エピローグ

じゃあね。

 白斗君が亡くなってから、15年が経った。私にだって、白斗君は決して許されないことをした、というのはよくわかっている。


 日向の言い分もよく分かる。だからこそ、白斗君の話はずっと封印してきた。


 今日、夢の中に出てきた白斗君は、あの最後の日のように、「じゃあな」と言っていた。


 私にとって、その「じゃあな」は今生の別れ。


 もう、誰にも言って欲しくない言葉。


 そんな白斗君のお墓が、どこにあるのかさえ、私にはわからない。



「着いたぞ」


 そうこうするうちに、日向の運転する車は、心の通う小学校に着いた。


 心は日向に似て、明るく活発な子に育った。


 今日の卒業式でも、しっかりハキハキとした返事で、卒業証書を貰っていた。


 そんな心を見て、日向は感慨深気に眺めていたが、私は別のことを考えていた。


 思えば、小学校の頃から、白斗君も好きだったけれど、日向のことも好きだったんだな……。


 日向を見つめながら、そう思っていると、日向が気付いて、


「なんだよ」


と言ってきた。


「別に……」


 私は、そう返事を返し、日向は再び心を眺めていた。



 卒業式も終わり、私たちの家へ3人で帰る。


「お母さん、今日の夜ご飯は何?」


「そーねー? 何にしようかしら?」


「俺は、ハンバーグがいいな!!」


「もう!! お父さんが答えないで!!」


「心は、何が良い?」


「んーと……お父さんと同じで、ハンバーグ!!」


「おっ!! 心もハンバーグか!! 決まりだな!!」


「はい、分かりました。じゃあ、今日はハンバーグにしましょう!!」


「「わーい!!」」



 白斗君、私は今日も楽しい毎日を送っているよ。


 私にとって、今も大切だけど、白斗君との毎日もかけがえのないものだったよ。


 白斗君、貴方にとって私は何だったのかな? 白斗君、私も貴方にさよならを言いたかった。


 もちろん、また明日には会おうねというさよならを……。


 貴方が生きていたら、今日で37歳だね。


 おめでとう、白斗君。


 そして、これまでありがとう。


 じゃあね。



 ~完~

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じゃあな。~さよならの時〜 一KOH(いっこう) @ikkou20230311

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