白斗君と一緒に②
帰宅したワタシは制服を脱いで、部屋着に着替えた。白斗君と同じ高校かぁ……。不思議なものだ。つい2ヶ月前は、女子高に進学しようとしていた。三玲に説得されていなければ、現在のワタシはなかった。結局、三玲と約束していた手紙のこと、結局出さないで終わってしまった。
白斗君からの手紙が届いた時に、出そうと考えていたから。白斗君と縁を切りたい、という旨の内容を書こうと考えていた。今のワタシは、その手紙を出さなくて良かったと心底思っている。三玲がワタシや白斗君の為を想って、行動していなければ、今頃絶対、どこかで後悔していた。それは、確実だろう。つまり、三玲との約束は果たされなかったということだ。
だから、白斗君と仲良くしているのを三玲に見られるのは少し後ろめたい。なので、同じクラスというのは、少し居心地が悪い。もしも、日向と同じクラスだったら……。いや、同じことか……。
過去のワタシに蹴り飛ばされてしまいそうな贅沢な悩みだが、今のワタシには切実だ。ワタシも三玲に何かしてあげられると良いのだけど……。そんなことを思ってみる。何かあるかなあ?ワタシは考えながら、眠りについた。
次の日。
「今日はここまで!!」
授業も終わり、放課後になった。ワタシは白斗君、そして三玲と一緒に部活動見学に行くことになった。日向は既に野球部で汗を流しているようだ。
「白斗君て、向こうの中学でも美術部だったんだよね?」
美術部へ向かう途中、三玲が白斗君にそう訊いた。
「いや、向こうの中学では帰宅部だったよ」
意外だった。絵画コンクールに作品があったので、てっきり美術部で活動しているのかと思っていた。
「でも、白斗君の絵、絵画コンクールで入賞してるの見たよ」
三玲がワタシが疑問に思ったことを白斗君に聞いていた。
「あぁ……あれは美術の時間に描いたものを先生が出したみたい」
「なんだ、そうだったの」
三玲とワタシは納得したようにうなずく。
「俺からも羽場本さんに質問なんだけど、いつから菜穂と仲良くなったの? 俺が見てた限りではそんな様子なかったけど」
白斗君が三玲にそんな質問を返した。三玲、なんて答えるの……?
ワタシはドキドキしながら、三玲の言葉を待った。
「あぁ、白斗君、それ気になった? 説明すると長いから割愛するけど、私、菜穂とケンカしたの。その時は、お互い嫌いになったと思う。けど、その後の菜穂が健気に頑張ってるの見てたら友達になりたくなっちゃって……。その後、いろいろあって今に至るかな。ね、菜穂!!」
三玲に突然振られてびっくりしたが、そうだとうなずいた。
「二人、ケンカしたの? どうして?」
「え? それは……えっと……」
白斗君のその率直な質問は、三玲を戸惑わせた。三玲が困ってる。よし、ワタシの出番だ!!
「白斗君!! いくら白斗君にでもそれは話せないよ!! あまり良い思い出じゃないしね!! ね、三玲!!」
ワタシはそう白斗君と三玲の話しているところに割り込んだ。
「えっ!? あ、うん、そうなの……。ワタシが悪いんだけど、あんまり思い出したくないんだ……」
三玲はそう自嘲気味に答えた。
「へー、そうなんだ。菜穂、羽場本さんにいじめられたの?」
白斗君は悪びれずにワタシにそんな質問を投げかける。
「えっ!? まあ、そんなこともあったかな?」
ワタシはとぼけたようにそう答える。
「そうなの? 羽場本さん?」
白斗君がまた三玲にそう訊いた。その目は笑っていない。
「白斗君、ごめんなさい。実はワタシ、菜穂のことをいじめてました」
「は、白斗君。三玲をそんなに問い詰めないで!! 今はもうそんなこともない仲良しだからさ!!」
「はあ……。菜穂が許してるみたいだから、俺ももう何も言わないけど、そういうことはしないでね」
「わかってる。絶対にそんなことはもうしない。約束する」
三玲はそう言ってしょげてしまった。白斗君、こういうことははっきり言ってワタシを守ってくれる。やっぱりカッコいいなあ。でも、三玲に厳しく当たらないでほしいな。
そんなことを考えながら、校庭を見ると日向の姿が見えた。
「「菜穂!!」」
三玲と白斗君の両方から名前を呼ばれた。
「菜穂、何野球部なんて眺めてるの!!」
「ごめん、ごめん!! 日向、見てた。」
「日向? あぁ、綿原くんのことか。彼もこの学校だったんだ。」
三玲は、そう思い出したように言った。どうやら、三玲は日向のことをよく知らないらしい。
「やっぱり日向、高校でも相変わらず野球頑張ってんだ!!」
白斗君はワタシに近づいて、野球部を眺めながら言った。
「そうなんだよ。この高校もスポーツ推薦だよ。中学で野球で良い成績残したから。」
ワタシは、説明するように白斗君に言った。白斗君はワタシの話を聞き終えると、
「そっかぁー、日向もやるなあ……」
感心したように呟いた。
「ほらほら、二人とも。綿原くんの話も良いけど、美術部の見学に行くんでしょ」
三玲がそう急かすように、ワタシと白斗君の肩を叩いた。三玲、立ち直りが早い。
「ごめん。そうだった。この廊下の突き当たりだったよね?」
ワタシは三玲にそう尋ねた。
「そうそう。さぁ、張り切って行きましょう!!」
三玲が元気良く言った。
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