第二章『桔梗咲く道』
第六話『機を見るに敏』
―1565年―
そんな義昭を“次期将軍に”と推す義輝の旧臣
其れは偶然にも、浪人となった光秀が保護を許された“朝倉家”のもとであった――。
光秀は越前の地で十余年、妻
そして名も無き光秀と、名を成し始めた信長は、互いの運命に引き寄せられるのだった――。
◇
「
亡命当初は将軍職に対し消極だった義昭も、兄の旧臣
「どうにかして京に戻らねば、何もはじまりませぬ」
亡命先の朝倉家当主
将軍を暗殺した
対する
困っている人を放っておけず手を差し伸べては、悪意に捕まり優しさを利用されがちな彼だが、几帳面さが禍いして日和見な態度を取る事も多い。
◇
思い通りにいかない藤孝は、越前での長引く亡命生活に嫌気が差していた。そんな彼が喜楽を感じられるのは、寺で光秀と話すひと時だけ。
歌道の奥義“古今伝授”を受ける程の才ある藤孝にとって、和歌や連歌・茶の湯にも教養深い光秀は、都から遠く離れた地で唯一気の合う話し相手――、そして次第に良き友となっていった。
信長の正室
「帰蝶様を通じて、信長様に上洛戦を頼めぬか。
友の辛労を見てきた光秀は、常々力になりたいと思っていた。しかし帰蝶を
「上洛し幕府再興の暁には、光秀殿を
ふと、妻
共に流浪を余儀なくさせた煕子には、朝夕の食事にも事欠く程の苦労を掛けた。文句も言わず支え続けてくれた妻に、願わくば楽をさせてやりたい。
共に浪人となり越前へ連れて来た
無論、帰蝶を思いながらも、綺麗事だけでは食い扶持を繋げない光秀は、悩んだ挙げ句首肯した。
◇
帰蝶の取り計らいにより、信長のもとへと義昭の動座が決まる。
風にそよぐ万緑の稲穂の間を抜け、“将軍候補”義昭が越前から遠のいてゆく姿を、苦々しく見送るしかなかった。
“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。
この作品は史実を基にしたフィクションであり、作者の妄想が多分に含まれます。何卒ご容赦頂けますと幸いです。
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