第4話彼女の最初の涙


:まゆがメッセージを送信しました


まゆ:涼真!


涼真:まゆ?昨日は大丈夫だったの?


まゆ:大丈夫だって言ったじゃん


涼真:ならよかったよ


まゆ:涼真に伝え忘れてた事があった。病院きて


涼真:ラインで言えばいいだろ?


まゆ:直接言いたいの。早く来て


涼真:はあ。わかったよ




0:病室に入る


涼真:まゆ?


まゆ:おー!おはよー涼真


涼真:なんだ。元気そうじゃん


まゆ:だから大丈夫だって言ったでしょ?


まゆ:もしかして心配してくれたの?優しいねー!


涼真:からかわないでもらえるかな?本当に心配したんだぞ?


まゆ:はいはい、ありがとう。写真撮ろ?


涼真:毎回撮るの!?


まゆ:いいでしょ?減るもんじゃないし


涼真:ほんとにわがままな人だ


涼真:んで?俺に言いたいことって何?


まゆ:あーそうだった


まゆ:んふふ。なんだと思うー?


涼真:も、もったいぶらずに言ってよ


まゆ:私さ、涼真のこと……


涼真:……


まゆ:死ぬまで迷惑かけようかなーって思ったのー!


涼真:………





涼真:………君が死んだら地獄行きだよ


まゆ:なにー?告白かと思ったー?んなわけないじゃん!


涼真:お、思ってない!


まゆ:お、思ってない!


涼真:こんなにも殺意が沸くのは初めてだ


まゆ:あっはっはっは!涼真といると面白いね


涼真:君が一方的にからかってるだけと思うけど?


まゆ:そうとも言うね!


涼真:もう既に迷惑なんだけどどういうわけなの?


まゆ:あー、でもまあそのまんまだよ?外出許可も出してくれなくなったからさー


まゆ:先生がなるべく家族とか恋人と居ろって言うから彼氏役にも来てもらおうと思って


涼真:君、まさか親御さんにも俺が彼氏だって言ってるんじゃないよね?


まゆ:家族にはちゃんと彼氏役って説明してるよ


涼真:さすがにか


まゆ:涼真は彼女作らないの?


涼真:つ、作らないよ!


まゆ:出来ないの間違えじゃなくて?


涼真:だいぶ前から思ってたけど、君うるさいから黙ってもらえるかな?




まゆ:涼真のこと好きになる人は沢山いると思うけどねー


涼真:いるわけないでしょ。俺は相変わらず学校でも嫌われ者だしね


まゆ:みんな見る目ないなー。こんなに面白いのに


涼真:面白がってるだけでしょ?





まゆ:違うよ?私だってこの病院の中で一人ぼっちだったし


涼真:他に友達とかは?


まゆ:居たよ。私と同じ病気の子がね


涼真:………その子は?


まゆ:あれ?言ってなかったっけ?先天性心神経(せんてんせいしんしんけい)は16歳まで生きられる確率は5パーセントだって


まゆ:その子は12歳の時に亡くなっちゃったの


涼真:………


まゆ:だからさ、涼真


涼真:なに?


まゆ:一人ぼっちの私を海に連れてってくれてありがとう


涼真:急になに?


まゆ:ん?ほら、私も涼真のこと振り回してるじゃん?


涼真:間違いないね


まゆ:私が死んだら、涼真、悲しむかなって


涼真:………


まゆ:ま!涼真はありえないよね!


まゆ:ひねくれ者だもんねー。感情ないし、悲しむわけないか


涼真:悲しむに決まってるだろ


まゆ:………え?




涼真:君はいつも無邪気で笑顔でこんなにも元気じゃないか


涼真:そんなまゆが急に居なくなるなんて悲しいに決まってる


まゆ:………それってさ、涼真に私が必要ってことでいいのかな?


涼真:さあね。でも少なくとも俺はまゆと会って少しは変わった気がするんだ


涼真:だから君も、俺といる時は無理しなくていいよ


まゆ:無理って何?


涼真:ほら、ずっと笑顔でいたり、元気でいたりするのは普段通りかもしれない


涼真:でもふとした時に悲しい顔するから、俺はまゆを見離せないんだよ


涼真:寂しい顔するなら寂しい感情を出してもいいんだよ


涼真:俺はそういうの苦手だから出来ないけどいつ死ぬかわからないまゆは何も隠して欲しくない


涼真:まゆが俺を彼氏役に選んだんだから最後までまゆのこと教えてよ


涼真:いつも笑ってるけど、まゆが笑えない時ってどんな時?


まゆ:・・・私は


まゆ:・・・はぁー、グスンッ


まゆ:涼真と一緒に居て楽しいって思えた時


涼真:・・・なんだ、涙出るじゃん


まゆ:私だって泣くよ。涼真に会えてこんなに楽しくなれると思わなかったもん。終わりたくないよ


涼真:……そうか


まゆ:ありがとうって言うの!


涼真:あ、ありがとう!


まゆ:よく言えましたー写真撮ろ?


涼真:はあ




まゆ:でもね、涼真


涼真:ん?


まゆ:それでも私は発作が起きても寿命が短くても辛いとか悲しいとかは思わないよ?


涼真:……どうして?


まゆ:胸の痛みは一瞬かもしれない。けど涼真とこうして話してる時間とか楽しい時間だって、どんなに小さな幸せでも私にとっては一生分の幸せなんだよ?


涼真:………君はほんとに…


まゆ:うん。だからさ……


まゆ:………っ!!


涼真:……まゆ!?


まゆ:ご、ごめん。また発作かも


涼真:………


涼真:………まゆ


0:涼真はまゆの手を握る


まゆ:涼真?


涼真:俺…まゆが死ぬのは嫌だよ


まゆ:………


:5話に続く

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