大学ラプソディー②

 白斗君とワタシは、大学では一学年違う。学科も違う。ワタシは、教育学部、白斗君は薬学部だ。一般共通科目がいくらかまだ取っていない科目があったので、白斗君と一緒にその科目を取った。白斗君と一緒に勉強を受けるのなんて、3年ぶりでいつにもまして、勉強が楽しかった。専門科目もあるので、その時は離れるが、勉強しながら、白斗君のことを考えない日はなかった。


 そんな白斗君を仲の良い管くんといつ会わせようか迷った。運良く白斗君とワタシが取った一般共通科目に管くんは居なかった。


 その日、管くんから、


「お昼一緒に食べない?」


と連絡が来たので、迷ったが白斗君も連れて管くんの居る食堂に向かった。白斗君はワタシが思った通り、男の子と友達でも一向に構わないというスタンスだった。


「俺、男友達少ないから、仲良くなれると良いな!!」


 白斗君はそんな感じで、ワタシについてきてくれた。


「あっ、居た居た」


 管くんを見つけて、近寄ろうとするワタシ。


「あれ?」


 管くんを見た時、白斗君は怪訝けげんな顔になった。


「管くん~」


「待ったよ~!!」


 管くんもワタシに笑顔で振り返る。


「管くん、ワタシの彼氏の白木白斗君です。」


 管くんは白斗君にも笑顔で振り向く。


「白木くん、はじめまして。管志代と言います。」


 怪訝な顔をしていた白斗君は、すぐに笑顔に戻って、


「白木白斗です。よろしく。」


と言った。


 なんで白斗君、怪訝な顔したんだろう? ワタシはそこが気になったが、とりあえず、食事を楽しんだ。


 管くんとの食事を終え、白斗君との帰り道。


「白斗君、管くんのことで何か気になったことがあったの? 顔が初め見たとき、怪訝そうな顔してたけど……」


 ワタシは気になっていたので、白斗君にこの質問をぶつけた。


「いや……少年院で同じ顔のやつを見かけたんだ。」


「管くんそっくりの人?」


「ああ、だからもしかしてと思ったけれど、どうやら思い違いみたいだ。管くん、本当にいい人そうだった」


 白斗君が怪訝な顔をしていたのは、そんな訳があったのか……。管くんが少年院に入っていたわけないし、そっくりさんに違いない。


「白斗君、その人と話した?」


「いや、話はしていない」


 管くんが浪人したとも聞いてないし、管くんではないはずだ。

 

 兄弟? 可能性はある。


 今度管くんに聞いてみよう。


「わかった。管くんに兄弟とか居るか聞いてみるね!」


「ああ……」


 次の日、管くんから情報を引き出すために、プレゼントを持って行った。管くんがこの前に食べたいと言っていた、コウミヤのサツマイモチップスだ。食べ物に釣られる管くんのことだから、きっと話してくれるはず。


 ワタシは期待して講義に向かった。教室に入ると、管くんはもうすでに座っていて、何かの本を読んでいた。


「管くん!!」


「わっ!? ああ……楓さんか……。彼氏の白木くん、格好良かったじゃん!!」


 ワタシに驚いた管くんは、さっと読んでいた本をしまって、ワタシに話し掛けてきた。


「ふふふ……ありがとう!! 管くん、これ!! プレゼント!!」


 ワタシはすぐに買ってきたコウミヤのサツマイモチップスを管くんに渡した。


「コウミヤのサツマイモチップスじゃん!!ありがとう!! 急にどうしたの?」


「白斗君がお世話になったお礼をしといて、って言ってたから」


「そんなの良いのに、でも、ありがとう!!」


「どういたしまして!! ところで、管くん……管くんって、兄弟居る?」


「えっ……なんで!?  どうしたの? 急に……」


 管くんは不意に聞かれて、驚いた様子を見せた。


「いや、管くん、真面目でしっかりしてて、お兄さんっぽいなと思って。因みに、ワタシは一人っ子だよ。」


 相手に尋ねるなら、先ずは自分から。そう思ったワタシは、先に自分の兄弟の有無を明かした。


「お兄さんっぽい?  俺が? 楓さん、人間分析がまだまだだなぁ。俺は弟だよ!! 兄貴が一人居るよ!!」


 そう言って、管くんは兄弟の有無を話してくれた。


「お兄さんって何歳?」


「俺と同い年。双子なんだ。」


「えっ!?」


 今度は、ワタシが驚いた。管くんは双子!?


「お兄さんは、どこに居るの?」


「さあ、高校から別々で全然会ってないからなぁ……。」


「お兄さんの名前は?」


勇人ゆうと


 てことはじゃあ、白斗君が見た管くんは、お兄さんの方……?


「勇人がどうかした?」


 管くんが不思議そうに、ワタシに話し掛けてくる。


「いや、白斗君が管くんを見かけたっていうから……。」


「どこで?」


「どこでかは詳しく聞いてないけど……」


「ふーん」


 管くんには申し訳ないけど、少年院で見かけたなんて言えないよ……。


「それが俺じゃないか、って訳ね」


「そう」


 管くんは少し考えた後、


「白木くんを見かけた覚えは、俺にはないな……。格好いいから、少しは印象に残ると思う」


と言った。


「そっか。ありがとう。急にこんなことを訊いてごめんね」


「いや、別に良いけど」


 管くんはそう言って、サツマイモチップスをカバンにしまった。

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