第三章

今日も  について、書き記そうと思う。

  に、友達はいなかった。友達になってもすぐいなくなっちゃう。って寂しそうに言っていた。

だから、いつも僕といた。僕もなるべく  と過ごすようにしていた。

「君を愛してる」

なんて、セリフもさらっといってくる。

どっちが彼氏だかわかんなくなるじゃないか



  は、今まで会ったことのない女性だった。


掴みどころがなくて、謎も多い。

でも、割と抜けてるし無邪気で明るくて、ちょっとお茶目で。その太陽のような笑顔も素敵で、癒された。

そして、  は言葉、表情、全てを使って愛を伝えてきた。それはとても気持ちがいい。


まるでー‥


「私ってお母さんみたい?」

  

  がそう呟いた。昔の友達にもよく言われてたらしい。

心を読まれたんじゃないかと思って焦った。


そう。  は、子どもの頃恋焦がれた母親像そのものだった。

僕の母は、僕を見なかった。

何をしても、父のことばかりで。

僕は、母が、父の愛を離さない為だけに生まれた存在なのだと。

子どもは愛で育つ。もし、愛がなければ、本能で自分が生きていけないとわかっている。だから、愛をもらえないなら、なんとかして、自分を犠牲にして、愛して貰うために、一生懸命奉仕する。愛をもらうためなら、きっと命すら捧げてしまうだろう。

僕もそれほどまでに愛に執着した。

でも、見てくれなかった。


悲しい時、誰も僕を見てくれない時、僕は絵を描いた。絵を描いている時だけ、安心した。

だから美術科にすすんだ。


‥‥‥。

ー  のことを書き綴る日記なのに、僕のことを書いてしまった。話を戻そう。


そういえば、最近絵を描きたいと思うことが増えた。気づけば  の絵ばかり描いていた。

  は、どんなふうに生きてきたんだろう。

  はたまに、儚げな。今にも消えてしまいそうな表情をする。

それは、いつもはうるさいくらい賑やかで明るい  の、本当の顔に見えた。

  もきっと、なにか過去にあったのだろう。

見えない過去が。

僕が、それをのぞいてあげられたらいいな。






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