に・・・気持ちを伝えればよかった
涼真:いつも元気な君が居たから当たり前だと思っていた
涼真:君に甘えすぎていたのかもしれない
涼真:もう一度会えると思っていたのかもしれない
涼真:いつも彼女は言っていたはず、いつ死ぬかわからないって
涼真:彼女の涙で気付けなかった俺はバカだ
涼真:まゆの声が、まゆの笑顔が・・・今はたまらなく愛おしい
涼真:もう一度会いたいよ・・・まゆ
:まゆが動画を送信しました
涼真:・・・え!?
涼真:な、なんで?まゆは亡くなったはずじゃ
0:恐る恐る涼真は送られた動画を開く
:7話に続く
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