第10話 再びタイムリープ③
「なっ……!?」
大人しい性格の伊吹がセクシーランジェリーに身を包んでいる姿に俺の男の部分が反応してしまう。
そうだ、忘れていたけど……俺、結婚して子供もいるのに意識的には童貞だったんだ。そういう経験をした事がない俺にとってこれは刺激が強すぎる。
緊張で固まった俺を見て伊吹は悲しそうな顔をする。
「あ……はは……ごめんね、一人で盛り上がっちゃって。いい歳してこんな格好して……引いてしもうたよね?」
伊吹が俺から離れようとするので手を取って抱きしめた。その際、たまたま……そう、たまたま俺の元気になってしまったご立派様が彼女の下腹部に当たってしまった。
わざとじゃないよ。
「あ……これって……」
俺の状態を察した伊吹の顔がどんどん赤くなっていく。この感じは昔も今も変わらないようだ。
誤解が解けた伊吹は嬉しそうに俺の顔をのぞき込んできた。
「えへへ……そっかぁ。ウチでこんなに元気になってくれたんじゃね」
「こんなエロい身体と格好で迫られて興奮しない訳ないでしょうよ」
ヤバい、心臓の鼓動が早い。エロい格好と身体をした妻が俺に蜜着して「子作りしましょ」と誘ってきている。
そんでもって、ちらちらと俺を見ながら期待した表情をしている。
――確かに俺は身体こそ非童貞、記憶は童貞なのだろう。しかし、奥手の伊吹がここまで頑張ってくれた以上、今漢にならずしていつなるというのか!
やってやる、やってやるぞ! そうだよ、これは夫婦の営み。俺と伊吹は夫婦なのだからこれはやましい行為じゃないはずだ。
深呼吸して気持ちを落ち着かせると伊吹の方を向いて彼女の両肩に手を掛ける。すると彼女は目をそっと閉じた。
キス……していいんだよな? そういや俺、女性とキスするのも初めてです。
「……伊吹ちゃん……」
「……え?」
思わず伊吹の名を口にすると彼女は目をぱちくりさせていた。あれ、俺なんか変な事言った?
「伊吹ちゃん……かぁ。その呼び方懐かしい。付き合い始めた頃はそう呼んどったね。少ししてから『伊吹』って呼んでくれるようになって、ウチも『かー君』って呼ぶようになったっけ」
そうか、呼び方がちゃん付けのままだったのか……。それにしても俺、伊吹にかー君って呼ばれるようになるのか。何だかこそばゆいぞ。
「何だか高校生の頃に戻ったみたいな感じがする。始めてキスしたんは学校の教室で……始めてエッチしたんはかー君のお部屋……懐かしいなぁ」
次々と妻から重大情報が報告される。そうか、俺と伊吹って学校で初キスして、始めてのセッ○スは俺の部屋なのか。
あのまま高校生を続けていたらそんな展開になっていたのね。青春謳歌してるなぁ。
――さて、色々とやり取りがあったが今俺がすべきことは妻にキスして押し倒して夫婦の営みへまっしぐらというコース。
もう腹はくくった。というよりずっと興奮状態で脳がはち切れそうだ。ついでに下半身のもはち切れそうだ。
「かー君……いっぱい……シよ……」
可愛い妻がおねだりしてくる。もう無理、これ以上我慢するなんて絶対無理! はい! いざ、実食!!
目をつぶって伊吹の唇に俺の唇を重ねる。その感触は何というか表面がパサパサしていて若干柔らかい……何というか無機質な感触だった。
――これが女性の唇の感触なのだろうか? それに相手の身体の温かみを感じない。不思議に思って目を開けると、俺がキスをしていたのは枕だった。
「……へ?」
我ながら状況が呑み込めず素っ頓狂な声を出してしまう。
周囲を見渡すと俺は実家の自室にいた。身体も高校生に戻っている。どうやら俺は寝ていたらしい。つまりこれは――。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!! 寝落ちかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
悔しかった。ひたすら悔しかった……。夢とはいえ色っぽい人妻となった伊吹とこれから子作りセッ○スをメチャクチャするところだったのに……。
手を少し伸ばせばあのメロンみたいなおっぱいを色々と好きに出来たというのに……。あまりの悔しさに涙が出てきた。
――数分後、朝から涙活を終えた俺はベッドで横になりながら夢の内容を思い出していた。
「夢とはいえ凄く現実味があったな。それにあのマンションや公園は三十歳の俺が住んでいた街並みそのものだった……」
身体を起こして天井を仰ぎ見る。色々と考えた結果、俺は一つの仮説に至った。
「もしかして、俺は三十歳の頃にタイムリープしたんじゃ? 高校時代に戻って伊吹と付き合うようになった未来を体験したのかもしれない」
この予想が正しかったとして俺はどうすればいいのだろうか。くよくよ考えていても仕方がない。
もう起きる時間だし、とにかく着替えて朝飯食べて登校しよ。
もしかしたらまた三十歳の頃にタイムリープするかも知れない。そうなったらとにかくやる事は決まっている。今度こそ絶対に人妻伊吹とイチャイチャしてやる。
そんでもって今の女子高生の伊吹ともイチャイチャしてやるんだ!
そう固く誓った高校二年の春であった。
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