大学ラプソディー③

 今日管くんに聞いた話を、白斗君に話した。


「管くんの双子の兄か……。うん、かもしれない。管くん本人とは、違う気がする」


 白斗君は納得したように、管くんの双子の兄について話した。


「管くんのお兄さんて、どうして捕まったのか、わかる?」


 ワタシが、管くんの双子の兄の罪について訊いてみると、


「確か、薬物所持だったと思う」


白斗君はそう話してくれた。


「薬物を使って、少年院に行く人って多いの?」


「うん、多い気がする。窃盗も多かったかなぁ」


 流石に白斗君、少年院に入っていたから、良く知ってる。白斗君みたいな罪で入ることは、たぶん少ないんだろうな……。


「そういえば、さ。白斗君」


「なんだい、菜穂?」


「ワタシ、白斗君からプレゼント貰ってばっかりで、白斗君にプレゼント渡したことなかったよね?」


「そーだ。俺小学生の時以来、菜穂からプレゼント貰ってない!!」


「だから、プレゼントを渡します。どうぞ、受け取って下さい!!」


 ワタシはカバンから、プレゼントに買っておいた腕時計を白斗君に渡した。


「どう……かな?」


「わぁ……菜穂、ありがとう!! 俺、すっげえ嬉しい!! 毎日身に付けるな!!」


 白斗君は本当に嬉しそうにして、腕時計を貰ってくれた。


「白斗君、これからは、さ……。白斗君の苦しみはワタシも受け持つから。代わりに、ワタシの幸せは、白斗君にも分け与えるね!!」


「菜穂……」


「白斗君もワタシも、目一杯楽しもうね!!」


「ああ!!」


 それからの2年間は本当に幸せだった。これまでの不幸を取り返すように、大学生活を楽しんだ。時には、ケンカもした。泣くほど嫌になることもあった。でも、最後には仲直りして、お互いに悪かったと謝罪した。管くんと遊ぶことも多かった。ワタシ、白斗君、管くんの3人でカラオケに行ったり、ご飯を食べに行ったり、ゲームをしたり、いろいろ遊んだ。お互いの誕生日には、プレゼントを渡し合った。この頃になると、携帯電話も普及が進んで、メールでやり取りすることが多くなった。白斗君がくれたポケベルは、白斗君に返した。この先もこの幸せが永遠に続くものと思っていた。



 大学4年に上がる直前の春休みのある日、今日もワタシは白斗君と居た。大学近くの商店街に出掛けて、足りないものや、これはと思ったものを、買い足すつもりで来たのだ。


 白斗君とはほぼいつも一緒に居るけれど、全然熱が冷めることはなかった。むしろ、燃え上がる一方で、一刻も早く結婚したいくらいだった。でも、お互いに学生だし、自立も完全に出来ていない状態じゃ時期尚早だという事で、結婚には至っていない。商店街もかなり入り組んでいるが、慣れたもので、今日も近道の裏通りを通っていた。


 とそこに、何人かの柄の悪い人たちが、誰かを囲っている。ワタシは、関わりたくないなあと思い、白斗君の袖を引っ張って、道を変えようと合図した。


「菜穂、あれ!!」


 白斗君がもう一度グループを見るよう促され、良く見てみると、囲まれているのは、なんと管くんだった。


「大変!!助けないと……」


 ワタシは咄嗟に、持っていた携帯電話で110番を押した。


「はい、◯◯警察署です。事件ですか? 事故ですか?」


「友達が不良に囲まれているんですが、ワタシにはどうすることも出来ません。助けて下さい!!住所は……」


 ワタシは近くの電柱に書かれていた住所を読んで伝えた。


「わかりました。すぐに向かいます」


 そういって、電話は切られた。


「警察が来てくれるって」


 ワタシは白斗君に警察に電話して来てくれるということを伝えた。


「なあ、菜穂。あの人、管くんじゃないかも……」


「えっ!?」


 確かに、柄の悪い人たちに管くんが襲われているように見えていたが、何か取り引きをしているようにも見えた。


「あの人、管くんの双子の兄さんの勇人かも……」


 えっ、管くんのお兄さん……?白斗君の言うとおりなら、本当に管くんそっくり……。クスリをやってたって言ってたけど、その取り引き現場?


 少しすると、警察官がやって来た。ワタシは事情を説明して、現場を指差した。警察官が近寄って行くと、柄の悪い人たちは一目散に逃げ出した。管くん? も一緒に逃げ出した。


 白斗君が言うように、管くんではなかったようだ。管くんのお兄さん、今も悪いことしてたんだ。ここに来てるってことは、管くんとも接触した? 管くんが悪い方向に流れないか、ワタシは心配になってきた。


「ワタシ、管くんに電話掛けてみる!!」


 不安になったワタシは、管くんに電話を掛けようとした。


「菜穂、待ってくれ。俺が管くんに電話してみるよ」


「なんで、白斗君が?」


「実は俺、菜穂が居ない時にも、管くんと会って話したりしてるんだ。管くんの兄さんのことも、話したことがある。だから、俺が」


 管くんと白斗君が仲良くなってるなんて知らなかった。


「わかった。じゃあ、お願い!!」


「任せてくれ」


 そう言うと、白斗君は携帯電話を取り出し、管くんに電話を掛けているようだった。


 管くんと白斗君が会ってたなんて、ワタシは全然知らなかった。たまに管くんとご飯食べる時に、白斗君を呼ぶくらいだったから。管くん、ワタシと話してる時も全然、白斗君の話しないし……。

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