第3話彼女の最初の本音


:まゆがメッセージを送信しました


まゆ:やっほー!


涼真:何?


まゆ:あははっ、先生に怒られちゃった


涼真:なんで?電車乗ったのバレたの?


まゆ:この間無理しすぎたから心臓に異状が見られたんだって


涼真:それって大丈夫なの?


まゆ:知らない


涼真:自分の体なんだから興味持ちなよ


まゆ:とりあえず彼氏役さん、暇だから病室来てよ


涼真:なんか皮肉言われてる気がするから足が進まないな


まゆ:ねえーー!お願いお願い!


涼真:わかったよ




涼真:心臓に異状が見られたって大丈夫なのかな?


涼真:さすがに天真爛漫(てんしんらんまん)な彼女でも落ち込んでるだろうし、慰めの言葉でも考えるか


0:涼真はドアを開ける


涼真:やあ、まゆ


まゆ:わああーー!!涼真ーー!!おはよおはよおはよーー!!


涼真:………




まゆ:なーにその顔ー!いつもの5倍くらいしけた顔してるじゃーん!


涼真:帰ってもいいかな?


まゆ:はい、帰さない!ここに座って?


涼真:はいはい


まゆ:りんごもあるよ?剥いて?


涼真:俺はまゆの奴隷じゃないぞ


まゆ:そうだよね、彼氏役だもんね


涼真:うるさい


まゆ:まーたツンケンしてるー写真撮ろ?


涼真:誰がそうさせたんだか。写真ももう慣れてきた


まゆ:慣れてきたんだ〜私色に染まるの?彼氏役さん?


涼真:なんで君色に染まらないといけないんだよ!本物の彼氏じゃあるまいし


まゆ:ああ!大きな声で彼氏じゃないって言わないでよ!先生にバレちゃう!


涼真:何が?


まゆ:あ、ほら!


0:まゆの病室からは例の先生が覗きに来る


まゆ:あ、あははー!彼氏とデート中だから覗きに来ないでねー先生


涼真:ちょ!手握らないでもらえる!?


まゆ:しょうがないでしょ


まゆ:じゃあねー!先生


0:先生はまゆの病室を去る


まゆ:はあ、危なかった


涼真:ほんとに君は問題児だね


まゆ:なんで!?


涼真:別に


まゆ:あー!わかった。手握られてドキドキしてたんでしょ!?


涼真:し、してないよ!


まゆ:顔赤くなってるよー?ぷぷぷー


涼真:その点滴引っこ抜いたら君の寿命無くなるかな?


まゆ:やめてよ!ただでさえ寿命短いんだから!


まゆ:涼真、彼女いたことないの?


涼真:ほっといてくれ


まゆ:そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃん、私も居たことないし


涼真:そうなの?


まゆ:うん。だって生まれた時からずっと病院にいたんだよ?ここの病棟は死にかけのおじいちゃんおばあちゃんと私だけなの


涼真:酷い言い方だな


まゆ:だからさ、たまーにこっそり1階に行って誰かいないかなーって見てたんだ


涼真:それで俺を見つけたのか


涼真:とんだとばっちりだよ


まゆ:酷い言い方は涼真もじゃん!


涼真:なんで俺を彼氏役にしたんだ?


まゆ:なんでって?なんでだろ?


涼真:なんだよそれ


まゆ:わかんないよ。でもあの時の涼真は人助けしてた気がする


涼真:そんなことしてたかな?


まゆ:そうだよ。なんか優しそうだったから彼氏役にしたの


まゆ:今も来てって言ったら来てくれるし?


涼真:今すぐにでも帰っていいんだよ?


まゆ:ごめんってー。怒らないの。はい笑顔でピース!写真撮ろ?


涼真:全く




まゆ:でもさ、どうして涼真は私のわがままに付き合ってくれるの?


涼真:一応わがまま言ってる自覚はあったんだね


涼真:それこそ俺にもわかんないけど、まゆは一瞬だけ悲しそうな顔を浮かべるんだよ


まゆ:悲しそうな顔?そんなのしてないよ?


涼真:じゃあ無意識なんだね、まゆは海を見ると必ず悲しそうな顔をするんだよ


まゆ:……そうだったんだ


涼真:いつもこんな能天気な君が悲しそうな顔をしてると、違和感あるでしょ?


まゆ:んー確かにそうだね


まゆ:じゃあこれからは元気100倍で生きるね!


涼真:そういう問題じゃないでしょ


涼真:まゆは自分の病気が怖いと思ったことないの?


まゆ:そんなのあるわけないじゃん。どうせいつか死ぬってわかってるんだから


涼真:さっぱりしてるなー


まゆ:だって、明日死ぬかもしれないのにいちいち怖がってられないよ


まゆ:私はごく普通の毎日を過ごせるだけで満足だからね


涼真:そうなんだね


まゆ:うん!だから涼真も後悔のないように生きたまえ


涼真:余計なお世話かな


まゆ:まーた冷たくしてー


まゆ:………うっ!いったたた…ごめん。発作かも


涼真:え?だ、大丈夫?


まゆ:うん…とりあえず帰ってもいいよ


涼真:………なんで?


まゆ:痛がってるところ見られたくないんだもん


涼真:………でも、そんな急に言われたって


まゆ:私は大丈夫。またラインするね


涼真:………まゆ


:4話に続く

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