scene 18
はぁ!?
あれから半年が経った。
あれ以来、白斗君をみることも声を聞くこともなかった。ある時、警察から白斗君について、任意で事情を聞かれた。ワタシは、白斗君の手紙の内容が事実であるということをその時に思いしった。
風の噂で、白斗君は少年院に送られたと聞いた。
高校内は一時、白斗君の噂で持ちきりになった。ワタシが白斗君の彼女だったことも知られ、大勢から不憫そうな目、軽蔑するような目で見られた。
ワタシはそれ以来、ぽっかりと穴の空いた蝉の脱け殻状態になっていた。
そんなワタシに三玲は敢えて、白斗君の話題を持ち出して、励ました。
「白斗君を乗り越えて!! 白斗君が居なくても、菜穂は大丈夫!!」
そう必死に元気づけようとしてくれる三玲にワタシは救われた。
白斗君が部を退部した以降も、部活動は変わらず続けていた。部の先輩達も、白斗君の噂は知っていただろうが、決して口にはしなかった。白斗君が居なくなった哀しみを埋めるほどではなかったが、部活動でも救われた。体育祭、文化祭が終わって宝堂先輩引退後は、金子先輩が部長になった。部活動をしていると、余計なことを考えずに済んだ。三玲と部活動が、ワタシの心の支えだった。
そんなある時、日向から心が揺り動かされることを言われた。
「菜穂、まだ白斗のこと考えてんのか?」
それまで、白斗君のことは一切口にしなかった日向が、いきなりそう話し掛けてきたので、ワタシはどう答えるか戸惑った。
「今は、白斗君のことは話したくない。」
ワタシは、蚊の鳴くようなか細い声で、日向にそう言った。ワタシの返答に対して、日向はしばらく黙っていたが、次にワタシにこう言い放った。
「菜穂、白斗のことは早く忘れろ!! あいつは犯罪者だ!!」
同じようなことを他の人にも言われたことがある。その時は言われてもぐっと我慢出来たが、日向にそう言われて、ワタシは無性に腹が立った。
「はぁ!? あんた、何言ってんの!? じゃ、あんたは何も悪いことしてないって言うの?」
ワタシは、
「少なくとも俺は人殺しなんてしない!! あいつと違ってな!!」
ワタシは日向のその発言に、心底腹が立った。
「日向、あんたはろくな死に方しないわ!! あんたとはもう口を利きたくない!! 絶交よ!!」
「そうかよっ……!! じゃ、俺もこれ以上は何も言わねぇ!! じゃあな。」
日向はそれだけ言うと、激怒しているワタシの前から、立ち去った。ワタシはイライラが収まらず、
「あ゛ぁーーーー!!!!!!!!」
人目もはばからず、大声で叫んだ。
何も知らない通行人は、
そこは、白斗君と付き合い始めた場所。初めて、キスをした場所。季節もちょうど、一年前の今頃だった。
どうして……どうしてこうなっちゃったんだろう……。
ワタシは一人、一年前のその日を思い出しながら、しくしくと泣いた。
ワタシは、境内に座って、もはや使い道のなくなったポケベルを眺めながら、また泣いた。
白斗君、どうしてるだろう……。
会えなくなってしまった白斗君。どこに居るのかもわからない。
さっきの日向の発言には凄く腹が立ったが、客観的に見ると、確かに日向の言うことは的を得ている。白斗君は罪を犯したから、会えなくなっている。
だからと言って、日向のあの言い方はワタシは許せなかった。
仮にも、幼い頃から一緒に過ごした友達だ。
ワタシには日向の気持ちがわからない。
どうしてあそこまで割り切れるのだろう……。
あの時、もしワタシが「一緒に死ぬ」と言ったら、白斗君はワタシを殺していたのだろうか?
…………。
考えたくない。
答えはわかっている。
白斗君はワタシを殺す、間違いなく。
そして、白斗君自身も死んでいただろう。仮にワタシと白斗君が居なくなったら、日向はワタシと白斗君のことを哀しんでくれるだろうか?
…………。
わからない。
いや、本当はこれもなんとなくわかっている。
日向は哀しむ、間違いなく。
どうして、ワタシは白斗君のことがまだ好きなのだろう……。どうして、ワタシは白斗君を嫌いになれないのだろう……。
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